スパイラログの基本モデル
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「スパイラログの基本モデル」はポッドキャストで対談形式の解説を聞くことができます。
インデクス
スパイラログ基本モデル
心臓部は第3ステップ:循環質問
言葉の格闘技
VUCA時代の議論
スパイラログで考えるSDGs
⚫︎スパイラログ基本モデル
※日本語では「縁話」。三人よれば文殊の知恵にちなんで「文殊縁話」という愛称で呼んでもいい。第1ステップ:視点設定
・以下3種類の視点を設定してグループ分けする
REALIST(R): 実現性軸
ANALYST(A): 影響範囲軸
CREATOR(C): 価値観軸
・3つの視点は「対立軸」ではなく「補完軸」として設定
・各グループの視点が「部分的真理」であることを確認
※参加者が自然に各視点を選択できるよう、「どの視点に最も関心があるか」から始めることで、押し付け感を避けられそうです。
第2ステップ:一次立論:
・3つの視点に基づいてR、A、Cそれぞれが意見を発表する
第3ステップ:循環質問:
・各グループは他の2グループに対して以下3つの質問する
・DEEP Q:相手の視点をより深く理解するための探求質問
・INTER Q:自分たちの視点と相手の視点の相互依存関係を探る関係性発見の質問
・PIVOT Q:それぞれの視点が依拠している前提条件(スパイラルの回転軸)を明らかにする質問
1.DEEP Q
1-1: R to A、1-2: R to C、1-3: A to C、1-4: A to R、1-5: C to R、1-6: C to A
2.INTER Q
2-1: R to A、2-2: R to C、2-3: A to C、2-4: A to R、2-5: C to R、2-6: C to A
3.PIVOT Q
3-1: R to A、3-2: R to C、3-3: A to C、3-4: A to R、3-5: C to R、3-6: C to A
※時間に余裕がある場合は、それぞれQの後に回答タイムを設ける。
第4ステップ:二次立論
・質問で得られた知見を参考に、3つの視点を統合し再構築した新しい枠組みを提示する。
・各グループが「自分の視点を保ちながら、他の視点も活かす方法」を提案。
・単なる妥協ではなく、ひとつ上のレベルからメタな視点を確保する。
※「メタな視点の確保」について、具体的には「なぜこの3つの視点が必要だったのか」を振り返ることで、より高次の統合が可能になりそうです。
第5ステップ:協働創発立論
・3つのグループが協働して「第4の解決策」を創出する。
・誰も最初には考えていなかった道を探す。
・Win-Win-Winを超えた「創発的価値」を発見する。
・正解を探すのではなく、より良い理解を共に創る。
・部分最適ではなく全体最適を目指す。
※最終的に「今日の対話で最も驚いた発見」を共有する時間があると、学習効果が高まりそうです。
⚫︎心臓部は第3ステップ:循環質問
私(黒坂)の個人的な感想ですが、スパイラログの心臓部は「第3ステップ:循環質問」だと思います。この18の質疑応答(6回x3種類)によって相互理解が深まると同時に、議論の内容も深化するからです。構造的な転換点:
第1-2ステップは各視点の「表明」段階ですが、第3ステップで初めて視点間の「相互作用」が始まります。ここで対話の性質が根本的に変わる。
質的な深化メカニズム:
DEEP Q:表面的理解から本質的理解へ
INTER Q:孤立した視点から関係性の発見へ
PIVOT Q:無自覚な前提から意識的な検証へ
量的な相互作用:
18回の質疑応答により、3つの視点が総当たりで6つの「関係性」を探求し、それぞれが3つの「深度」で検証される。この網羅性が偶然の洞察を必然に変える。
第4-5ステップへの基盤:
この段階での相互理解と内容深化なしには、その後の「統合」も「創発」も表面的なものに留まってしまうでしょう。
比喩的に言えば: 第1-2ステップで「材料」を用意し、第4-5ステップで「料理」を完成させるとすれば、第3ステップは「下ごしらえ」。この工程の丁寧さが最終的な成果を決定づけるように思います。
⚫︎言葉の格闘技
ディベートはあるテーマに対して「肯定側」と「否定側」に分かれて立論し、勝敗を決する形で行なわれます。相手の証拠を叩く、論理を叩く、結論を叩くなどの攻撃を加え合いながら自説の正当性を証明するので「言葉の格闘技」と呼ばれることもあります。そこでは物事を白か黒かに分けて、その中間を認めません。古典論理学でいう「排中律」を基本としているのです。グレーゾーンのない完全な「二項対立」を前提とします。そのため論点が明解になり、フェアな議論が展開されるというメリットがあります。
その反面、多様で複雑な現実社会について論じるのに不十分な点があることは否めません。また「事実」と「論理」の応酬となるため、対戦者同士で終了後に感情的なしこりが残る可能性もあります。つまり分断を深めるリスクがあるのです。
そこでディベートとは異なるアプローチを模索しました。インタービーイング(相互依存)という世界観をベースにした三者の話し合い。そして生まれたのがスパイラログです。
⚫︎VUCA時代の議論
VUCA(ブーカ)は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を組み合わせた造語。「正と誤」「善と悪」「是と非」を単純に断じることができない現代社会を表現しています。スパイラログは、VUCA時代においてディベートに代わる議論の方法として考案されたものです。それは「対立」や「勝負」ではなく、お互いに依存しあって存在しているインタービーイングという世界観をベースとしています。
このフォーマットを使って議論すれば、協調しながら解決策を模索するプロセスへ導かれます。白黒をはっきりさせるのではなく、広大なグレーゾーンを探求しながら、さまざまな灰色を使って絵を描く、いわば「思考の水墨画」なのです。
実際に人間同士がスパイラログで話し合いをするのも有意義でしょう。しかし生成AIを使って高速シミュレーションすることで、スパイラログは大きな力を発揮します。
⚫︎スパイラログで考えるSDGs
「現実離れしている」と批判されがちなSDGs(持続可能な開発目標)。その17項目ひとつひとつを、スパイラログ展開するとどうなるでしょうか。壮大な目標と現状とのギャップを埋めるヒントが見つかるかもしれません。以下PDFのシミュレーションをご参照ください。AIを使って高速生成したものです。これがSDGsを実現に近づけるかどうかはわかりません。しかしこれらの資料に目を通してから議論を始めるなら、より広い視野で話し合うことができます。より高い位置から問題を俯瞰できるでしょう。より深く緻密な議論も可能になります。つまり思考のスタート地点が高次元となり、さまざまなアイデアへの突破口を開く可能性が高まるのです。
* SDGs No.1「貧困をなくそう」
* SDGs No.2「飢餓をゼロに」
(to be continued...)