わくわくワイキキ!第20回記念 環太平洋音楽祭
2005.3.20-3.24
環太平洋音楽祭プログラム
3月20日 第一日目
<環太平洋音楽祭とは>
「環太平洋音楽祭 Pacific Basin Music Festival」は、
1986年に産声をあげました。創立者 Robert Lutt は、バ
ークレー高校でバンドディレクターを勤めるかたわら、
サンフランシスコ郊外「カザデロの森」でミュージック・
キャンプを主宰するなど、長年、音楽教育に携わってき
ました。
環太平洋音楽祭においても、Robert Lutt は、音楽を通
じた国際交流を中心に据えて、教育的プログラムをふん
だんに盛り込むことにしました。今年は音楽祭の第20回
であり、Robert Lutt 引退記念大会でもあります。
<日本からの参加>
20年の歴史において、これまで日本からも数多くのバン
ドが参加されています。
秋田花輪高等学校 1986
埼玉春日部共栄高等学校 1988 1990 1995 1998
石川県高等学校選抜吹奏楽団 1992 2001
京都洛南高等学校 1993 1995
全日本高等学校選抜吹奏楽団 1994
埼玉伊奈学園総合高等学校 2000
埼玉栄高等学校 2002
明治大学ビッグ・サウンズ・ソサェティ・オーケストラ
1990
国際基督教大学モダン・ミュージック・ソサェティ
1991、1999、2003
立教大学ニュー・スインギン・ハード 1993
など。
ご覧いただいて分かるように、何度も繰り返し参加され
る楽団の多いことが、この音楽祭の特徴のひとつです。
第20回記念となる今年は、埼玉県から二つの吹奏楽団が
参加です。5回目の出場となる春日部共栄高等学校と、初
参加の花咲徳栄(はなさき・とくはる)高等学校です。
<到着>
まずは花咲徳栄高校が到着。楽器置場へ大形楽器を保管
してから、カピオラニ公園へ音出しに向かいました。続
いて春日部共栄高校も到着。パシフィック・ビーチ・ホ
テル5Fのボールルームで昼食をとり、音出しです。ホノ
ルルへ到着したばかりですが、時差もなんのその、両校
ともリハーサルに打ち込みました。
ウェルカムディナー
<ウェルカムディナー>
今年は第20回記念ということもあり、参加者数は例年よ
りもかなり多く、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、
シンガポール、トンガ、日本の各国から24団体、約1300
名がハワイに集まりました。スタッフや審査員はオース
トラリア、イギリス出身者もいますので、世界8カ国の間
で音楽を通じた国際交流が繰り広げられます。
環太平洋音楽祭ウェルカムディナーは、例年パシフィッ
クビーチの宴会場で行なわれるのですが、今年は人数が
多いため、シェラトン・ホテルに会場を移しました。こ
このボールルームがワイキキで一番広いそうです。
この夕食会では、各団体のメンバーがバラバラになって
知らない者同士で着席するため、新しい友達を作る絶好
の機会となります。いつもは夕食に引き続いてディスコ・
ダンスとなりますが、今年はあまりに人数が多いため、
安全上の理由からダンスは中止となりました。
そのかわりに、ハワイアンの生演奏、中国の獅子舞、和
太鼓のパフォーマンス、環太平洋音楽祭ビデオ上映、そ
してRobert Lutt の引退記念式典など、特別な催しが設
けられました。
花咲徳栄高校は全員おそろいのTシャツで、春日部共栄高
校は多くの女子が浴衣姿でディナーに出席。言葉の壁に
とまどいながらも、国際親善にチャレンジです。
こうして、長い長い第一日目は更けてゆきました。
川口智子先生(花咲徳栄高校)
都賀城太郎先生(春日部共栄高校)
3月21日 第二日目
<春日部共栄はいきなり本番>
水平線まで続く青い海。ふりそそぐ南国の太陽。道路に
