ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


アダム・シュローダーのサックス講義録

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【大阪MUSIC SPACE TO DOサックスクリニック】

受講者はバリトン1名、アルト2名。アダムからは3つの要点が語られました。

1.Sound
2.Time
3.Idea

もっとも大切なのはSoundであり、それを支えるのはAirである。受講者は一通りブルースをワンコーラス吹くように求められ、次にAirを意識してもうワンコーラス。するとその場でサウンドが変わるのがわかります。

さらに体内のTimeを意識して吹くとさらにサウンドに生気が宿り力強くなります。サックス奏者はAirを中心のSoundとTimeを磨き、その上でフレーズなどのIdeaに取り組むべきだとアダムは言います。多くのプレイヤーは逆の順序をたどり、Ideaから着手してしまうとも。

好きなプレイヤーの演奏を聞くとき、彼らがAirをどう使っているか、Timeをどう感じているかに着目し、それを再現してみるとよいとのアドバイスもありました。

目(譜面)に頼ってしまい、耳を使うことが苦手だという受講者に対しては、テレビでもラジオでもあるいは町を歩いていても、聞こえる音をコピーして楽器で吹いてみるといいとのこと。できればその構成音がどんな和音になるかを考える。

この練習を繰り返すことで、目ではなく耳を使う練習が自然と身につく。そのときもAirを意識して美しいSoundを心がけ、Timeに集中してよいリズムを心がける。

即興演奏についてはメジャースケールがいつもHomeであることが強調されました。スケールを構成する音のうち、1度、3度、7度の音を抜き出して、これをスケールの「要約」と考える。

そしてその「要約」と本当のスケールとを組み合わせてフレーズを作る。この作業を譜面に書かないで耳で行なう。つねにAirを意識して、Timeに集中しつつ音を出します。こういうベーシックな練習をするうちに、受講者の演奏はその場でみるみるレベルアップしていくのがわかります。

1時間あまりのグループレッスンですが、その内容は驚くほど濃いものでした。しかも効果が実感でき、今後の練習方針も立てやすい。非常にわかりやすく興味深い指導でした。



【神戸大学 Kobe Musso Jazz Orchestraへのクリニック】

三宮100BANホールにて、サックスセクションに対するクリニックから始めました。
「Three And One」「Mean What You Say」を素材として、息の使い方、譜面に命を与えること、バンドメンバー間のコミュニケーション、聴衆とのエネルギー交換などについて熱い指導が行なわれました。

「ジャズはレスポンスの音楽だ」という言葉が印象的でした。実際、アダムの提案を試してみると、バンドのサウンドはみるみる生気を得て楽しいものになりました。



【神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校でのワークショップ】

信頼できる相談相手、良き師のことをメンターといいます。古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』において、トロイ戦争に出陣するオデュッセウスが息子テレマコスを託した教育者「メントル」の名前が語源とされます。

メントルはテレマコスへ、戦争における兵法や戦術、政治的な交渉術、リーダーシップなど、さまざまなことを教えました。メントルはテレマコスとの対話を重視し、自分で考え解決する力を育てました。

アダム・シュローダーは自身のメンターはClark Terryだったと語ります。カウント・ベイシー、デューク・エリントン、クインシー・ジョーンズの各楽団に在籍し、他のバンドリーダーやマイルス・デイヴィスらにも影響を及ぼした偉大なトランペット奏者です。

アダムの最新アルバム『CT!』は、Clark Terry生誕100年を記念して制作されたオマージュ作品なのです。

今回の来日において、アダムは教え方がうまいと各地で高い評価を得ています。受講者のやる気を引き出し、メンバー間のコミュニケーションを促すことで、あっという間にバンドのサウンドが生気を得るのを何度も目にしました。

演奏者と聴衆のエネルギー循環を起こすことがミュージシャンの役割だとアダムは強調します。こういうことを彼はClark Terryから学んだそうです。そして今度は自分がそれを次の世代に伝えている。さらに彼らがまた受け継いでくれるのだと。

さて、今日のアダムは、神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校にてコンボ演奏の指導。ここでもアダムはメンターとして見事な仕事ぶりを発揮しました。

学生の演奏は上手ではあったけれども、最初は各自がただ音符を並べているだけでした。もっとお互いに音楽的対話をするようアダムからアドバイスがあり、それぞれが他のメンバーにどうしてほしいかを語り合う時間を設けました。

そして再び同じ曲を演奏すると、先ほどとはガラリと変わって躍動感が生まれました。音が音楽に変わった瞬間を体験したのです。

今回はトランペットとアルトサックスとがフロントでしたが、どちらがリーダーでどちらがフォロワーになるか、役割を決めることの大切さも説きました。それによって音楽が向かう方向が明確になり、バンドメンバー間のコミュニケーションがスムーズになるからです。

講義の後半はジャムセッション。ボーカルやトロンボーンも加わって、賑やかに楽しく音の会話が奏でられました。今日の受講者が次のメンターとなって、音楽に命を吹き込んでくれる。そんな確信が得られたワークショップでした。



【同志社大学The Third Herd Orchestraへのクリニック】

サックスセクションに対するクリニックから始めました。共演曲を素材としたセク練のようなスタイル。いつものように、息の使い方、譜面に命を与えること、バンドメンバー間のコミュニケーション、聴衆とのエネルギー交換などについて熱い指導が行なわれました。

アダム自身も指導中に述べたことですが、彼は特に新しい技術を伝授しているのではありません。メンバーひとりひとりがすでに知っている知識に意識を向けさせただけ。それによってバンドのサウンドが大きく変わる。どこに意識を置くかが、音楽を殺しも生かしもするのです。

投稿者 kurosaka : 2024年11月30日