ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


Jazz for Peace

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  国際基督教大学モダン・ミュージック・ソサェティ
  アメリカ公演2003(3.13〜3.26)レポート。ロサン
  ゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコ、サクラ
  メント、ホノルルなど、濃密な時間を過ごした2週
  間。

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3月13日(木)
<4度目のアメリカ公演>
国際基督教大学(以下ICU)のビッグバンド「モダン・
ミュージック・ソサェティ(以下MMS)」のアメリカ公
演は、1991年、1995年、1999年に続いて、今年で4回目
を迎えます。


<到着初日からホットなライブ>
ロサンゼルスへ到着したMMS一行20名は、チャーターバス
で、Fullerton(ディズニーランドの近くです)のホテル
へ向かいます。

チェックインして、夕方、再集合。今夜のライブ会場で
ある Stermers Cafe へ向かいます。今日のゲスト Wayne
Bergeron は、1999年の公演で衝撃的な日本デビューを果
たしたトランペット奏者。メイナード・ファーガソンな
ど超一流バンドのリードトランペットを歴任し、現在は
西海岸でナンバーワンのスタジオ・ミュージシャンです。

このギグの主催者 Jim Linahon もまたトランペット奏
者。ジャズ教育者、レコーディング・プロデューサー、
プロモーターなどさまざまな顔を持つLinahon氏ですが、
今日は主催者兼出演者として大活躍です。

トランペット2本をフロントにしたWayne Bergeron & Jim
Linahon Quintet とMMSとが交互に演奏するジョイント・
コンサートに、Steamers は満員御礼。店の外に行列がで
きるほどの盛況でした。

Wayne はMMSの演奏にも参加、「Secret Love」「Replay」
の2曲を演奏しました。いつもの魅力的なハイノートを
カリフォルニアの夜に響かせました。


<サル来襲す!>
会場には Sal Cracchiolo も来てくれました。Sal は、
ポンチョ・サンチェスのバンドで活躍したラテン・トラ
ンペットの名手で、4月には2週間の日本公演を行ないま
す(4月末〜5月初/大阪、静岡、東京、名古屋、多摩、
金沢、富山、横浜など)。

MMSのセカンド・セットで、「Replay」をもう一度演奏
し(文字通りリプレイ)、ここではSalもソロを吹いてく
れました。WayneとSalが強烈なバトルを繰り広げる、ゴ
キゲンなセットとなり、MMSアメリカ公演の初日は、無
事お開きとなりました。

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3月14日(金)
<炎のワークショップ>
Jim Linahon氏のバンド指導は、そのテンポの速さと勢い
の激しさから、炎のワークショップと呼ばれることがあ
ります(私が勝手に呼んでるんですけどね)。

この「炎」の熱気を、そのままMMSに手渡したい。そう
考えて、今回は通訳なしでワークショップをしてもらう
ことにしました。実際、ICUの学生は、ふつうの大学と
比べて格段に英語のリスニング能力が高いので、訳さな
くてもほとんど問題ありません。

Linahon氏からは、MMSがたいへんによく練習しているこ
と、指導者の普段の教え(*)がよいことが分かる、など
たくさんおホメの言葉をいただきました。特にサックス・
セクションは素晴らしいと。

   * MMSは普段からトランペットの外山昭彦氏、
    サックスの吉田治氏から指導を受けていま
    す。アメリカ出発直前には強化合宿も組ん
    で、みっちり指導を受けたそうです。

指導の内容は、ほとんどがダイナミクスについてでした。
音量の大きいところを効果的に聞かせるために、小さい
ところはできるだけ落とす。また、全体としてフォルテ
のフレーズでも、その中をさらに分けて、音形に従って
音量を変える工夫、などのアドバイスを受けました。

「鳴りっぱなし」では聴衆は退屈する。だから、「あれ、
音が消えた?」と思わせるほど音量を減らしたり、とに
かく一本調子になることを避けなさいと。プロの演奏家
は、同じ音量のままフレーズを吹き続けることはない、
必ず大きくしたり小さくしたりしながら、リスナーに語
りかけるものだと教わりました。


