ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


なぜ食はカルト化するか

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『問う教室~質問するだけで世界はどれくらい変わるだろうか?〜』より第8問〜第11問




第8問:食の意見はなぜ荒れる?

問うことは「視点」を決めるといいます。何を見るか、どこから見るか、どう見るか。質問をすることで、それらがおのずと明らかになるというわけです。

ここで、質問が多様な視点を作り出すことを実際に確認してみましょう。少し気分を変えて対談形式を採用し、3人の助っ人に登場してもらいます。正確には2人と1匹ですが...。

***
モーリー先生(モ)
冷静で理性的、論理的、現実主義的で、話をわかりやすくまとめてくれます。

花ちゃん(花)
想像力豊かな女の子。躍動感にあふれ、柔軟な発想で話を広げてくれます。

いたずら猫ヤップ(ヤ)
ときどき話に割り込んでは混ぜっ返すやんちゃな子猫です。

***

花:こんにちは、モーリー先生。

モ:やあ、花ちゃん、こんにちは。

花:今日は「食」について教えてください。

モ:食って、食べることかい? 

花:はい。たとえば「玄米菜食」を勧める人と「断糖肉食」を勧める人がいますよね。

モ:そうだね。

花:あと「朝食は絶対とらなければならない」と言われるかと思うと、「朝食は身体に悪い」という本も呼んだことがあります。

モ:ははは、たしかにそうだね。栄養素をたっぷりとることを推奨する人がいる一方で、少食や断食を勧める人もいる。

花:みんな言うことがバラバラで、なにが正解かわからなくなっちゃうの。

モ:それらの主張の多くが排他的で攻撃的なのはどうしてだろうね。
花:そう、みんな、自分だけが正しいって言い張っているように見えるわ。

モ:こういう諸説が入り乱れるテーマについて、どのように考えるべきだろう?

花:どこから手をつけていいのかわからなくて...。




第9問:5W1Hをどのように使うか?

モ:ここで「5W1H」という問い方を試してみようか。

花:ニュース記事を書くときの5W1Hかしら?

モ:そうだよ。ハナちゃんは5W1Hの中身を知っているかい?

花:いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)でしょ? 小学校で習ったわ。

モ:うん、それをひとつずつ考えていこうか。まずWhenだね。これは、食を「時間」という切り口から問うんだ。

花:時間という切り口...?

モ:たとえば、食事を朝するか、昼か、夜か、一日に何回するかなどだね。

花:あ、わかったわ。そうすると「朝だけ断食」とか「週一断食」なんかも、時間の切り口で考えられるわね。

モ:ハナちゃん、勘がいいね。その通りだよ。あと、食の影響を短期で考えるか長期で考えるか、どれくらいの時間経緯で観察するかということもあるね。

花:するとWhereは、食を「場所」について考えればいいのね?

モ:正解だよ。家食か外食か、室内で食べるか野外か、個人食堂かチェーン店か、大都市か農山漁村かなど、いくらでも細かく分析できるね。

花:おもしろくなってきたわ。Whoはどう考えればいいのかしら?

モ:食の人的要素だね。たとえば、調理したのは家族か料理人か、男か女か、年齢は、調理経験は、などかな。あと、誰と食事をするかという観点もあるね。

花:孤食か、大勢で食べるか、みたいなことね。




第10問:何を食べる、なぜ食べる?

モ:そしてWhat、これが一番良く議論されるところじゃないかな。糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、それらのバランスをどう考えるかということだね。

ヤ:ニャン! ぼくは生まれてからずっと加工食品ばかりだニャ。

花:あら、ヤップ、寝てたんじゃないの?

モ:ははは、ヤップ、おはよう。たしかにそうだね、ポリポリのキャットフードと缶詰ばかり食べてるものね。でも、猫に必要な栄養素がちゃんと計算されている、いわば完全栄養食なんだよ。

ヤ:ま、不満じゃニャいけど、たまには狩りがしてみたいかニャ。

花:ヤップも野生の血が騒ぐのね。

モ:さて、食の Why とはなんだろうね?

花:なぜ食べるか...??

ヤ:お腹がすくからに決まってるニャん。

モ:もちろんそうだけど、たとえば猫はエビとか食べると危険だろ?

ヤ:知らニャいぞ!

モ:人間の場合も、アレルギーなど体質的に食べられない食材があるんだよ。また宗教的な理由で口にしないものがあったりね。

花:生まれ育った土地の習慣や家族の好みもあるわね。

モ:ライフスタイルによっても異なるね。スポーツマンと職人さんでは必要な食材や量も違う可能性があるし。

花:そういう食の「理由」を考えるのがWhyなのね。




第11問:どう食べる?

モ:そしてHow、どう食べるかという問題。同じ食材でも調理の仕方や味つけによってまったく違う料理になるよね。

花:食べ方の問題もありますね。よく噛んで食べるか、飲み物をどうするか、楽しく食べるか、お説教を聞きながら食べるか...。

モ:スマホ操作しながら食べる人もいるね。

花:あと、食べる量も「どう食べるか」だわ。

モ:その地方の気候やその日の天気、そして食べる人の体調もある。
花:食事って、ものすごく複雑なのね!

モ:そうだよ。「正しい食事とは」と問う場合、ものすごい数の検討項目が必要になる。

花:どの要素をどのくらい重視するかというバランスも考えると、気が遠くなりそう!

モ:そのひとつひとつを検証することは不可能だよね。だから何が正解とは言えないんじゃないかな。あまりにも例外が多すぎるからね。

ヤ:だから、みんな大きな声を出すのかニャ? 「これが正解だ」と断定するために。

モ:そうだね。でも、それを信じた者には、一定期間、ある程度の効用がもたらされる。ある種のプラシーボ効果も加わるというわけさ。

花:じゃあ、やっぱり正解はないということなのね。

モ:だから何を食べてもいい、ということにはならないだろうけどね。ところでハナちゃん、気づいたかな? こうして5W1Hを使って問うことで、食の世界の見え方がずいぶん変わっただろ?

花:あ、ほんとだ。なにか、世界がぐんと広がった感じだわ。





『問う教室~質問するだけで世界はどれくらい変わるだろうか?〜』
著:黒坂洋介

投稿者 kurosaka : 2021年8月21日