ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


America Is Beautiful

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  東京大学吹奏楽部アメリカ公演2003(3.27〜4.7)
  のレポート。サクラメント、サンフランシスコ、そ
  してニューヨーク・カーネギーホールでの公演。


サクラメントへ
地元バンドとコンサート
ユニオンスクエアで演奏
UCバークレーとの共演
シスコの自由時間
ビッグアップルへ
リハーサル
カーネギーホール
ワークショップ
旅は情報の宝庫

写真





3月27日(木)サクラメントへ
<東京大学吹奏楽部>
東京大学吹奏楽部は隠れた名バンドです。東大に吹奏楽
団があること自体、あまり世の中に知られていないと思
います(実は東大には全部で3つの吹奏楽団があるそうで
す)。これは、彼らが吹奏楽連盟に所属しておらず、し
たがってコンクールに出場しないことが大きな理由だと
考えられます。

東大吹奏楽部の指揮者は楠山光彦氏。22年間にわたって
このバンドでタクトを振り続けてこられました。そして
いよいよ、サンフランシスコは Herbst Theater(国連憲
章が調印された場所です)、ニューヨークは Carnegie
Hall での公演というビッグイベントで、東大吹奏楽部の
世界デビューを飾られることとなりました。


<戦争とアメリカ公演>
東大にとっては、今回が初の海外遠征です。何もかもが
初めてで、団員も緊張ぎみ。しかも、イラク戦争さなか
の渡米とあって、出発までが大変でした。

当初、指揮者を含め58名が参加する予定だったのですが、
出発当日になって7名キャンセルが判明。総勢51名での旅
立ちとなりました。参加できなかった方々にとっても、
団にとっても苦渋の決断だったと思われます。

参加する団員については、保護者をはじめ関係者がツア
ーの状況をリアルタイムに把握できるよう、デイリーレ
ポートを東大吹奏楽ホームページへアップする準備も整
えました(http://todai-wind.soc.or.jp/carnegie/)。

演奏写真

<サンフランシスコは超快晴>
そんな重苦しい雰囲気を吹き飛ばすかのように、私たち
一行を迎えてくれたのは、カリフォルニアの明るい陽射
しです。今日のサンフランシスコは、これ以上ないとい
うほどの好天。バスのドライバーも、ツアーマネージャ
ーの Becky も、「It's a beautiful day.」を連発する
ほどのお天気でした。

まずはオークランドの Best Music(楽器店)へ向かい、
弦バスをレンタルしました。続いて UCバークレーを訪問
し、Bob Calonico 先生に譜面を手渡す。これは3月31日
に氏から受けるワークショップ用の楽譜です。

さて、ベイブリッジを引き返し、Treasure Island でひ
と休みです。ここから見るサンフランシスコがもっとも
美しいという人も多いくらいで、絶好の撮影ポイントで
す。しかも今日は快晴。左手にベイブリッジ、右手に金
門橋、正面に市街地が見えて、目の前はサンフランシス
コ湾。アルカトラス島も、今日は一層輝いています。

このあと Twin Peaks へ登り、今度は上からシスコの街
を見下ろします。これまた、絶景。今日は気温も暖かく、
風も穏やかで、最高の眺めでした。

ここで Pier39 へ行き、各自昼食。その後、金門橋へ向
かいしばし写真タイムです。どこへ行っても、天気の良
さに恵まれて、本当に気持ちいい。

演奏写真

<サクラメントへ>
さて、こうしてサンフランシスコを満喫した私たちは、
いよいよ州都サクラメントをめざします。サンフランシ
スコからは、北へ約2時間。時差ボケ解消のための午睡に
は、ちょうどよい距離です(移動中ぐっすり)。

夕方、サクラメントのホテルへ到着。チェックインを済
ませて一服。そして、みんなでメキシコ料理のレストラ
ンへ行って夕食です。大ボリュームの料理と、揚げアイ
スクリームのデザートに満足。こうしてアメリカ初日は、
のんびりと暮れていったのであります。

