ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


ニューオリンズでは、スゴいことが起きていた

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  2000年(1.12〜15)にニューオリンズで開催された
  世界最大のジャズ・コンベンションIAJE(国際ジャ
  ズ教育者協会)のレポート。


2000年1月12日〜15日の期間、ニューオリンズで開催され
たIAJE(国際ジャズ教育者協会)のコンファレンスを視
察して参りました。噂には聞いていたものの、これほど
までにものすごいイベントだとは思いませんでした。

IAJEは、日本ではあまり知られていませんが、世界最大
のジャズ見本市です。ミュージシャン、学生、ジャズ教
育者、音楽産業などが一体となって、情報の提供と交換、
蓄積を行う目的で運営され、今年で27回目を数えまし
た。

内容は、コンサート、セミナー、クリニック、ワーク
ショップ、商品展示など、非常に大規模かつ高品質な、
最新のジャズ情報が発信されています。ここへ行けば、
今アメリカのジャズシーンで何が起きているか一望でき
るわけです。

4日間の滞在期間中に、私が聴いたコンサートだけでも
以下の通りです。

1.ニコラス・ペイトン・クインテット
2.ピート・ファウンテン・バンド
3.エリス・マルサリス&ニューオリンズ・ジャズ・オー
 ルスターズ
4.ジョシュア・レッドマン
5.ラムゼイ・ルイス・トリオ
6.カウント・ベイシー・オーケストラ
7.ベニー・グリーン、ラッセル・マローン、クリスチャ
 ン・マクブライドのトリオ
8.デビッド・サンチェス・セクステット
9.USエアフォース「エアメン・オブ・ノート」with マ
 イク・マイニエリ
10.ダニロ・ペレツ・トリオ
11.ニーナ・フリーロン
12.ノーステキサス大学ワン・オクロック・ラブ・バンド
13.ウッディ・ハーマン・オーケストラ
14.マンハッタン・スクール・オブ・ミュージック・ジャ
  ズ・オーケストラ

わずか4日間でどんどん耳が肥えてしまって、後半のコン
サートは、少々のサウンドでは満足できない状態になっ
てしまいました。ふつうのジャズ・フェスティバルより
も、よほど高品質なジャズにどっぷりと浸れます。また、
お客さんもジャズの専門家ばかりですので、聴衆のレベ
ル自体が高いのです。

セミナーやワークショップも実に多彩な内容です。作編
曲やアドリブの講座はいうにおよばず、「ジャズジャー
ナリストのための批評クリニック」、「ヨーロッパにお
けるジャズ教育の現状と展望」、「音楽室でレコーディ
ングするために、プロのテクニックを学ぼう」、「1990
年代の世界におけるジャズ学生の意見、態度、そして影
響の研究」など、高度にアカデミックかつ実践的なプロ
グラムが目白押しです。

ざっと数えただけで、催し物は260を越え、ブースの出展
者は100社あまり。これらが6つの展示会場と10箇所のコ
ンサート会場、7つのセミナールームで同時進行している
のです。

アメリカのジャズメン、教育者、若者たちが、このよう
な環境の中でジャズに触れている現実を知って、少なか
らぬ衝撃を受けました。日本ではジャズ教育と呼べるも
のは、ほとんどなきに等しい状態ですから。

痛切に感じたのは、アメリカではジャズをまじめに「学
問」としてとらえていることです。これはちょうど、日
本人が商売を経験則だけでとらえようとするのに対して、
アメリカ人がマーケティングという学問を確立した状況
に似ているかもしれません。アメリカ人にとって、ジャ
ズは学問であり、産業であり、文化なのです。

幸いなことにIAJEでは、日本におけるジャズ教育普及を
さまざまなレベルで支援したいと考えてくれています。
ジャズ教育機関、学校のクラブ活動、ジャズ専門誌、ジャ
ズ・フェスティバル、コンテスト、国際交流企画など、
考えうるすべての場面において、情報提供あるいは資金
提供をも行う意欲を示しています。

昨年(1999年)11月に、IAJEのヒル会長とマクファーリ
ン事務局長が日本を訪問され、パン・ミュージック・ス
クール、ヤマハ、山野楽器、スイングジャーナル、ジャ
ズライフ、バンドジャーナル、横浜ジャズ協会、日本ジャ
ズ教育者協会、瀬川昌久氏などと面会したことも、IAJE
の日本に対する関心の高さを物語っています。ちなみに、
私(黒坂)は、この時の通訳としてお世話をさせていた
だいた関係で、今回のコンファレンス視察にいたったわ
けです。

IAJEの考える第一歩ステップは、まず毎年のコンファレ
ンスへ、より多くの日本のジャズ関係者に参加していた
だくことです。百聞は一見にしかず。IAJEの情報量とそ
の質は、我々ふつうの日本人の想像をはるかに越えてい
ます。

ただ、このコンファレンスが毎年正月休暇明けに開催さ
れるため、日本人にとっては非常に参加しにくいイベン
トとなっています。けれども、相当な無理をしてでも参
加する意義のある内容だと、私は感じました。日本のジャ
ズ関係者がこのままIAJEとのかかわりを持たないままで
いるなら、日米の差は広がる一方ではないかとも思いま
す。

来年のIAJEコンファレンスはニューヨークで開催されま
す。なんらかの形で、日本から視察団を組もうという話
も出ているようです。一人でも多くの日本人、特にプロ
ミュージシャンやサウンドマン、プロダクション、学校
関係者、ジャズ・フェスティバル主催者、メディアの方
々が参加されることを期待します。IAJEが蓄積してきた
ノウハウを、彼らは積極的に公開してくれているわけで
すし、我々としてはこれを活用しない手はないと思うか
らです。

ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介

投稿者 kurosaka : 2004年3月15日