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小股の切れ上がった

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菱川師宣 「見返り美人図」
Image from pinterest


女性を褒める言葉として「小股の切れ上がった」という表現がある。しかしその正確な意味は、よくわからない。これまでにさまざまな解釈がなされてきた。いわく「美しい歩き方」であるとか、「脚の長さ」だとか。

小股とは身体のどの部位かにも諸説ある。アキレス腱説、鼠蹊部説、股の付け根説、足指説、女陰説、スネからヒザ説、足首説、襟足の付け根説など。はては「よくわからないからいいのだ」説まである。

呼吸学校では、脱力を専門的に学ぶ。その結果、肩が垂れ、腕が重くなり、全身が水の入った袋のように感じられる。この「ウォーターバッグ」状態は、重力に対して抵抗が少ない自然な立ち方となる。これを古人は美しく感じ、「水もしたたる」と表現したのではないか。

体表面の脱力が理想的に進むと、体芯部には適切に入力される。それを促進するためにボトミングというワークもある。そして外側が垂れ、芯部が吊られる外垂芯吊(がいすいしんちょう)という状態になる。

この「芯吊」を体現したとき、ボトミングとのからみで、それを「小股の切れ上がった」状態と表現することには違和感がない。

つまり「水も滴るが外垂」で、「小股の切れ上がったが芯吊」である。この両者がワンセットとなり、体感的には快適さを、外観的には美を、江戸時代の日本人にもたらしたと、私は想像するのである。

もちろんただの想像だが。

投稿者 kurosaka : 2023年7月 2日