演奏写真





3月28日(金)地元バンドとコンサート
<まずはリハーサルから>
さあ、今日からいよいよ本格的にスケジュールが動きだ
します。まず、カリフォルニア州立大学サクラメント校
(CSUS)で公開リハーサル。

同校金管アンサンブルによる「Tango Elephant」という
曲で歓迎していただき、それから東大の練習がスタート
です。出発直前にメンバーが減ったことで、新しいパー
トを吹く人もいます。少しでも練習時間をかせいで、全
体のサウンドをまとめたいところです。


<州庁舎前で演奏会>
東大吹奏楽部アメリカ公演の最初は、州庁舎前の階段で
の演奏。今夜のコンサートの告知も兼ねたカジュアルな
催しです。金管アンサンブル、木管アンサンブルなどの
軽快な演奏に続いて、「思い出のサンフランシスコ」を
全体で合奏しました。

カリフォルニア州議会やサクラメント市議会から歓迎の
メッセージが届き、指揮者の楠山先生に手渡されました。


<旧市街地を見学>
サクラメントの旧市街地は独特の雰囲気です。ニューオ
リンズのフレンチクォーターを思わせる建物が並び、西
部劇のセットのようでもあり、なんだか違う時代へ迷い
こんだ気分。

ここでランチタイムを取り、しばらく自由に散策しまし
た。インディアングッズ店や魚の薫製専門店など、ユニ
ークな店があちこちにあって、ぶらぶら歩いていても飽
きません。天気は昨日に引き続き、快晴。まったくのど
かな昼時です。

  <Keep Going>
  イラク戦争の影響で、日本のスポーツチームがアメ
  リカ訪問をキャンセルしたという報道を何度か耳に
  しました。少し不思議に思うのは、メジャーリーグ
  に在籍する松井やイチローに対しては、危ないから
  帰って来いという声がほとんど聞かれないことです。

  アメリカに暮らす一般市民は「keep going」、つま
  り普段通りに生活を続けることが一番のテロとの戦
  いなんだ、と考えているようです。また、この地に
  生活している者にとっては、そうするしか道はあり
  ませんし。

  実際にアメリカの街を歩いてみると、特にいつもと
  変わったところはありません。普通に車を運転し、
  食事し、音楽を楽しみ、買い物をし、笑い、普段通
  りの生活を続けています。


<地元バンドとジョイント・コンサート>
今日は地元の一般バンド Sacramento Symphonic Winds
との合同演奏会です。会場は Arcade Baptist Church。
大きな教会で、広い祭壇をステージとして使います。

Les Lehr氏が指揮する Sacramento Symphonic Winds は
平均年齢がやや高め。音楽を生涯にわたって楽しもうと
いう姿勢の感じられる、素敵なバンドです。

東大吹奏楽部は、「Candide」「The Seventh Night of
July」「The Valencian Widow」など、国際色豊かなレパ
ートリーを披露。出発直前に人数が減ったアクシデント
を感じさせない素晴らしい演奏で、スタンディング・オ
ベーションの暖かい拍手を浴びました。アンコールは、
アメリカのマーチ「美中の美」。

けっこうハードな一日でしたが、州都サクラメントでの
公演は、こうして無事に終えることができました。






3月29日(土)ユニオンスクエアで演奏
<帰ってきたサンフランシスコ>
嬉しいことに、今日も天気は快晴。風も穏やかで、日本
で言うなら春爛漫です。サクラメントのホテルをチェッ
クアウトした私たちは、一路サンフランシスコを目指し
ます。

ユニオンスクエアへ予定より1時間ほど早く着いたので、
少しだけフリータイムとしました。ぽかぽかと暖かく、
街を散策するには絶好の日和です。


<ユニオンスクエアで演奏>
昼休み時、多くの人が行き交うユニオンスクエアでコン
サートです。音楽祭事務局の手違い(失礼!)で、ドラ
ムセットがないというアクシデント発生。ありあわせの
打楽器を使って、なんとか急場をしのいでいただきまし
た。不手際をひらにひらにお詫び申し上げます。

