ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


日日是抹茶

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Image from pixabay



抹茶4つのK
第1のK:感謝
第2のK:呼吸
第3のK:国際
第4のK:健康







第1のK:感謝

このところ抹茶にハマっている。茶道の心得はないので、粉をお湯に溶いて飲むだけ。4〜5gの抹茶をグラスに取り、数滴の熱湯を垂らしてスプーンで練る。ペースト状になったら少しずつ湯を足して伸ばしていく。お湯を50ccほど注いだらできあがり。

かなり濃い目の抹茶で、香りと苦味を楽しむ。茶筅を使わないため、まったく泡は立たない。茶道でも、裏千家はよく泡を立て、表千家は控えめで、武者小路千家はあまり泡を立てないと聞いたことがある。私の抹茶は完全に泡がない、いわば無泡抹茶である。

抹茶を飲もうと思ったきっかけは、じつは茶の湯ではない。砂漠の民ベドウィンが、一日の終わりにコーヒーを点てる。飲む分だけの豆を煎り、それを挽いてお湯で煮出す。そのコーヒーを飲みながら、今日も生きていられたことへ感謝を捧げる。この話に触発されたのだ。

お茶の歴史や効能についても学ぶうちに、いろんなことを知った。それを整理してみると「4つのK」となる。ひとつめのKは、言うまでもなく「感謝」だ。一服のお茶を点てて飲む時間に味わう静かな感謝。ここに存在することへの深い感謝である。







第2のK:呼吸

抹茶ふたつめのKは「呼吸」である。

平安時代に最澄(天台宗)が唐から茶の種を持ち帰ったのが、日本でのお茶の始まりとされる。しかし喫茶の習慣は定着せず、いったん廃れたとか。

鎌倉時代に栄西(臨済宗)が再度、宋から茶の種を持ち帰る。宋の禅院では茶が盛んに飲まれていて、栄西がその効能について感銘を受けたためと言われる。

栄西は、茶の効能や飲み方を解説した『喫茶養生記』を編纂。茶のハードとともにソフトも導入した。やがて禅寺を中心に喫茶の風習は広がり、武士にも普及した。

この時代の茶は、茶葉を粉末状にし湯に溶かして飲む、現在の抹茶のようなものだったらしい。

日々死と向き合う僧侶や武人が常態的に抱えるストレスは、茶によって癒やされたのかもしれない。のちに村田珠光、武野紹鴎、千利休らにより茶の湯が完成されていく。

精神安定に関係する茶の成分としては、カフェインおよびテアニン(アミノ酸の一種)をあげることができる。周知のとおり、カフェインは興奮作用や覚醒作用をもたらす。

一方テアニンは、カフェインの働きを穏やかにする作用がある。副交感神経の働きを活性化し、脳の興奮を抑える働きがあるため、高ぶった気持ちを静めてリラックスをもたらすのだとか。コーヒーと同程度のカフェインが含まれているのに、抹茶を飲むとほっとするのはテアニンの効能と言われる。

修行に打ち込む僧侶にとって、喫茶が座禅のよき友だったことは想像に難くない。眠気覚ましになるだけでなく、瞑想の質を高めることにも効果があったのではないか。

濃い抹茶は呼吸法の内容も充実させる。特に、空気の出入りがない「凪」の瞬間を的確にとらえる効果を感じる。スポーツでいう「ゾーン」の状態に入りやすくなる。きわめてクリアな集中状態でありながら、このうえなくリラックスもしている。

抹茶は呼吸の友でもある。







第3のK:国際

抹茶三つめのKは「国際」である。

抹茶ラテ、抹茶スイーツなど、日本ではちょっとした抹茶ブームである。しかし海外に目を転じてみると、爆発的と言っていいほど抹茶人気が高まっているようだ。

アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、デンマーク、シンガポール、さらに韓国や中国でも日本の抹茶が注目されている。「日本の抹茶」と表現したのは歴史背景をふまえてのことだ。

粉末にした緑茶をお湯に溶いて飲む習慣は、宋の禅堂から伝わった。この抹茶の方法は中国では宋代にのみ行なわれ、明代以降はすたれてしまったという。それが栄西によって宋から日本へ伝えられ、茶の湯文化として現在まで続いている。抹茶はごく最近まで、日本にだけ残る飲み方だった。

考えてみれば、煎茶も中国茶も紅茶もあるいはコーヒーも、みな抽出液を飲むものだ。それに対して抹茶は、粉を撹拌した水溶液をまるごと摂取する。昨今のドリンクやスイーツにしても、抹茶の粉そのものを取り入れることに変わりはない。

この経緯から、茶葉の生産地にかかわらず、抹茶を飲料や食品に使うのは、日本の抹茶文化を応用したものと考えて差し支えないだろう。茶の生産量や輸出量で言えば、日本は世界一位ではないけれども、である。