<アドリブはストーリー>
バンド全体の指導のあとは、セクションに分かれてクリ
ニック(金管はまとめてLinahon氏が引き受けました)。

金管のクリニックで「インプロヴィゼーション(即興演
奏)」の練習方法について質問が出ました。Linahon氏の
回答は、「まずブルースを練習しなさい」。はじめは単
音(たとえば主音のみ)で、リズムの変化だけを聞かせ
るソロを練習する。

次に「主音+短3度」の2音だけのソロに挑戦。それに慣
れてきたら「主音+短3度+4度」の3音で、さらに「主
音+短3度+4度+減5度」など、徐々に「使って良い音」
を増やしながら、その制約の中でソロを組み立てる練習
をしなさいとのこと。

アドリブというと、たくさんの音で埋めつくすことを考
えてしまいがちですが、大切なのは聴衆にストーリーを
語って聞かせること。上記の練習を繰り返すことで、ひ
とつの音が担う役割を広げてやります。その結果、それ
ぞれの音が意味を持つ、興味深いストーリーを語れるよ
うになるというのが、Linahon氏の指導です。

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3月15日(土)
<ロス録音3枚目のアルバム>
MMSはこれまでに2枚のCDを発表しています。いずれもロ
サンゼルス録音で、1995年「Celebration(ゲスト:Chuck
Findley)」、1999年「The Gordian Knot(ゲスト:Gary
Foster)」です。

3枚目となる今作は、Wayne Bergeron と Kei Akagi を
ゲストに迎え、「LOCUS」と銘打つアルバムを制作しま
す。LOCUS とは「軌跡」のこと。何やら意味深ですね。
収録する曲目は以下の通りです。

 - Moment's Notice(Buddy Rich)
 - When I Fallin' Love(オリジナル曲)
 - Willowcrest(Bob Florence)
 - Alexander's Big Time Band(Tom Kubis)
  * ゲスト:Kei Akagi
 - Secret Love(Rob Parton)
  * ゲスト:Wayne Bergeron
 - Replay(オリジナル曲)
  * ゲスト:Kei & Wayne
 - Quiet Riot(Louis Belson)
 - Wind Machine(Count Basie)

オリジナル曲はMMSを指導している吉田治の作曲。Wayne
をフィーチャーした「Secret Love」は、譜面が出版さ
れていないので、Rob Parton と直接交渉して入手する
など、選曲にも工夫の跡(locus)が見られます。


<キャピトル・レコーズ>
レコーディングは、ハリウッドにそびえる白亜のビルディ
ング「キャピトル・レコーズ」のAスタジオを使って行な
います。

「キャピトル」はビートルズのレーベルとしても有名で
すが、ハリウッドのスタジオはフランク・シナトラが愛
用したことでジャズ界に広く知られています。


<スタジオライフの経験>
今日は、朝の9:30から夜10:30まで、ずっとスタジオに
こもります。食事は昼も夜もデリバリー。ちなみにラン
チはサンドイッチ、ディナーはタイ料理を注文しました。

夜のタイ料理では、久しぶりの白飯とアジアの味覚に、
一同感嘆の声をあげました。「うまい!」。

後半戦は、ソロパートの別録りです。一人ずつスタジオ
に入って、先ほど録音したアンサンブルに重ねて収録し
ていきます。ここでもみんな落ち着いたソロを披露して
いました。中には一回目のテイクでOKを出すプレイヤー
もいて、レコーディング初体験にしては堂々としたもの
です。

一流スタジオで、一流アーティストをゲストに迎えてア
ルバムを収録する。これが感動的で貴重な経験であるこ
とは十二分に感じつつも、一日の終わりにあるメンバー
が口にしたのは、「やっぱりライブのほうがいい」とい
う一言。