沿って並ぶヤシの木。アロハシャツに身を包み、ビーチ
サンダルでそぞろ歩く人々。ハワイの明るい空気の中で
環太平洋音楽祭が始まっています。
各国からの参加楽団が腕を競う「フェスティバル演奏会」
は、今日と明日の二日間、パシフィック・ビーチ・ホテ
ルのグランドボールルームで開催。春日部共栄高校は今
日、花咲徳栄高校は明日の出演です。
昨日ホノルルへ到着したばかりでいきなりの出演となっ
た共栄高校ですが、スタンディング・オベーションを得
る熱演を披露しました。
<花咲徳栄はアラモアナ演奏>
同じ頃、花咲徳栄高校は、アラモアナ・ショッピングセ
ンターのステージで、楽しいポップス演奏。買い物客が
多く足をとめ、徳栄の若さあふれる演奏を鑑賞していま
した。「マツケンサンバ」ではユーモラスなダンスもあ
り、お客さんは大喜び。
<ワークショップ初体験>
パシフィック・ビーチ・ホテルに戻った徳栄高校は、オ
ーストラリアの Stephen Williams 先生のワークショッ
プ(バンド指導)を受講。「ふるさと」「宝島」「Sing
Sing Sing」の3曲を見ていただきました。
「ふるさと」は川口智子先生が指揮されました。Williams
先生は、たいへん素晴らしい演奏だとほめてくださいま
した。ただ、ところどころメロディラインが弱くなるの
で、そこに気をつけるようにとのこと。
続く「Sing Sing Sing」では、リズムセクションの重要
性を指摘。アクセントの付け方、二拍目四拍目の強調な
ど、ジャズの基本テクニックについて指導してください
ました。
ソロの伴奏でバンドの音量を下げる場合も、エネルギー
まで落としてしまわないように。くっきりとした力強い
音で、しかしソフトに演奏しなさいとのこと。
「宝島」ではソロがいかにも即興演奏らしく聞こえるよ
う、もっと自由に吹いてみてはというアドバイス。この
種の曲に「間違った音」はないので、譜面に忠実に吹こ
うとしないようにとのお言葉。
Williams 先生の指導は情熱的でエキサイティング。徳栄
の生徒も、いつしかそのペースに乗せられて、サウンド
が生き生きとしたものに変わっていきました。
こうして、春日部共栄、花咲徳栄とも、充実した一日を
過ごしたのであります。
3月22日 第三日目
<今日は花咲徳栄高校の本番>
今日のスケジュールは、ちょうど昨日と正反対。花咲徳
栄高校がパシフィック・ビーチ・ホテルのグランドボー
ルルームで「フェスティバル演奏会」にのぞみ、春日部
共栄はアラモアナ・ショッピングセンターで演奏です。
今日も両バンドは素晴らしい演奏を披露し、ハワイの聴
衆を魅了しました。
<アンコール演奏は花咲徳栄>
昨日と今日の二日間にわたって行なわれた「フェスティ
バル演奏会」はコンテスト形式になっています。もっと
も高い得点をマークしたバンドは、明晩開催される「コ
マンド・パフォーマンス」においてアンコール演奏を行
なうことになっています。
上位はたいへんな接戦でしたが、審査員の出した結論は
花咲徳栄高校がアンコール演奏。春日部共栄高校にとっ
ては残念な結果となりました。
1995年の環太平洋音楽祭でも同様のことが起きました。
あの時は、吹奏楽コンクール全国大会常連の洛南高校と、
全国大会未経験の春日部共栄高校が出場。上昇気流に乗
る共栄高校がコマンド・パフォーマンスを制したのです。
今回の共栄高校は追われる立場で臨んだわけですが、風
はやはり新興勢力である花咲徳栄に味方したようです。
とは言っても、両校とも聴衆が口々に絶賛する名演であ
り、本来はつける必要のない優劣をあえてつけるとすれ
ばこうなったというだけの話ではあります。花咲徳栄、
春日部共栄、両吹奏楽団の健闘を称えたいと思います。
素晴らしい演奏をありがとうございました。