このような逆境の中でも、東大吹奏楽部は満足度の高い
演奏を行ないました。臨機応変な対応、創造的な解決策
によって、聴衆にとっても興味深いコンサートだったと
思います。

日だまりの中で演奏していると暑いくらいです。「太陽
がいっぱい」という古い映画(アラン・ドロン版のほう)
のシーンが思い浮かぶような、キラキラと輝くサンフラ
ンシスコです。

演奏後、ふたたびユニオンスクエア周辺でフリータイム
とし、各自で昼食をとりました。


<サンフランシスコのチャイナタウン>
ホテルへ向かい、夕方に2時間ほど練習。そのあとは有志
を募ってチャイナタウン・ディナーです。学生22名と楠
山先生、Becky、私の合計25名で、Jackson通りの「豆花
飯荘」へ行きました。ここは私のお気に入りの店。観光
客相手ではなく、地元の中国系の人が愛用する店なので、
安くておいしいのです。

春巻き、タケノコとキノコの塩味スープ、さやいんげん
と牛肉の炒めもの、鶏肉の黒豆炒め、ブロッコリーのニ
ンニク炒め、豚肉とトマトの炒めもの、山椒のきいた麻
婆豆腐、ナマズのあんかけ、白飯などを注文し、おいし
い中華料理に舌鼓を打ちました。「しめ」は、豆腐に甘
いシロップをかけたデザート。杏仁豆腐ではなくて、ふ
つうの豆腐を使った甘味なのですが、これがまたあっさ
りしていて美味。

渡米3日目にしてアメリカの「濃い」食事にまいっていた
みんなは、大いに満足して豆花飯荘をあとにしました。

日本を出発する前は不安でいっぱいだった東大吹奏楽部
ですが、ここ3日間、バスの中でもレストランでも、笑い
声の絶えることがありません。心からアメリカをエンジョ
イしているようです。






3月30日(日)UCバークレーとの共演
<ドレスリハーサル>
サンフランシスコ国際音楽祭は、当社(World Projects
Corporation)が主催するフェスティバルのひとつです。
今年は3月28日〜4月1日の期間で開催され、吹奏楽、弦楽
合奏、合唱などのグループが演奏交流をします。

そのゲスト演奏として、カリフォルニア大学バークレー
校(UCバークレー)のウィンド・アンサンブルと東京大
学吹奏楽部が、夜のコンサートに出演します。

朝8時30分から1時間あまり、会場となる Herbst Theater
でサウンドチェックです。この建物は、国連憲章が調印
されたことで知られる歴史的なホール。クラシカルな内
装が独特の雰囲気を醸し出しています。


<午後はフリータイム>
私たちがアメリカへ着いてから、気持ちの良い晴天が続
いています。今日は特に暖かく、日中はまるで夏のよう
な日射しでした。

そんな好天のサンフランシスコで、東大吹奏楽部のメン
バーは、思い思いにフリータイムを過ごしました。買い
物をするグループ、有名なチョコレートパフェを求めて
フィッシャーマンズワーフをめざすチームなど、本番ま
での時間を楽しみました。


<合同演奏会>
夜の演奏会が始まります。まずは UCバークレーの演奏。
Bob Calonico 氏の指揮によるウィンド・アンサンブルは
ユニークな選曲で楽しめました。ラテンパーカッション
奏者 Tito Puenteに捧げる曲など、たいへん興味深く聞
きました。

続いて東大。一言でいうなら「完全燃焼」ですね。練習
を重ねてきた曲を、思う存分演奏し切ったという印象で
す。客席を埋めるのは、サンフランシスコ国際音楽祭に
参加しているハイスクールの子たち。彼らにとっても親
しみやすく、音楽的刺激もある、たいへんよいプログラ
ムだったと思います。演奏曲目は以下の通り。

 キャンディード序曲(L.Bernstein)
 をどりうた(S.Kashiwazaki)
 グレン・ミラ−・メドレー(N.Iwai)
 リバーダンス(B.Whelan)
 ヴァレンシアの寡婦(A.Katchaturian)
 〜 以下アンコール 〜
 思い出のサンフランシスコ(G.Cory)
 美中の美(J.P.Sousa)