これは案外、核心をついた発言かもしれません。レコー
ドやCD、映画やテレビのように「録音された音楽」は、
聞く側も、演奏する者にとっても、あくまでも擬似体験
にすぎない。目の前でライブな音楽を聞いたり演奏した
りする体験にこそ、真の喜びがあるのでしょう。

とはいえ、この日のレコーディングが、MMSにとって忘れ
得ぬ素敵な思い出になったことは間違いないと思います。
プロデューサーのJim、エンジニアのCharlieも、楽しい
作業だったと、MMSへの賛辞を惜しみませんでしたし。

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3月16日(日)
<ディズニーランド>
今日は青空の見える快適な天気。私たちは朝からウキウ
キとディズニーランドへ出かけ、思い思いにアトラクショ
ンを楽しみました。

午後、みんなでいったんホテルへ戻り、演奏準備。今度
はディズニーランドのバックステージへ向かい、ウォー
ムアップです。

演奏会場はパーク内の「Plaza Gardens Stage」。以前は
「カーネーション・プラザ」と呼ばれていたのですが、
スポンサーが降りたため名称変更になったそうです。

MMSの演奏は30分間。レコーディングが終わって気がゆる
んでいるかと思いきや、今日もサウンドは絶好調です。
引き締まったアンサンブルが響き渡ると、次々にお客さ
んが集まって来ました。

私は会場で演奏の写真を撮っていたのですが、何人かの
お客さんが声をかけてくださいました。「このグループ
は素晴らしい」「いつまでカリフォルニアにいるのか」
「CDはいつ頃リリースされるのか」などなど。

ジェイミー・エバソウルド(*)のところで働いていると
いう男性も話しかけてくれました。「こんなすごいバン
ドが出るなんて知らなかったんだ。今日は家族で遊びに
来ていたんだけど、たまたまここを通りかかったら、あ
んまりいい音楽をやってるんでびっくりしたよ。ジェイ
ミーに聞かせたら喜ぶだろうな」。

  * マイナスワンCD教材で有名なジャズプレイヤー。

拍手と歓声、絶賛の嵐のうちに、MMSのディズニーランド
公演は幕を降ろしました。

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3月17日(月)
<ロサンゼルス快晴なり>
CNNから流れるイラク情勢をめぐる緊迫のニュースが遠い
世界のことのように、ロサンゼルスは快晴。絶好の観光
日和です。

まずは Hollywood Bowl を見学。ここは毎年プレイボー
イ・ジャズ・フェスティバルが開催される会場で、すり
鉢形の野外ステージです。圧巻なのはその規模。会場へ
たどりついたMMS一同も、口々に「うひゃあ」と叫ぶ壮
大さ。「ここで一度演奏したいですよ」ですって。

続いてハリウッドの Tower Records でジャズのCDを買
い込みました。ランチタイムは、Farmer's Market。特筆
すべきはここのオレンジジュース。しぼりたてのフレッ
シュジュースは、全身の細胞が飛び起きるようなおいしさ
です。

ビバリーヒルズ、ロメオドライブを経て、サンタモニカ・
ビーチのショッピングモールへ向かいました。天気がよく
て暖かいので、サンタモニカの美しい砂浜をながめながら
潮風に吹かれるのは最高です。気持ちいい!


<Shurr High School 訪問>
夕方、Shurr High School を訪問。さっそく学校のカフェ
テリアで、日本食のディナーをふるまってくださいまし
た。白飯、味噌汁、とんかつ、ポテトサラダ、照焼きチ
キンなどなど。バンド指導者の Leonard Narumi 氏は日
系3世。日本語は「ホンノスコシダケ」だそうです。
今夜はジョイントコンサートではなく、MMSだけが演奏を
披露。お客さんはホストファミリーを中心とした、この
学校の生徒と保護者です。みんなMMSのハイレベルな演奏
に感激してくださったようです。スタンディング・オベ
ーションの暖かい拍手に包まれました。

