ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


スムーズタンギング開発秘話

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教則本「スムーズタンギング




【インデクス】
編集者(黒坂洋介)のコメント
著者(杉山正)のコメント
トリプルタンギングの先へ







編集者(黒坂洋介)のコメント


<ついに夢が実現>
金管楽器はタング(舌)とエア(息)で演奏すると
いう原理を中心としたタングマジック・プロジェク
トを始めて5年目のこと。

その間、何度も杉山先生にお願いしてきた構想が、


  シラブルとタンギングの組み合わせ


を徹底的に練習する教則本です。

それはゴードン門下生の間では当然すぎる練習法な
ので、どれほどインパクトのあるものに仕上がるか、
杉山先生は当初実感されていなかったかもしれませ
ん。

しかしシラブルとタンギングを計画的にトレーニン
グできるテキストは、すべての金管奏者にとってた
いへんな助けとなると考えていましたので、私はあ
の手この手で杉山先生の執筆意欲を刺激し催促を続
けてきました。

そして長い思索と試行錯誤の末に、ついにその教則
本が完成しました。それが「スムーズタンギング」
です。



<大ボリュームをコンパクトに>
この構想がなかなか実現しなかったのは、エクササ
イズの量が膨大であるため、百科全書のような分厚
い教則本になってしまうおそれがあったからです。

そこで音符とモデル(シラブルとタンギングの組み
合わせ)をシンプルに表記できるよう、それぞれを
分けて掲載するという画期的な方法が考案されまし
た(しかも日本語のシラブルを使ってあるのでわか
りやすい!)。

この表記法によって、すさまじいボリュームのエク
ササイズをすっきり18のレッスンに収めることがで
きました。各レッスンの譜面は3ページしかありま
せんので、それほど厚い教則本には見えません。し
かし実際に練習するとなると大変な時間を要するの
です。

レッスンごとにモデル数は異なりますけれども、全
部で176のモデルを練習します。ひとつのモデルを
1週間かけて練習しますから、レッスン18まで終え
るのに176週間(3年半ほど)かかる計算です。

レッスン18まで終えたらまたレッスン1に戻って、
最高音を半音上げます。そして1巡目と同様各モデ
ルをレッスン18まで練習。

2巡目を終えたら3巡目のレッスン1~18に取り組み
ます。このときも最高音を半音上げます。こうして
最高音を半音ずつ上げて、最終的にハイC(実音Bb)
まで上がっていきます。そこまで13巡。

つまりこのカリキュラムを修了するには、176週間x
13巡。これは2288週間(約44年)に相当します。
まさにライフワークと呼ぶにふさわしいエクササイ
ズです。逆に言えば、本書「スムーズタンギング」
はそれほどの内容を持った教則本ということです。



<モデルの実例>
モデルの実例を見ましょう。引用したレッスン2に
は全部で12のモデルがありますけれども、そこから
4つのモデルだけ抜粋しました。

smoothtonguing_tatitati.jpg

ひとつのレッスン内では、あるフレーズを、音域を
変えながら18種類練習します。そして第1週は1番
目のモデル「タティタティ」を使います。

第2週はKタングを使って「カキカキ」、第4週はK
とTのタンギングを組み合わせて「カティカティ」、
第5週はタンギングとスラーを組み合わせて「タティ
タイ」と歌いながら演奏します。

12週間ですべてのモデルを練習したらレッスン3へ
進みます。このようにしてエクササイズを進めてい
きます。

秘宝が眠るタンギングの世界。じっくり楽しみなが
ら掘り起こしていただければ幸いです。

2011年9月12日






著者(杉山正)のコメント


<とんでもないものを書いてしまった...>
TM本部の黒坂さんの計算によると、なんと終了する
までに44年間かかってしまう。

この教則本の話は数年前にさかのぼるのですが、黒
坂さんからアーティキュレーションを中心としてタ
ンギング、フィンガリング、ウインドコントロール、
エアーパワー、耐久力、サウンド改善、シラブルの
進化などを含んで、そして、これが一番難しかった
のですが、シンプルなものが書けないかと言われま
した。

その時ははっきり言って無理だぁと思った反面、な
んとなくアイデアが断片的に浮かんで来ました。し
かし、頭に浮かんで来るものは段々難しいものとな
り、「シンプル」という言葉にうなされ、押しつぶ
される日々、そして黒坂さんの高笑いが夢にまで出
て来るようになりました(大袈裟w)

そのまま数年が過ぎ、再度ミーティング。「例のア
レはどうなっているんですか?」「べつに急いでは
いませんが...」という黒坂さんの問いかけに、また
もや押しつぶされそうになる私。

さらに、LAにいた頃、「スタジオで活躍する良いア
レンジャーのものはシンプルで演奏が容易、そして
演奏効果絶大。逆に良くないアレンジャーのものは
複雑で演奏が困難、そして演奏効果ゼロ」と頻繁に
聞いた言葉もこの教則本を書くにあたって頭の中を
グルグル回ってプレッシャーとなって行きました。

ところが、数年経ったある日、仕事で大阪に向かっ
ていた新幹線の中で突如アイデアが浮かんで来て片
道で書き上げることが出来たのです。(ゴードン降
臨か!)こんな経緯で出来上がった教則本について
こちら

しかし、44年間かかるなんて、これを成し遂げた人
達に私は会えない可能性が高い!? ってことは、
Smooth Tonguingは金管教則本のサクラダファミリ
アやー!(彦摩呂風)

2011年9月14日







トリプルタンギングの先へ


トリプルタンギングとは

金管楽器を演奏するとき、速いパッセージに対応するための技術にダブルタンギングがあります。通常のシングルタンギングが「T」で音を切るのに対して、ダブルでは「T」と「K」を使って「T-K-T-K」と発音します。

また三連符に対応するときに用いるのがトリプルタンギングで、発音は「T-K-T」「T-T-K」などがあります。

ダブルタンギングやトリプルタンギングについては、曲で使うべきではないという否定的な意見もありますが、舌の鍛錬という観点から見た場合、練習に取り入れる意義は大きいと思われます。



TとKとシラブルと

添付譜面の四つのモデルをご覧ください。

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※クリックで拡大


音程によって「ア」「イ」のシラブルが使い分けられていますけれども、タンギングの発音は以下の通りです。

1.T-T-T-T
2.K-K-K-K
3.T-T-T-K
4.T-K-T-K

Kだけを使って練習する2番目がミソです。Kタングの練習を徹底的に積むことで、やがてTタングと区別がつかなくなるほど上達します。そうすると、ダブルタンギングやトリプルタンギングを特別視する必要もなくなります。

またKの舌使いは、高音域でのそれとよく似ており、Kタングをくり返し練習することでハイノートにも効果が出てきます。

「スムーズタンギング」では、いろんな音形、音域で、シラブル、タンギング、スラーなどを縦横無尽に組み合わせる練習をします。

全部終わるまでに44年かかるという壮大なエクササイズ。
ライフワークとしてお楽しみください♪


スムーズタンギング ト音
http://goo.gl/nAsqXV
スムーズタンギング ヘ音
http://goo.gl/LR3STC

投稿者 kurosaka : 2011年9月14日