ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


くらげ呼吸法

  • Check

jellyfish-7001410_1280.jpg
Image from pixabay



【インデクス】
ジェリーフィッシュ・フロート
JFFをひと目で確認!
くらげ呼吸法練習用リードメッセージ
テキスト






ジェリーフィッシュ・フロート

<くらげの浮遊>
体幹部を開発するための呼吸法です。底部(会陰)、腹部、胸部、肩部を別々に使えるよう練習します。

これは、いくつかのヨーガ呼吸法(プラーナーヤーマ)を組み合わせたオリジナルな呼吸法で、かなり複雑な動きをともないます。最初は難しく感じるかもしれませんが、すぐに覚えられます。慣れてくれば「自然な動き」と感じられることでしょう。

この呼吸法には愛称がついています。ジェリーフィシュ・フロート(Jellyfish Float)、日本語でいえば「くらげの浮遊」です。

水のような身体になって海の中にいると想像してください。くらげが、ぷか〜、ぷか〜と、開いたり閉じたりしながら水中を漂う。あの感じです。


<ボトミングを練習しよう>
ジェリーフィッシュ・フロートがめざしているのは、体幹部全体を柔軟かつ自由に使えるようになること。

体幹部の底(ボトム)にある会陰のトレーニングが「ボトミング」です。息を吸いながら会陰を引き上げ、吐きながら会陰を降ろす。これをボトミングの「すいあげーはきさげ」といいます。

といっても、会陰の上げ下げは簡単ではないので、少し練習してみてください。会陰を上げるのは難しいけれども、降ろすのもの意外にできないものです。

メトロノームを「四分音符=60」に合わせて、一拍目ですいあげ、二拍目ではきさげ、三拍目ですいあげ、四拍目ではきさげ...と、これを八小節やって休憩です。

会陰を上げ下げする感覚がわかってきたら、同じ要領で「すいさげーはきあげ」も練習します。

ボトミングは体幹部を開発するうえでも、呼吸に上達するうえでも非常に重要なトレーニングです。短い時間で構いませんから、かならず毎日練習してください。


<ニーノで呼吸する>
息は鼻から吸い(Nose In)、鼻から吐く(Nose Out)。これを「ニーノ(NINO)」といいます。ジェリーフィッシュ・フロートでは、ニーノだけを使います。

口を使う呼吸法は「中級編」で扱います。これは喉の開発(スローティング)や舌の開発(タンギング)と関連付けながらやりたいからです。今のところはニーノを使い、体幹部開発に集中しましょう。


<チョーク度について>
ニーノで呼吸しながら、喉の状態を観察します。喉が完全に開いてなめらかに空気が出入りしている状態をノーチョーク(No Choke)と呼びます。喉を完全に閉じて空気の出入りができない状態、これがオールチョーク(All Choke)です。

その中間に3段階の「チョーク度」を想定し、軽い方から順にライトチョーク、ミドルチョーク、ヘビーチョークと呼びます。つまり全部で5段階のチョーク度を設定するわけです。

 1 ノーチョーク (チョーク度 0%)
 2 ライトチョーク(チョーク度 25%)
 3 ミドルチョーク(チョーク度 50%)
 4 ヘビーチョーク(チョーク度 75%)
 5 オールチョーク(チョーク度 100%)

ジェリーフィッシュ・フロート初級では、ノーチョーク(吸いと吐きのとき)と、オールチョーク(止めのとき)のみを使います。これも体幹部開発に意識を集中するためです。

喉を全開して鼻から息を十分に吸う。そして喉をピッタリ閉じて息を止める。最後に喉を全開して静かに息を吐いてみましょう。


<九小節でワンサイクル>
メトロノームを「四分音符=46」に合わせ、四拍に一回チャイムが鳴るようにセットしてください。四拍で一小節、これを九小節繰り返してワンサイクルです。


<第1小節は「吸い」です>
全身が「てれ〜」っと垂れ、気持ちはチャイルドタイム(のん〜びりした気分)です。

ジェリーフィッシュ・フロートは立ったままやっても構いませんし、椅子に腰かけてもいいです。いずれにしてもウォーターバッグ状態(全身を水の入った袋のように感じる)で「つるし(上から糸で吊られているような感覚)」と「ずりおち(全身が溶け落ちるような感覚)」をよく感じてください。メトロノームを鳴らしながら、4拍分、鼻から息を吸います(ノーチョーク)。