今日はホームステイです。いくつかの家庭に分かれて、
散っていきました。どんな夜を過ごすのでしょうか。

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3月18日(火)
<サンディエゴへ>
Shurr High School のホストファミリーは、みなたいへ
ん良くしてくださったとのこと。アイスクリームを食べ
に連れて行ったり、日本食をふるまってくれたり。おで
んとフレンチトーストの朝食という家もあって、文化の
違いに興味は尽きません。Shurr のホストには、今晩も
またお世話になります。

さて、MMSは一路サンディエゴへ。サンディエゴ州立大学
(以下SDSU)で教鞭をとる Bill Yeager 氏は、かつて
「LA Jazz Workshop」という知る人ぞ知る名ビッグバン
ドのリーダーとして、多くのジャズミュージシャンを育
てました。このビッグバンドのリードトランペットだっ
たのが、今回 MMS が共演した Wayne Bergeron でした。


<感激のワークショップ>
Yeager 氏に指導してもらった曲の中に、Bob Florence
の「Willowcrest」がありました。Yeager 氏自身が Bob
Florence に在籍したこともあるそうで、「レコーディン
グが終わってからダイナミクスを変えた箇所がある」な
ど、この曲に関する裏話を聞かせてくださいました。

そして、BFバンドが実際に使った譜面(のコピー)を出
してきて、試しにこちらを演奏してごらんと言ってくだ
さいました。これには一同、大感激。BFバンドのメンバ
ーが鉛筆で書き込んだメモの跡が生々しく、なんだかワ
クワクします。おまけにオリジナルアレンジは、MMSが演
奏している譜面と微妙に違っていて、音楽的にも興味深
い体験でした。


<Dizzy's Jazz Club で演奏>
Dizzy's はライブハウスといってもただの倉庫のような
場所にステージと客席を用意しただけの、素朴な小屋。
食べ物はなく、飲み物だけを主催者が持ち込みで販売し
ているという、学園祭に近いノリです。

ただ、建物自体に雰囲気があるのに加えて、本当にジャ
ズが好きな人たちが手作りのライブをする場所なので、
とてもいい感じです。

まずは MMS が演奏を披露。もともとアンサンブルが緻密
なバンドですが、今日は無駄な力が抜けて、ゆったりと
したサウンドに聞こえます。だんだんアメリカでの演奏
に慣れてきたのかもしれません。「Replay」では、Bill
Yeager 先生にもソロをとっていただきました。

ギグの後半は、SDSU の学生バンドが演奏。選曲の傾向が
MMS とは対称的で、どちらかといえばビッグコンボのよ
うな演奏でした。ソロに自信のあるメンバーがたくさん
いて、なかなか聞かせる演奏です。アンサンブルとして
は、やはり Bill Yeager 色が強く、LA Jazz Workshop
に似た響きです。


<過酷なスケジュール>
サンディエゴ Dizzy's 公演を終えるとすぐバスに乗り、
ロサンゼルスの Shurr High School へとんぼ返りです。
約2時間のドライブを経て、Shurr へ着いたのが午前0時
半頃。ホストファミリーの方々は、こんな真夜中にもか
かわらず集まってくださいました。

さらに申し訳ないことに、明朝の出発が午前7時なので
す。MMS はミュージシャンですから、こういう生活もま
た貴重な経験と言えますが、ホストファミリーは本当に
気の毒です。諸事情があって、このようなハードスケジュ
ールとなったわけですが、快く引き受けてくださってい
る Shurr の Leonard Narumi 先生およびホストの皆様に
感謝感謝です。こうして、長い一日が幕を降ろしました。

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3月19日(水)
<思い出のサンフランシスコ>
昨夜は遅く戻ったにもかかわらず、ホストファミリーの
みなさんは MMS を無事、時刻通り学校へ届けてください
ました。ロサンゼルス空港へ向かうバスの中では、みん
な爆睡。移動中に睡眠を取るのは、芸能人(?)の定め
です。

サンフランシスコ空港に到着し、バスで市内観光。サン
フランシスコ・ジャイアンツのホームグラウンドである
「Pac Bell Stadium」を通り、Pier39へ。ここでシーフ
ードのランチをいただきました。

