ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


息を吸うとき肩は上がるか?

  • Check

shoulders.jpg

息を吸うとき肩を上げてはいけないという指導を受けた人は多いでしょう。しかし肩を上げないように肩まわりを固めて吸気すれば大きなブレスを取れないのではないか、と疑問を感じる人も少なくないはずです。

このテーマはじつは奥が深くて、肩甲部および肋骨部の開発とかかわっています。 単に「肩を上げるか上げないか」ではないということです。

人体の肩関節周辺の骨格は、私たちの日常的なイメージと少し異なる構造をしています。



1.胸の上端で鎖骨が左右に走っている。
2.肋骨の後ろに肩甲骨が浮くように位置している。
3.肋骨の中央に胸骨が上下に走っている。
4.鎖骨の内側は胸鎖関節によって胸骨とつながっている。
5.鎖骨の外側は肩鎖関節によって肩甲骨とつながっている。
6.肩鎖関節と上腕骨とで肩関節は構成されている。


吸気時に肋骨を広げて息を吸ったとき、なにも意識しなければ、肩甲骨や鎖骨も一緒に上がることが多いはずです。

このとき「肩を上げない」ためには二種類のアプローチが想定できます。



A.肩を力で下へ押さえこむ
B.肩と肋骨の関係を自由にする


A.のアプローチはごくふつうのものであり、これをやると息が深く吸えないという現象が生じます。そのとき「胸ではなく腹へ息を入れよ」と指導されることで、ひとつの道が開けます。このアプローチの合理性や非合理性を論じるのは別の機会に譲るとして、話を先へ進めます。

人体の構造から考えて、B.のアプローチも可能です。肩甲骨は肋骨に対してかなり自由な動きができるようになっているからです。

吸気時に肩も一緒に上がるのは、肩甲骨と肋骨の「分化」ができていないことがおもな原因と考えられます。つまり問題の本質は「肩が上がる」というフォームにあるのではなく、肩甲骨と肋骨の分化が不十分であること、つまり別々に動かせないことにあるという考え方です。

なぜ別々に動かせないかといえば、それは肩甲骨、鎖骨、肩関節まわりの筋肉に力が入り固まっていることが疑われます。

この問題を解決(もしくは軽減)するために、ウォーターブレスで採用しているのがショルダリングです。



1.足を閉じてマジックコインに乗り、ゆら~っとバランスをとりながらチャイルドタイムを味わいます。
2.この状態で肩の上げ下げをやります。これをショルダリングといいます。
3.両肩を真上へ思いっきり持ち上げます。この状態が「筋力オン」です。
4.これを数秒キープして「筋力オフ」にします。すると両腕の重みで肩がボトッと落ちます。「降ろす」のではなく「落ちる」感じです。
5.このとき、口で「ボト~ッ」と言ってください。無声音で構いません。これも呼吸法の一種ですから、かならず口に出してください。「ボト~ッ」です。
6.ショルダリングを八回繰り返します。


ショルダリングとフィッシュスイムを併用することで、肋骨、肩甲骨、背骨がほぐれてきて、少しずつ肩甲骨と肋骨の関係を自由にしていくのが目標です。

このようにして「多くの息を吸いつつ肩が上がらない」という身体の使い方ができると考えられます。

投稿者 kurosaka : 2017年8月 8日