会場はスタンディング・オベーションと拍手の嵐。こう
して、東大吹奏楽部アメリカ公演は、ツアー前半のクラ
イマックスを迎えたのであります。






3月31日(月)シスコの自由時間
<ワークショップ>
朝8時30分〜9時45分は、UCバークレー・ウィンド・アン
サンブル指揮者 Bob Calonico 氏によるワークショップ
です。昨夜、東大が披露した曲のそれぞれについてコメ
ントしたり、実際に指揮したりされました。

特に「キャンディード」「グレン・ミラ−」「美中の美」
などアメリカの曲については、念入りにアドバイスがあ
りました。スイング感を出すためのアーティキュレーショ
ン(音の区切り方)についても教えていただきました。

また、同じフレーズが何度もあらわれる時は、ダイナミ
クスを変えて演奏するとよいとのこと。お母さんが子供
に「部屋を片付けなさい」「さあ部屋を片付けなさい」
「ほらほら部屋を片付けなさい」と何度もたたみかける
ような調子で、どんどん大きくしていくのが効果的とい
う、ユーモラスな指導です。


<たっぷりとフリータイム>
今日は午前中から夜まで、サンフランシスコでのフリー
タイムを満喫します。昨日のうちにアルカトラズ島(*)
観光の予約を入れた15名は、ツアーマネージャー Becky
の案内で Pier39 まで行き、そこから船で島へ渡ったそ
うです。

   * アル・カポネが収容されていたことで有名な
     監獄島。クリント・イーストウッドの脱獄
     映画でも知られる。

余談ですが、私はフリータイムをどう過ごしたかという
と、知人に案内してもらって San Mateo という街へ行き
ました。ここでジャズ専門の24時間ラジオ局(KCSM 91.1
FM)を訪問し、どのように運営しているかを視察したの
です。私も、東京でジャズ専門のインターネット放送局
(www.jjazz.net/)の仕事を手伝っているので、アメリ
カのラジオ局の様子に興味があったからです。運営資金
の集め方など、いろんな資料を入手できたのでとても有
意義でした。


<フェアウェルパーティー>
夜は「サンフランシスコ国際音楽祭」のフェアウェルパ
ーティー。音楽祭に参加したグループが集って、食事を
ともにします。最初はフェスティバル選抜合唱団による
歌の披露。続いて食事、さらに表彰式を行ないます。宴
のしめくくりは、恒例のダンスパーティー。若いってい
いなあ。





4月1日(火)ビッグアップルへ
<涙のサンフランシスコ>
東大吹奏楽部が渡米してから、サクラメントもサンフラ
ンシスコもずっと絶好のお天気でした。私たちが到着す
る前は寒かったり、ぐずついていたりしたそうです。そ
して、東大がニューヨークへ旅立つ今日から、サンフラ
ンシスコの天気は下り坂なんだそうです。まったく私た
ちのために晴れてくれたような感じですね。

小雨に濡れた涙のサンフランシスコを後にして、東大吹
奏楽部は、デトロイト経由でニューヨークを目指します。


<さあビッグアップルです>
デトロイトで飛行機のディレイ(遅延)があったものの、
午後8時30頃には無事ニューアーク空港へ到着。マンハッ
タンのパークセントラルホテルへチェックインしました。
ここは、タイムズスクエアのすぐ近く。カーネギーホー
ルも目の前です。さあ、いよいよビッグアップルでの生
活が始まります。


演奏写真




4月2日(水)リハーサル
<アートと俗悪>
サンフランシスコは初夏の陽気だったのに、ここニュー
ヨークはまだ冬。街を歩くときは、厚手の上着が必要で
すね。

マンハッタンにはアートの香りが満ちています。レスト
ランの壁にさりげなく掲げられた水彩のニューヨーク風
景画。都会的なのにどこか親しみやすい内装や家具類。
生活とアートがうまく融合しているというか、生活その
ものが芸術的な雰囲気を持っています。