今度はゴールデン・ゲート・ブリッジへ向かい、サンフ
ランシスコの市街を見下ろす丘の上から、橋をバックに
記念写真を撮影です。バスの中では運転手さんが「I Left
My Heart in San Fransisco」のテープを流してくれて、
美しい風景と音楽にうっとりです。


<Kuumbwa Jazz Center>
さて、バスは南をめざしサンタクルーズの街へ。今日の
演奏会場 Kuumbwa Jazz Center のオーナーは、Monterey
Jazz Festival の総支配人でもある Tim Jackson 氏。

コンサートの主催者は、この近辺の大学や高校で教鞭を
取る Rob Klevan 氏。まずは、氏が指導する Stevenson
High School Quartet(p,g,b,ds)がコンサートのオープ
ニングを飾ってくれました。高校生ながら堂々とした演
奏です。

続いてカリフォルニア州立大学サンタクルーズ校(以下
UCSC)のビッグバンド。こちらも Klevan氏の指導する
学生による演奏です。わりとラフなアンサンブルながら、
ツボをおさえていて興味深く聞かせる。なんとも不思議
な魅力を感じる演奏です。

トリを飾るのは MMS。タイトなアンサンブルに今日も会
場は盛り上がります。ハードスケジュールの疲れが出る
頃なのですが、無駄な力が抜けて、それが逆にプラスの
効果を発揮しているようです。リラックスした良い演奏
でした。

最後の「Replay」では、UCSCのテナーサックス Joeさん
にもソロをとってもらい、ジョイント・コンサートは大
いに盛り上がりました。
 
イラクでは戦争が始まっていますが、アメリカの市民生
活は平常通りです。今のところ、特にこれといった影響
は見られませんね。

演奏終了後、バスに乗り込み、サンフランシスコまで1時
間半の旅。そしてホテルへチェックインです。今日もま
た、長い一日でした。お疲れさまです。

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3月20日(木)
<反戦デモで始まる朝>
昨日からアメリカ軍によるイラク攻撃が始まったことを
受けて、今日は朝から反戦デモが行なわれました。サン
フランシスコの道路を人垣で封鎖し、警官隊と小競り合
いが始まっているとニュースが伝えています。

ただ、報道されているのは、これによる交通渋滞情報に
重点が置かれていて、それも今のところ大きな影響では
ないとのこと。MMS が泊まっているホテルの隣の交差点
にも、デモ隊が横断幕を掲げて抗議行動をする姿が見ら
れました。


<急進的なUCバークレー>
カリフォルニア州立大学バークレー校(以下UCバークレ
ー)は、ベトナム反戦デモ以来、急進的な学生運動の拠
点としての歴史を持つ学校です。ブッシュ政権の軍事行
動に対しては、当然のことながら強く反対しています。

そして、MMS が今日演奏するのは、その UCバークレーの
キャンパスなのです。大規模な反戦集会と同時進行で演
奏を行なうことになりそうです。


<ダブル・ワークショップそして演奏>
Ted Morris 氏(ds)、Steve Campos 氏(tp)のお二人
が同時に指導してくださるという、ちょっと変わったス
タイルで、今日のワークショップが始まりました。4ビー
ト曲の2拍と4拍を強調する方法について、丁寧な指導を
受けました。

そして昼休みには、予定通り同校キャンパスで MMS の野
外演奏が行なわれました。少し離れた別の広場では、こ
れも予想通り反戦集会が盛大に開かれ、それを警官隊が
取り巻いているので、ものものしい雰囲気です。

Alexander's Big Time Band と Replay の2曲では、UCバ
ークレーの学生2人もソロをとってくれるなど、こちらは
こちらで音楽による平和希求のメッセージを、ささやか
に表現しました。


<楽器屋さんと譜面屋さん>
このあとオークランドの Best Music(楽器店)、サンフ
ランシスコの Byron Hoyt(譜面店)を訪れ、ショッピン
グを楽しみました。

