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<深いリラクセーションのために> 波呼吸法 (1)〜(2)

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第四集:

 深いリラクセーションのために(波呼吸法)
 「呼吸の折り返し点の観察」というトレーニングをリ
 ラクセーション法として整理。もとは管楽器奏者用に
 喉のコントロール練習として考案したものを、一般の
 方々にも取り組みやすいよう編集し直した。第1回 波
 呼吸法「JIT & FWAT」/第2回 波呼吸法「PIT」

第1回 波呼吸法JITとFWAT
第2回 波呼吸法PIT
関連記事「MOT」「PWIT」








     <深いリラクセーションのために>
      波呼吸法(なみ・こきゅうほう)

         第1回 2002.3.30




<波呼吸法とは>
今回お届けする「波呼吸法(なみ・こきゅうほう)」は、
もともと管楽器奏者が喉のコントロールを練習するトレ
ーニングとして考案したものです。

ただ、リラックス効果がたいへん高いので、一般の方々
にも取り組みやすいよう、整理し直してみました。もち
ろん管楽器奏者が取り組めば、演奏にプラスとなること
でしょう。


<呼吸の折り返し点の観察>
呼吸には、息を吐いている状態(呼息)、息を吸ってい
る状態(吸息)、息を止めている状態(止息)の3態が
あります。

しかし、もっと細かく観察していくと、そのどれでもな
い状態があることに気付きます。呼吸の折り返し点です。
息を吐き終わってから吸い始める瞬間の折り返しと、息
を吸い終わってから吐き始める折り返しの両点は、「吸
い」でも「吐き」でも「止め」でもない。

「はき」から「すい」の折り返しを「はす点」と呼び、
もう一方を「すは点」と呼びましょう。そして両方の総
称を「折返点(せっぺんてん)」とします。

楽にできるペースで、呼吸を行ない、折返点で何が起き
ているかを観察します。息は鼻から吸って鼻から吐きま
す。これを「ニーノ(NINO = Nose In Nose Out)」と
呼びます。しばらく、ニーノで折返点の観察をしてみて
ください。


<波呼吸法 準備形 JIT(ジット)>
時計の秒針を見ながら、4秒吸って、4秒吐き、また4秒
吸って、4秒吐いて、と呼吸を繰り返し、「すは点」と
「はす点」を観察します。呼吸はニーノで行ないます。

やることは、これだけです。吸い続ける間および吐き続
ける間は、空気の流れが一定になるよう心がけてくださ
い。なめらかに、なめらかに、ひたすらなめらかに呼吸
を繰り返してください。

これが「波呼吸法 準備形 JIT(ジット)」です。呼吸
を「じっと」みつめることから、この名前をつけました。

慣れてきたら、6秒吸って、6秒吐き、6秒吸って、6秒吐
きを繰り返します。

8秒吸って、8秒吐き、8秒吸って、8秒吐くという呼吸を、
なめらかに続けられるようになるのが、当面の目標です。


<波呼吸法 FWAT(フワット)>
やることは JIT と同じですが、折返点に操作を加えま
す。折返点を延長するのです。これを「波呼吸法 FWAT
(フワット)」と呼びます。折返点を「ふわっと」引き
延ばすからです。

まず、息を吸い終わってから吐き始めるまでの間隔を長
くする、つまり「すは点」を時間的に引き延ばします。
同様に「はす点」も延長します。呼吸はニーノ。

3秒吸って、1秒の「すは点」を設け、3秒吐いて、1秒の
「はす点」を設ける。これを繰り返します。

大切なのは、「すは点」でも「はす点」でもで喉を閉じ
ないことです。折返点は「吸い」でも「吐き」でも「止
め」でもない状態です。喉を閉じるとそれは「止め」に
なってしまいます。

では次に、4秒吸って、2秒の「すは点」を設け、4秒吐
いて、2秒の「はす点」を設け、これを繰り返します。

5秒吸って、3秒「すは点」、5秒吐いて、3秒「はす点」
の呼吸を、なめらかに続けられるようになるのが、当面
の目標です。

吸い続ける間および吐き続ける間は、空気の流量および
息の速度が一定になるよう心がけてください。


つづく。

呼吸を変えれば音楽は変わる!
著:黒坂洋介
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     <深いリラクセーションのために>
      波呼吸法(なみ・こきゅうほう)

         第2回 2002.4.1




<波呼吸法 PIT(ピット)>
今度は、折返点を可能な限り短くしてみます。理想的に
は折返点を0秒にするというか、時間的長さのない「点」
にするつもりで行ないます。

実際には「今、この瞬間に折り返したぞ」という明らか
な感覚を発見するようにします。「すは点」と「はす点」
で「ピッと」折り返すから、「波呼吸法 PIT(ピット)」
と呼びます。

