フランシスコ・トーレス講義録
【立教大学New Swingin' Herd&慶應義塾大学K.M.P. NEW SOUND ORCHESTRAクリニック】
●楽器を吹く前に深呼吸5回●鼻からすって口から吐く深呼吸で肩を降ろしリラックスする
●Bbの音をスライドで微調整する
●高音域はスライドを長くした別ポジションで出してみてそのテンションを維持したまま通常ポジションにする
●タ(TA)ではなくハ(HA)とノータンギングで吹く
●スライドは腕ではなく手首を使って操作する
●スライドの動きはlazyにならないようquickに動かす
●肩の力を抜く
●リラックスを忘れないで
●ロングトーンをクレッシェンド、でクレッシェンドで
●音が変わるときに空気の流れが止まらないように注意
●流れ続ける空気を舌で切っていくような軽いタンギング
●口腔容積を狭くしないで音域を広げる練習
●Bbのスケール練習でその音域を拡大していく練習
●Bb7を構成する4音をアルペジオで吹く練習
●ルート音を一番上に移動し3度音からアルペジオにする練習
●次は3度音を一番上に移動して5度音からアルペジオの練習
●以下、5度音、7度音を上に移動してアルペジオを続ける
●Bb7を半音ずつ上げてB7、C7、C#7として同様の練習を続ける
●Bb7から1音ずつ上げて同様の練習を続ける
●Bb7から短3度ずつ上げて同様の練習を続ける
●Bb7から長3度ずつ上げて同様の練習を続ける
●これらをすべてのキーで行なう
などなど、ウォーミングアップから楽器奏法、インプロヴィゼーションの基本まで短い時間ながら実習しました。
【神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校で、ユースバンド3団体を指導】
1.柳学園蒼開高校Swinging Willow Jazz Orchestra2.兵庫県立国際高校Hoppin' Note
3.神戸Youth Jazz Orchestra
それぞれの曲で、フランシスコはトロンボーンを吹き、パーカッションを叩き、ピアノを弾いてお手本を見せました。
●ラテン曲はリズムが命。
●打楽器はもとより管楽器や鍵盤、弦楽器もパーカッシブに演奏することを心がける。
●各セクションのリード奏者をよく聞いて歌い方を合わせる。
●リード奏者の音が聞こえないならそれは自分の音量が大きすぎる。
●ドラムはビートを刻むことが重要で装飾的な音はオマケと考える。
●インプロヴィゼーション(即興演奏)はコード構成音の順序を入れ替えるアルペジオの練習から入るとよい。
●譜面にソロが記載されている場合は、それらの音を使って違うリズムで演奏してみる。そうすれば理論を学ばなくても即興ができる。
●コード同士のつなぎ方の技術である声部連結(Voice Leading)についても軽く解説。
今日の受講者についてではなく一般論ですが、アメリカの一流ミュージシャンのクリニックを通訳してきて、日本とは異なるところに練習の重点を置いていると感じます。
日本の学校バンドの多くは、ひとつの曲に多くの時間をかけて練習し、細部まで徹底的に練り上げるのを中心課題にする傾向が強い。つまり「完成化」です。
一方、アメリカのスタジオあるいはジャズミュージシャンが口を揃えて強調するのは、「初見」「即興」の2点です。初見については、同じ曲を何度も練習しない、次々と違う譜面に触れていろんな音楽のスタイルに慣れる、などが指導されます。
即興については「目」を使わないで「耳」を使って練習しようとアドバイスされます。たとえばコード構成音の1度、3度、5度、7度(ドミソシ)を使って、その並べ方を変えていく。次に同じことを半音上げ、さらに半音上げる...と繰り返し、すべてのキーで練習する。次は1音上げて始め、その次は短3度上げ、次に長3度上げ、4度上げ、とつづけます。これを譜面に書かないで、頭の中でやるわけです。
また7度、5度、3度、1度(シソミド)を使って上から半音ずつ降りてくる練習。さまざまなアーティキュレーションを組み合わせる。マイナースケールでもやってみる、その他のスケールでもやってみる、など無数の練習を作ることができます。これをすべて頭の中でやる。
これも一般論ですけれども、バンド指導をする側と受ける側との認識が違うことが多いと感じます。つまり日本のバンドは曲の細部を磨き上げてもらいたい。けれども指導する側は、ざっと聞いて課題を洗い出したら次の曲に進もうとします。
私の経験では、アメリカの大学の音楽学部でバンドクリニックを受けると、1時間で5〜6曲、多いときは10曲近くを次から次へと指導します。曲を覚えてしまわないうちに次の曲へ進むわけです。こういう練習を繰り返すことで、音楽の全体像を直感的につかむ能力を磨いているのだと思われます。
1曲の完成度を高めるのが「閉じる」練習だとすれば、初見と即興に重点を置くのは「開く」練習と表現できるかもしれません。どちらかを肯定してどちらかを否定するのではなく、アプローチの違いに着目することで多くの学びが得られるのではないかと思います。
投稿者 kurosaka : 2024年6月30日