はじめの2拍はウォーターバッグのお腹へ「たっぷん」と、次の1拍は胸へ「むにゅっ」と、最後の1拍は肩を上げながら「もりもり」と吸い入れます。

会陰は降ろしたまま(すいさげ)です。これを「ボトム= Down」と表記します。

 【第1小節】 ボトム= Down 
 2拍腹へ吸い 1拍胸へ吸い 1拍肩へ吸う


<第2〜5小節は「止め」です>
ここで楽に喉を閉じ(オールチョーク)、同時に会陰を引き上げます(ボトム= Up)。

「楽に」というのがポイントです。肩は上がっていますが、あくまでもウォーターバッグで。「つるし」「ずりおち」を効かせてください。顔は微笑みます。

 【第2小節】 ボトム= Up
 4拍楽に止める 微笑

第3小節は、ボトム= Up のまま、息を止めたまま、肩を降ろし、胸の力を抜きます。このとき、腕がぶらんと重く感じたら理想的です。顔は微笑んだまま。

 【第3小節】 ボトム= Up
 4拍止めたまま 肩を降ろし、胸部脱力 微笑
 腕がぶらんと重い

第4小節は、ボトム= Up のまま、息を止めたまま、横隔膜を降ろして腹圧をかけます。腹部の内から外へ圧が加わるのを感じてください。顔は微笑んだまま。

 【第4小節】 ボトム= Up
 4拍止めたまま 内から外へ腹圧をかける 微笑

第5小節は、4拍止めたまま、会陰を降ろし、腹圧を解きます。顔は微笑んだまま。

 【第5小節】 ボトム= Down
 4拍止めたまま 腹圧を解く 微笑


<ここで息を吐きましょう>
ひとまず息を吐いてください。

ここまでで、1小節吸って、4小節止めた計算になります。肩や会陰を上げたり降ろしたり、胸や腹に入力したり脱力したり、体幹部にめまぐるしい動きがあります。

これらの動きによって、骨盤底筋群、腸腰筋、腹横筋、横隔膜、内外肋間筋を活性化します。また緊張しがちな僧帽筋のリラックスも促します。さらに内臓のマッサージ効果もあり、体幹部全体を柔らかく、自由に使う基礎を作ります。

どんなときでも「楽に」「微笑んで」やるのがコツです。全身は「てれ〜」、気持ちは「のん〜びり」、そしてウォーターバッグで「つるし」「ずりおち」。

この手順は複雑に見えますが、その気になれば習った日のうちに覚えられると思います。やり方を覚えてしまえば、あとは精度を高めるために練習を繰り返すだけです。


<第6〜7小節は「吐き」です>
「楽に」「微笑んで」「てれ〜」「のん〜びり」、そしてウォーターバッグで「つるし」「ずりおち」「微笑」を確認してください。

第1小節で吸い、第2〜5小節まで止めます。ここから「吐き」に入ります。会陰は降ろしたまま、鼻から静かに吐きます。ここでの最重要ポイントは「静かに」です。

炭酸飲料をクイクイッと飲んだあとのように「プハーッ」と吐いてはいけません。一切音を立てないつもりで、誰にも聞こえないくらい静かな息を吐いてください。これも重要な「呼気(=吐く息)の制御」です。

 【第6小節】 ボトム= Down
 4拍 音をたてずに吐く

第7小節で、ふたたび会陰を引き上げます。さらに腹をギュウッと凹ませながら、息を吐き切ります。体幹部を下からしぼり上げて、息を残らず出してしまいます。 

 【第7小節】 ボトム= Up
 4拍 腹を凹ませつつ吐き切る 

このとき、身体が前傾しないように注意してください。ウォーターバッグ、「つるし」「ずりおち」です。


<第1〜7小節は「鍛え」第8〜9小節は「癒し」>
前半の7小節、つまり1小節吸って、4小節止めて、2小節吐く。これがジェリーフィッシュ・フロートの「鍛え系」パート。続く後半の2小節は「癒し系」です。