4秒吸って、4秒吐いて・・・の繰り返し。6秒吸って、6
秒吐いて・・・の繰り返し。8秒吸って、8秒吐いて・・・
の繰り返しを、なめらかに行なってください。

吸い続ける間および吐き続ける間は、空気の流量および
息の速度が一定になるよう心がけてください。この「空
気の流量および息の速度が一定」という条件を厳密にす
ればするほど、PIT は難しくなります。

「吸い終わり」から「吐き始め」への転換、「吐き終わ
り」から「吸い始め」への転換を、全身一斉には切り替
えられないことに気付かれるはずです。

これは「折返点を身体のどこでとらえるか」の問題と考
えることもできます。喉を折り返しの中心とするのか、
肺なのか、それとも腹なのか。

PIT は、波呼吸法のクライマックスです。まさに、寄せ
ては返す波のように、ゆったりと、なめらかに、そして
正確に、折返点を設けるようにしてください。


<喉を閉じないこと>
「FWAT = 折返点延長」では、喉を閉じないことに注意
しました。「PIT = 折返点短縮」の場合も、喉は完全
に開けておいてください。 

「空気の流量および息の速度を一定に」保ったまま、折
返点を短く明確にしようとすると、一瞬喉を閉じてしま
いがちです。喉を閉じないと「ここが折返点だ」という
きまりがつかないからです。でも、これは禁物。

また折返点をわかりやすくするために、呼吸の間じゅう
わずかに喉をしぼっている場合があるかもしれません。
まったく喉をしぼらない状態で、折返点短縮を行なうの
が理想ですが、とりあえずは、自身の「喉のしぼり」状
態に気付くことが必要です。


<チョーク度を観察する>
ニーノで呼吸しながら、喉の状態を観察します。喉が完
全に開いてなめらかに空気が出入りしている状態をノー
チョーク(No Choke)と呼びます。喉を完全に閉じて空
気の出入りができない状態、これがオールチョーク(All
Choke)です。その中間に3段階の「チョーク度」を想定
し、軽い方から順にライトチョーク、ミドルチョーク、
ヘビーチョークと呼びます。つまり全部で5段階のチョー
ク度を想定するわけです。

 1 ノーチョーク (チョーク度 0%)
 2 ライトチョーク(チョーク度 25%)
 3 ミドルチョーク(チョーク度 50%)
 4 ヘビーチョーク(チョーク度 75%)
 5 オールチョーク(チョーク度 100%)

FWAT も PIT も、ノーチョークで行なうことで、そのリ
ラクセーション効果がぐっと高まります。まずは、ご自
身のチョーク度を観察してみてください。


<2種類のリラックス>
喉を開放して FWAT を繰り返していると、心身がどんど
んほぐれて、ゆったりした気分になられることでしょう。
たとえば就寝前に、布団の中で数回FWATをやってから眠
りにつくと、おだやかな気持ちで入眠できます。

一方、喉を開放して PIT を繰り返した場合は、心身が
研ぎすまされ、冴え渡ってくるのを感じられるはず。時
間帯でいえば、朝向きのトレーニングかもしれません。
FWAT そして PIT ー タイプの違った2つのリラックスを、
しみじみと味わってみてください。


<波呼吸法の魅力>
「すぐに効果が感じられる」「道具がいらない」「どこ
でもできる」「簡単に取り組める」しかし「奥が深い」。
これが、波呼吸法の特徴です。

特に PIT は、呼吸法の深みにはまる誘惑の扉です。PIT
に取り組むことで、呼吸という運動が、非常に大きなス
ケールの現象であることに気付く方も多いでしょう。自
己の体内に、未開発の領域がたくさんあることを発見さ
れるはずです。

また、FWAT の折返点において、「なにか」が体内で動く
のを感じた方はおられますか? 空気の出入りがないは
ずなのに、喉、胸、腹にかけて、あるいは首、肩、腕、
手にかけて、ジワッと、ムズムズと、「なにか」が動く。

状況によって感じ方や部位は異なるかもしれませんが、
体内に「なにか」の運動を感じる ー この感覚が生じて
くると、FWAT のトレーニングが、がぜん面白くなりま
す。そこは気功の世界の入口だともいえます。

波呼吸法は、生涯の友としていただける、簡便なリラク
セーション・メソッドです。快適な心身のためにご活用
いただければ幸いです。


<深いリラクセーションのために:波呼吸法>は
これで終わりです。

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関連記事「MOT」「PWIT」については、
【連載】管楽器のための呼吸法講座
をご参照ください。

投稿者 kurosaka : 2004年3月15日