全体としては、ごくふつうに市民生活が営まれています。
戦争が始まってしまった以上、一日も早く終わってほし
いというのが、アメリカ社会の切なる願いのようです。

保護者の方々をはじめ関係者のみなさまが、MMSの状況を
リアルタイムに把握できるよう、本レポートを MMS のホ
ームページへもアップすることとなりました。
mms-icu.hp.infoseek.co.jp

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3月21日(金)
<州都サクラメント>
カリフォルニア州の州都サクラメントへ向けて出発です。
サンフランシスコからは、バスで北へ2時間程度の街。
ここにある Cosumnes River College が今日の目的地で
す。天気は快晴。陽射しがまぶしくて、キャンパスがキ
ラキラ輝いて見えます。

MMS の演奏は、Performing Arts を専攻している学生向
けのコンサート。つまり授業の一環として行なわれるも
のなので、聞きに来た学生は単位を稼げるわけです。

会場となった教室はレコーディングもできる部屋で、残
響がほとんどありません。MMS のメンバーは、自分の音
しか聞こえないような環境に戸惑い気味でした。でも全
体として、いつものタイトなアンサンブルは健在で、聞
きに来た学生たちの暖かい拍手を浴びました。


<ひとひねりしたワークショップ>
MMS がこれまでアメリカで受けたワークショップは、自
分達が練習してきた曲を見てもらうスタイルでした。今
日は、少し違ったやり方です。

指導してくださる先生は、Cosumnes River College の
Ron Cunha 氏(苗字はクーニャと発音するそうです)。
地元在住の作曲家による「Hog Farm Blues」というオリ
ジナル曲を初見で練習するという指導です。

この曲はロック調リズムのGブルース。MMS のレパートリ
ーとはずいぶん違う雰囲気の作品です。1時間かけてこの
曲を仕上げました。ユニークなワークックショップに、
一同満足。「定演でこの曲をやろう」とか「いや、5月に
サルと共演しよう(*)」とか、前向きな発言も聞かれま
した。

  * 4〜5月に来日するサル・クラキオーロ(tp)
   との共演のこと。MMS はロスの Steamers で
   すでにサルと会っています。

3月22日(土)
<アロハ!>
サンフランシスコ空港を飛び立った MMS は、トロピカル
ムード満点のホノルルに到着しました。強い陽射し、緑
の濃い植物、むせかえるような花の香り。戦争のことを
思わず忘れてしまいそうな楽園の雰囲気です。

アメリカ本土とは2時間の時差があるため、一日が長く使
えます。ワイキキのホテルへチェックインした後、アロ
ハを選び、水着を買い、ビーチサンダルに履き替え、海
辺に向かい・・・など、思い思いに時間を過ごしました。

今日はまったく演奏もワークショップもありません。こ
れはアメリカへ着いてから10日目にして初めての出来事。
ロサンゼルスに到着したその夜から始まって、昨日のサ
クラメントまで、移動と演奏を繰り返してきたのです。
ああ、なんてハードなスケジュールなんでしょう(って
このプランを作ったのは私なんですけどね)。


<環太平洋音楽祭>
MMS がハワイへ来たのは、ワールド・プロジェクトで主
催する「環太平洋音楽祭」にゲスト出演するためです。
各地のバンドが、今日は続々とハワイに到着し、街中に
楽器を持った若者がたくさん歩いています。

この音楽祭は毎年3月にハワイで開催。環太平洋各国の高
校生吹奏楽団(*)の国際交流を目的としています。

  * 日本からも、これまでに春日部共栄高校、洛南高
   校、伊那学園総合高校、石川県高校選抜吹奏楽団、
   埼玉栄高校などにご参加いただいています。

3月23日(日)
<ペリーズ・スモーギー>
MMS が宿泊しているホテルの隣には、「ペリーズ・スモ
ーギー」というトロピカルな雰囲気のレストランがあり
ます。ウッディな内装で、中庭と自由に行き来ができる。
亜熱帯の植物が生い茂り、鳥たちも羽根を休めに(エサ
をもらいにかも)やって来る。「ああ、ハワイに来たん
だなあ」と実感できる空間です。