一方、タイムズスクエアを歩けば、目に飛び込んでくる
のは極彩色の広告です。光と音と色と文字と、洪水のよ
うに押し寄せてくる情報また情報。この俗悪さもまたビッ
グ・アップルの魅力であり、エネルギーの源泉でしょう。

15年前、はじめてニューヨークを訪れた時の感想は「よ
そ者に優しい街」でした。その印象は今も変わりません。
なんだかここへ「帰って来た」という気持ちになるから
不思議です。


<ビッグアップルつまみ食い>
昨日の空輸でテューバとバスクラが壊れたので、七番街
48丁目にある楽器屋さんへ預けました。私たちが市内見
学している間に修理してもらうためです。

まずはセントラルパークをバスでぐるりと一周。ハーレ
ム地区は、ここだけ時代が違うかのような独特の雰囲気
です。続いて五番街を南下し、ロックフェラーセンター
へ。ここからブロードウェイへ移り、マディソンスクエ
ア、ユニオンスクエアを経て、チャイナタウン、ウォー
ル街をのぞいてからグラウンドゼロ(世界貿易センター
ビル跡地)に到着。

テレビで何度も見ているものの、この「空き地」を目の
当たりにすると、やはり痛ましい。以前ここへ来た時に、
WTCビルの真下から上を見上げる写真を撮ったことなどを
しみじみと思い出しました。

さて、バッテリーパークでフェリーに乗り換え、自由の
女神へ。ここで遅めの昼食。海を渡る風が冷たいですね。
しばし自由時間を楽しみ、ふたたび船でエリス島へ。移
民局の跡を見学です。

バッテリーパークへ戻り、48丁目の楽器屋さんで修理が
済んだ楽器をピックアップ。ホテルへ戻ったのは午後6時
頃です。一日かけてビッグアップルをつまみ食いした、
というところでしょうか。


<リハーサルで調整>
休む間もなく、ホテルのボールルームでリハーサルです。
昨日はまったく楽器にさわっていませんし、今日も日中
は観光だったので、調子を取り戻すことが必要です。

このあと楠山先生と学生代表3名は、フェスティバル・オ
リエンテーションに参加しました。

  余談ですが、50名を超す楽団の場合、ツアー中の連
  絡系統には工夫が必要です。私は学生執行部と毎日
  打ち合わせをして、翌日の予定を確認しています。
  執行部では、その打ち合わせで決まったスケジュー
  ルの変更点や細かな注意事項を紙に書いて、リーダ
  ーである原くんの部屋のドアに貼り出します。それ
  ぞれの部屋の代表がこれをチェックして、連絡事項
  を持ち帰るわけです。





4月3日(木)カーネギーホール
<カーネギーホール>
ニューヨーク吹奏楽祭(New York Wind Band Festival)
は、当社(ワールド・プロジェクト)が今年から始める
新しい音楽祭。カーネギーホールをメイン会場として、
4月2日〜6日の期間で行なわれます。

そして、今日は全出演者がカーネギーホールで演奏する
日です。今日一日で東大を含め9つのバンドが出演するた
め、朝からスケジュールは分刻み。東大吹奏楽部は10時
20分から15分間、ステージ上でサウンドチェックを行な
いました。

ステージから客席を見渡すと、それはそれは壮麗な光景
です。白を基調としたデザインに、深紅の客席、高い天
井、キラキラと光る照明、優雅なカーブを描くバルコニ
ー席のライン。音楽にたずさわる者なら一度は立ってみ
たい憧れの舞台は、まばゆい輝きを放っています。


<音楽祭開幕>
昼食を各自でとったら、さっそく音楽祭の始まりです。

昼の部
 1330 開場
1400-1425 Belleville High School
 1430-1455 Leigh High School
 1500-1525 San Marcos High School
 1530-1555 Concord High School
 1600-1625 North Kitsap High School
 1630-1655 Puerto Rico Conservatory
 1700-1725 University of Tokyo(東大吹奏楽部)

夜の部
 1930    開場
 2000-2045 University of Tennessee Wind Ensemble
 2105-2150 California Polytechnic State
University Wind Orchestra