 【第8小節】 ボトム= Down
 4拍 仙節へ吸息 

 【第9小節】 ボトム= Down
 4拍 全身へ呼息

「仙節(せんせつ)」というのは、会陰から真上に上がるラインと、仙骨の中央を前後に貫くラインとの交点。このあたりに向かって息を集めるように吸います。実際には鼻から吸いますが、仙節が息を吸い集めているような感覚です。

第9小節では、仙節から全身へ向けて息を吐き広げていきます。つまり「吸いながら閉じ」「吐きながら開く」という意識操作をするわけです。このときもニーノかつノーチョークを忘れずに。

<体幹部を総合的に開発する>
以上9小節(7小節+2小節)がジェリーフィッ シュ・フロートのワンサイクルです。底部の開発(ボトミング)、腹部の開発(アブドメニング)、胸部の開発(チェスティング)、肩部の開発(ショルダリング)を呼吸と合わせて行なうものです。





JFFをひと目で確認!
JFFワンシートテキストをダウンロード

jellyfish_onesheet.jpg




くらげ呼吸法練習用リードメッセージ





テキスト

電子書籍『くらげ呼吸法〜ぐにゃぐにゃの内臓から力が湧く〜』

水の呼吸を代表するワークのひとつが「くらげ呼吸法」である。正式名称をジェリーフィッシュ・フロートといい、くらげの浮遊を意味する。

くらげ呼吸法は、体幹部開発のためにデザインされた。骨盤底部、腹部、胸部、肩甲部を別々に使えるよう練習を重ねる。

複雑な動きをともなうので難しく見えるかもしれないが、わりとすぐに覚えられる。慣れてくれば、自然な動きと感じられるだろう。

自分の身体をくらげと思って、海中を漂うイメージでやるとよい。閉じたり開いたりしながら、のんびり水に浮かぶ気分になれたら理想的だ。

くらげ呼吸法を10分ほど実践すると、身体が変化していることに気づくだろう。体幹部がほぐれて温まり、動きやすくなっている。

さらに、内臓を大きく動かすため、血の巡りがよくなる。酸素と二酸化炭素の交換が進んで、頭もすっきりする。

呼吸法は一生にこれひとつ覚えればいいと言えるほど、ゆたかな内容になっている。ぜひ長く愛用していただきたい。

今回もわかりやすい読み物とするべく、対談スタイルのフィクション形式を採用した。水の呼吸シリーズでおなじみの、風来末先生とパイポくんに登場してもらおう。



ペーパーバック『ミニマリストは電気呼吸の夢を見るか?』

シンプルな暮らしに憧れる。それはモノを減らして我慢に耐える生活ではない。自分の優先順位を明確にして、大切なものを存分に楽しむライフスタイルである。

日本には「わび」「さび」「幽玄」など簡素さの奥に深い美を感じる伝統があった。今また地球環境や経済システムに持続可能性を求める文脈から、外面をシンプルに内面を豊かにという生き方を支持する人が増えている。

複雑でノイズに満ちたこの社会でシンプルライフをめざすとき、まずは不要なものを削っていく。削って削って最後に残るものはなにか。この問いには明解に答えられる。呼吸である。思想、信条、文化、時代、性別などあらゆる違いを超えて、人間にとって最重要なものは呼吸だからだ。

では呼吸を中心に置いた暮らしは、どのようにデザインできるか。本書はそのアイデアを提示するものである。

私はこれまでに「水の呼吸シリーズ」という25冊の電子書籍を刊行し、多種多様な呼吸法を紹介してきた。本書ではただひとつ「くらげ呼吸法」をピックアップし、ひたすらそれを磨き上げることで簡素に生きる方法を模索する。

呼吸は身体の多くの部分が関与する複雑な現象である。どこに着目するかによってさまざまな呼吸法を創作することができる。そして目的や用途に応じてそれらを「使い分ける」ことには意味がある。

けれども身体はひとつだし1日は24時間しかない。したがって、ひとつの呼吸法を「使いこなす」こともまた、現実的に大きな意味があると考える。それはまたシンプルでゆたかなライフスタイルにつながるはずである。

本書があなたの視界をクリアにし、生活をすっきりさせるお役に立つなら、これに勝る喜びはない。

投稿者 kurosaka : 2013年8月15日