3月23日 第四日目
<忙しい一日>
今日は(私が)ものすごく忙しい一日でした。
9:10-10:10
春日部共栄高校がバンド指導受講
(指導はGeoffrey Brand先生)
11:20-12:50
春日部共栄とLas Lomas高校の合同練習
13:00-14:30
花咲徳栄とMountain View高校の合同練習
14:45
花咲徳栄は楽器を積み込みハワイシアターへ移動
15:15-15:45
花咲徳栄はハワイシアターでアンコール演奏会のサウ
ンドチェック
16:00
ホテルへ戻り夕食
17:45
両校ともハワイシアターへ出発
19:00-21:00
ハワイシアターでアンコール演奏会(最優秀バンド、
最優秀コーラス、表彰式、音楽祭選抜コーラス)
バンド指導や合同練習は音楽用語の通訳をテンポよくや
らなくてはならないので、神経を消耗します。ワイキキ
とハワイシアターの二往復は、体力を消耗します。とい
うわけで、今日はくたくたに疲れつつも充実した一日と
なりました。
イギリスの Geoffrey Brand 先生による共栄高校のバン
ド指導は、作曲家が自分のアイディアを曲として表現す
る「三つのS」についての話から始まりました。
それは音(sound)、メロディの形(shape)、そして間
(space)です。この三つの視点から「Festmusik der
Stadt Wien(リヒアルト・シュトラウス)」をどのよう
に表現するかについて指導を受けました。冷房がキンキ
ンにきいた部屋にもかかわらず、Brand 先生は汗をした
たらせて熱のこもった指導をしてくださいました。
続く共栄&Las Lomas、徳栄&Mountain Viewの合同練習
会は、どちらも楽しい交流となりました。日本のウォー
ムアップ方法を紹介したり、お互いの曲を初見で演奏し
あったり、すっかり意気投合した雰囲気です。
アンコール演奏会はフェスティバルの全参加者が出席し
て行なわれます。最優秀バンド(徳栄高校)とコーラス
のすぐれた演奏、そして選抜コーラスのクラシックから
ゴスペルまでバラエティに富んだレパートリー。
会場はスタンディングオベーションと大歓声の連続です。
若いエネルギーが言葉の壁を越えてぶつかり、喜びを全
身で表現する。興奮と歓喜が場に満ちあふれ、それを見
ている私たちもワクワクとした気分を押さえられない。
音楽的にも国際交流的にも内容の濃い演奏会でした。
3月24日 第五日目
<フェスティバル・ルアウ>
ルアウはポリネシア伝統の蒸焼き料理。ハワイのムード
を味わうために、環太平洋音楽祭ではバイキング形式の
野外パーティー「フェスティバル・ルアウ」を行なって
います。会場はハワイ大学内の野外円形劇場。
快晴の空の下、トンガ王国ポリスバンドの演奏を聞きな
がら料理を楽しみます。フラダンスのショウあり、音楽
祭参加団体対抗のダンスコンテストありの、賑やかで楽
しいパーティーです。
一週間をともに過ごした各国の生徒たちも、踊り、写真
を撮り、Tシャツを交換し、アドレスを教え合い、親睦
を深めていました。
初日の夕食会ではぎこちなかった共栄、徳栄両校ですけ
れども、フェスティバル演奏、アラモアナ演奏、ワーク
ショップ、合同練習、アンコール演奏などを経て、気持
ちが通い合ってきたようです。みんな笑顔で語り、外国
の若者たちとも打ちとけた様子でした。
フェスティバル・ルアウをもって環太平洋音楽祭はすべ
ての行程を終了しました。共栄高校は明日、徳栄高校は
明日はホエール・ウォッチングを楽しんで明後日、それ
ぞれ帰国の途へつきます。みなさんお疲れさまでした。
マハロ。
ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介
投稿者 kurosaka : 2005年4月 2日