どのグループもカーネギーでの演奏とあって気合い十分。
たくさん練習を積んでこの日を迎えたという感じです。

東大吹奏楽部は昼の部のトリをつとめます。「Overture
to Candide」「The Valencian Widow」の2曲をゆったり
と力強く演奏し、朗々と東大サウンドを響かせました。
この演奏に聴衆は沸き上がり、スタンディングオベーショ
ンの喝采。歓声に包まれる感動のステージとなりました。


<7年目の成就>
今日の演奏会を、東大吹奏楽部OBの竹田欣克氏が聞きに
来てくださいました。竹田氏は、仕事の関係でボストン
にお住まいで、5時間かけてバスでニューヨークへいらし
たそうです。

実は、竹田氏は7年前の東大吹奏楽部の責任者で、その時
も当社の音楽祭へご参加いただく計画があったのです。
それはシドニー・オペラハウスを使って行なう国際音楽
祭でしたが、時期が合わなくて、最終的に断念。竹田氏
も私も、そして指揮者である楠山先生も、みな残念な思
いをしました。

7年の年月を経て、とうとう「東大吹奏楽部海外遠征」の
夢が実現。しかも、まさにその時期に竹田氏がアメリカ
赴任中とは、なんという偶然でしょう。演奏会に駆け付
けてた竹田氏も、このツアーをご自身の夢が叶ったかの
ように喜んでくださいました。





4月4日(金)ワークショップ
<ニューヨークの朝>
寒い朝です。ホテルの近くのデリでべーグルとコーヒー
の朝食をとると、「にわかニューヨーカー」になったよ
うで、気持ちまで暖まります。

東大吹奏楽部は、Bill Johnson 氏によるワークショップ
(バンド指導)を受講します。「Candide」を指導しても
らうことにしました。

「目を閉じてください」と Johnson 氏。「今までに見た
美しいものを何か思い浮かべてください。それは直線で
できていますか? それとも曲線ですか?」

多くの学生が「曲線」と答えます。「そうです。美しい
ものは曲線で構成されていることが多いのです。音楽を
演奏する時も同じです。直線的にフレーズを吹くのでは
なく、必ずなめらかな音量の変化を伴います。その音が
どこから来てどこへ向かうのか、それをはっきりさせて
から、美しい曲線を描くように演奏してください」

「音楽はダンスとソングに分類することができます。舞
踊的に演奏する部分と、歌唱的に表現するところを区別
してください」「譜面はドラマの脚本と同じです。そこ
には音楽の40%しか書かれていません。残りの60%は、俳
優であるあなたたちが演じて完成するのです」情熱的な
Johnson 氏のワークショップに、みんなグイグイと引き
込まれていきます。


<午後はまるまるマンハッタン>
さあ、今日は待ちに待ったフリータイムです。みんなガ
イドブック片手に、ニューヨークの街へ飛び出して行き
ます。Becky と私は「グッゲンハイム美術館」でモダン
アートを鑑賞することにしました。

これは不思議な体験でした。まず、この美術館は構造が
変わっている。大きな吹き抜けの回りをらせん状に通路
が取り巻いていて、それを6階から順に下へ下へと降り
ながら作品を鑑賞するのです。この「らせん状の通路」
にはわずかな傾斜がついているため、鑑賞者はつねに下
方へ引っ張られながら、ゆっくりと坂道を下るように歩
くわけです。

そして、展示されている作品がまたユニーク。Matthew
Barney の「The Cremaster Cycle」というものですが、
建物のほぼ全部を使って、写真、絵画、オブジェ、フィ
ルムなどを配置し、全体でひとつの表現を試みている。
映像もいくつかの作品があちこちで流されていて、どれ
かひとつを鑑賞するというよりは、断片的に入ってくる
画像や音が、頭の中で次第にコラージュを構成していく
ことを計算してあるようです。