さて、海外の事情を見て驚くのは、抹茶専門のカフェがたくさん存在し、さまざまな抹茶飲料や食品を提供していることだ。いまや抹茶は、日本より海外諸国で多く飲まれており、MATCHAがそのまま英単語として定着しているという。

写真にあるMatcha Barボトルは、エナジードリンクとして販売されている。MintやApple Gingerなど、日本人からすると奇想天外に思える味もある。ターメリックやジンジャー、カルダモンなどのスパイスとブレンドした「抹茶チャイ」を楽しむ人も多いとか。

ピーチやパイン、スイカなどのジュースに混ぜたり、炭酸飲料で割ったりして抹茶を楽しむことも珍しくない。ジュースの色(イエローやピンク)に抹茶グリーンが2層になってインスタ映えするので人気があるそうだ。

日本社会では、抹茶は伝統文化と考える人が多い。お茶会で飲むとか、京都へ旅行したときに飲むとか、それは「たまに飲む」非日常的なものだろう。

しかし海外のようすを見ると、抹茶は日常的に飲まれている。コーヒーや紅茶と同じ感覚で抹茶を飲む。カフェへ飲みに行く。

抹茶を日常に取り戻すことで、私たちの生活はもっと豊かになるのではないか。それは四つめのKとも関係してくる。







第4のK:健康

抹茶四つめのKは「健康」である。

抹茶に含まれる成分のうち、先に述べたカフェインとテアニンに加えて注目したいのは、サポニンとカテキンだ。

茶葉サポニンには抗炎症作用や抗菌作用があることが古くから知られている。近年は血圧降下作用や抗アレルギー作用があることも明らかになってきた。

カテキンには強い抗酸化作用があり、抹茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)の抗酸化力は、ビタミンCの約90倍、ビタミンEの約23倍であると言われる。EGCGは緑茶以外の植物からはまだ発見されておらず、ウーロン茶や紅茶にはほとんど含まれていない。
水溶液を飲むことで成分をまるごと摂取できる抹茶は、健康ドリンクとしても高い効能を持つと考えられる。

「掛川スタディ」と呼ばれる大規模栄養疫学調査がある。全国でもっとも健康寿命が長いといわれる静岡県。その掛川市でのリサーチである。これは農林水産省の委託事業として約3年にわたって行なわれた緑茶の生活習慣病予防研究だ。

静岡県は肥満度やがん標準化死亡率が低いことで知られる。静岡県総合保健センターが発表した自治体別統計によれば、脳梗塞・脳内出血・虚血性心疾患などの5項目において、掛川市はどの項目も県平均より患者数が少なく、健康指標に優れた地域であるとか。

研究の一環として、「やぶきた」「べにふうき」の緑茶エキスと偽物を対照実験し、動脈硬化の指標が改善するかを調べた。被験者だけでなく研究者も誰が何を飲んでいるのかわからない無作為二重盲法を採用。

3ヶ月の短期服用だったが、LDL(悪玉コレステロール)値が、「やぶきた」および「べにふうき」摂取群で低下した。HDL(善玉コレステロール)値は「べにふうき」摂取群で上昇した。「やぶきた」摂取群では腹囲が縮小した。

緑茶をよく飲む生活習慣が、動脈硬化性疾患やがんを減らすのか確かめるには、長期にわたる追跡調査が必要である。これをコホート研究という。同じ地域に住む、同じ職業を持つ、同じ年に生まれたなど、共通の特性を持つ集団を追跡して、その集団からどのような疾病が発生し、健康状態が変化したかを観察する研究だ。

掛川市では調査開始時に詳細なアンケート調査が行なわれ、遺伝子を含む各種項目を調べる検体検査や体重、血圧、腹囲などのデータが集まっている。5年ごとに再調査が行なわれ、比較検討される予定だとか。

疫学研究の結果は今後も注視したいが、抹茶の摂取には以下の効能があるのではないかと、経験的に推測されている。すなわち

1.抗がん作用
2.大腸ポリープ予防
3.体脂肪の減少
4.中性脂肪の抑制
5.血圧降下
6.脳障害の予防
7.血糖上昇の防止
8.糖尿病の予防
9.ウィルス感染の予防
10.粘膜免疫系の強化
11.抗アレルギー作用
12.花粉症の予防
13.アンチエイジングと美容効果
14.認知症予防
15.ストレス緩和効果
16.殺菌作用
17.解毒作用
18.虫歯予防
19.口臭予防

ここに掲げたすべてが、ただ一服のお茶から得られることは、もちろん期待できない。しかし、これまで述べてきた「感謝」「呼吸」「国際」「健康」という四つのKを総合的に考えるなら、日常的に抹茶を楽しむ習慣は、私たちに歓びと豊かさをもたらしてくれそうだ。

呼吸法と組み合わせた「寿限無老師のお茶会」というイベントも構想中である。
みんなで抹茶を楽しもう。

投稿者 kurosaka : 2021年11月29日