そのペリーズ・スモーギーが私たちの朝食会場。バイキ
ング形式でいろんなものが食べられますが、やっぱりフ
ルーツがおいしいですね。パイナップル、パパイヤ、ス
イカ、メロンなど。カリフォルニアではジュースと言え
ばオレンジでしたが、ここではパインが主役。コナ・コ
ーヒーの香りも高く、ゆっくりと朝食を楽しみます。


<常夏のフリータイム>
イラクは戦争で大変だというのに、ワイキキではそんな
国際情勢などどこ吹く風。リゾート気分に満ちあふれ、
MMS のメンバーもビーチで泳いだようです。

午後は昼寝する人、水族館へ行く人など、これもまた自
由に過ごしました。平和です。平和のありがたみを、し
みじみと感じます。


<環太平洋音楽祭ウェルカム・パーティー>
MMS は、環太平洋音楽祭のウェルカム・パーティーで演
奏です。会場はパシフィック・ビーチ・ホテルのボール
ルーム。アメリカやカナダの高校生約600名、それもみん
な音楽をやる子たちがお客さんです。今回の MMS ツアー
中、もっとも大きな演奏会に、気分も引き締まります。

ソロマイクが1本あるだけで、基本的には生音で勝負。
音響的には決して恵まれていない環境ですが、MMS の演
奏は実に落ち着いたものでした。コンサートの最後には、
会場総立ちのスタンディング・オベーション。各国の音
楽指導者も口々にほめ称えてくださいました。

3月24日(月)
<アラモアナで弾ける>
MMS アメリカツアー2003の最終演奏会は、アラモアナ・
ショッピングセンター。買い物客でにぎわうモールに設
けられたステージで演奏を披露します。

MMS をいつも指導しておられる外山さんから、昨晩メッ
セージをいただいていたので、演奏前にそれをメンバー
に伝えました。

  長かったアメリカツアーも明日で最後のステージを
  迎えられた事を喜んでいます。ここまで来れたのも
  メンバーの忍耐&努力,そして何よりもMR.KU
  ROSAKA.貴方のおかげだと感謝しています。
  明日のステージは弾けて下さい。ではまた。
  外山昭彦

私の役割は「後方支援」に過ぎませんが、MMS のメンバ
ーは本当によく耐えたと思います。出発前の集中練習か
ら、アメリカでの強行スケジュールまで。そして、外山
氏、吉田氏の熱心な指導があってこそ、彼らもここまで
来られたのだと思います。みなさんに感謝です。

さて、アラモアナのステージ。ワールド・プロジェクト
会長ボブ・ラットに紹介され、MMS の演奏が始まります。
タイトなアンサンブルを聞いて、買い物客が次々と足を
止めます。MMS は、最後の曲まで集中力を持続し、見事
に「弾け」きりました。みなさん、お疲れさまでした。


<Jazz for Peace>
今回のアメリカ公演は、イラク戦争のさなかという特殊
な状況のもとで行なわれました。あらためて平和の大切
さを実感する旅でした。

一方、ツアー中にたくさんの方と出会いました。Wayne
Bergeron、Sal Cracchiolo、Jim Linahon、Bill Yeager、
Leonard Narumi、Ron Cunha、Rob Klevan、Ted Morris、
Steve Campos、Shurr High School のホストファミリー、
その他多くのスタッフ。音楽を通じてこれだけの人との
出会いがあり、喜びを共有できたことは素晴らしいと思
います。

Jazz for Peace。私たちにできるのはジャズを奏でるこ
とだけですが、音楽が少しでも人と人の関係をよくする
ことができたらと、心から願っています。

MMS 一行は3月25日(火)ホノルル空港を出発し、翌26日
無事成田へ到着しました。

みなさん、ありがとうございました。

ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介

投稿者 kurosaka : 2004年3月15日