そして、そこで表現されている内容はといえば、グロテ
スクなまでに生々しい人や動物の描写と、無機的な風景、
そして理解することを拒否するようなダンス映像など。
とにかく凄まじい量の情報が押し寄せてきて、美術館を
出る頃には脳がパンク寸前のフラフラ状態でした。


<ビッグアップルのナイトライフ>
リトルイタリーのレストランで早めの夕食を済ませ、夜
はショウの鑑賞です。楠山先生はニューヨークフィルを
聞きに行かれたそうです。学生たちも「マンマ・ミーヤ」
や「ライオンキング」など、それぞれにナイトライフを
楽しみました。

Becky と私はブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」
を鑑賞しました。Jazzyで、華やかで、陽気で、そして少
しもの寂しい、これぞミュージカル、という作品でした。
グッゲンハイムで超難解な世界を体験した後だけに、こ
ういうエンタテイメントに徹したショウは、一層楽しむ
ことができました。

舞台がはねてホテルへ戻ったのが10時半頃。そこで東大
吹奏楽部の学生3人と、今からライブハウスへ行こうとい
うことになり、Becky も含めて5人で、Blue Note を目指
しました。時間が遅かったのでハウスバンドの演奏との
こと。あまり期待していなかったのですが、たいへん上
手なピアノトリオでした。ラッキー!

こうして体力の限界までビッグアップルを味わい尽くし、
とっても「カルチャーな一日」を過ごしました。






4月5日(土)旅は情報の宝庫
<セントラルパークの演奏は中止>
ニューヨークは昨日から寒さが一層厳しくなり、時々小
雨も降ります。今日は、セントラルパークの「Naumburg
Bandshell」という会場で、東大吹奏楽部の野外演奏会が
予定されていたのですが、悪天候のため中止せざるを得
ませんでした。演奏できなかった私たちも残念ですが、
この日の演奏を聞きに来てくださった方々には申し訳な
く思います。この場をお借りしてお詫び申し上げます。


演奏がなくなったため、午後の数時間はフリータイム。
メトロポリタン美術館へ行く人、五番街でショッピング
する人など、それぞれの時間を過ごしました。

夜は、ニューヨーク吹奏楽祭のフェアウェルパーティー。
今回は、東大ツアーの打ち上げという意味もあります。
サンフランシスコの時と同様、食事をしながら表彰式、
そしてダンスです。


<旅は情報の宝庫>
東大吹奏楽部のアメリカ公演は、わずか10日間の滞在で
した。でも、最初に訪問したサクラメントがすでに遠い
昔のことのように感じられます。それから後に、たくさ
んの出来事があったからでしょう。

CSUSでの公開リハーサル、カリフォルニア州庁舎前での
演奏、サクラメント旧市街地、Arcade Baptist Church
で Sacramento Symphonic Winds と合同演奏会、ユニオ
ンスクエアでコンサート、チャイナタウンで食事、Herbst
Theater で UCバークレーと合同演奏、Bob Calonico 氏
によるワークショップ、ビッグアップルつまみ食い、自
由の女神、カーネギーホールの感激、Bill Johnson 氏に
よるワークショップ、ミュージカル、美術館、ライブハ
ウスなどなど・・・。

たくさんの人と出会い、いろんな場所を訪れ、驚くほど
大量の情報が一人一人に降り注いでいるはずです。まさ
に旅は情報の宝庫と言えるでしょう。


<アメリカ・イズ・ビューティフル>
イラクでは依然として戦争が続いています。今回の戦争
が国際社会の反対を押し切って開始されたことで、アメ
リカに対する批判があることは事実でしょう。

しかし、市民レベルで体感したアメリカは、依然として
楽しく、創造的で、輝かしい。ごく普通のアメリカ市民
は、みんな親切に私たちと接してくれたし。

アメリカ・イズ・ビューティフル。私たちが音楽を奏で
ることで経験したアメリカは、とても平和で、感動的な
ものでした。

東京大学吹奏楽部一行は、4月6日(日)ジョン・F・ケネ
ディ空港を発ち、翌7日に無事成田空港へ到着しました。
みなさん、ありがとうございました。

ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介

投稿者 kurosaka : 2004年3月15日