ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際音楽プロダクション 〜


ノルウェイ・ジャズ・ショック

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【インデクス】
大学生ビッグバンドとの共演
ピアノとのデュオ
コンボとの共演
ホウコンとの出会い
不思議の国のギタリスト
現実の壁
猫のとりもつ縁
ブッキング作戦
2003年日本ツアー
プロフィール


ホウコン・トーム日本公演
2008.10.8〜10



三者三様のギグ

ノルウェイのギター奏者ホウコン・ストームが
来日し、以下の3公演を行ないました。




1.大学生ビッグバンドとの共演
 立教大学NEW SWINGIN' HERD with HAKON STORM
 管楽器専門店ダク スペースDo(新大久保)
 2008年10月8日(水) 開場18:00 開演18:30
 
 1st Set(公開クリニック)
  Mir
  B.O.A.
 2nd Set
  Children of The Night
  Mir
  B.O.A.
  Kayak
  Wyrgly
 (アンコール)The Santa Maria

 立教大学ビッグバンドはコンテンポラリーな曲
 を澄み切ったサウンドで奏でるシャレたジャズ・
 オーケストラです。予想通り、ホウコンのよう
 なユーロジャズの最前線にいるアーティストと
 の相性はぴったりでした。




2.ピアノとのデュオ
 ホウコン・ストーム(g)&
 新澤健一郎(p)デュオ
 さくらんぼ(京王線柴崎駅前)
 2008年10月9日(木) 開演20:00

 1st Set
  Fyrblues
  All The Things You Are
  鼓動
  Bluesette
  Body & Soul
  Storm Bird
 2nd Set
  風にそよぐ
  天空
  Donna Lee
  Veil of Rain
  Quiet Leaves
 (アンコール)All Blues

 このデュオによる演奏は超絶でした。双方のオ
 リジナルを7曲、スタンダードを5曲。どれも心
 地よく躍動するリズムと叙情的で美しいサウン
 ド、そして即興演奏のテンションが満喫できる
 すばらしいギグとなりました。




3.コンボとの共演
 Hakon Storm with miwako 4 & スミ☆アヤコ
  Hakon Storm (g)  ホウコン・ストーム
  miwako (as, fl)  みわこ
  川久保典彦 (p)  Norihiko Kawakubo
  アラン・グリースン (b)  Alan Gleason
  久保田 徹 (ds) Toru Kubota
  スミ☆アヤコ (vo)  Ayako Sumi
 B flat(赤坂)
 2008年10月10日(金)開場18:30 開演19:30

 1st Set
 K&T(miwako)
 The Raven Speaks
 Home Sweet Home
 Fyrblue(Hakon Storm)
 星の遠足(miwako)
 JZ's Storm(miwako)

 2nd Set
 Canned Second(Hakon Storm)
 Lament
 Girl Talk
 満月の夕べ
 Yesterdays
 Darling Killer(Hakon Storm)
 Still More(miwako)
 (アンコール)行くで(miwako)

miwako4のパワフルな演奏、スミ☆アヤコの楽しい
ヴォーカル、そしてホウコンのリズミカルで美しい
ギターは絶妙のコラボレーションでした。アット
ホームでくつろげる雰囲気の素敵なショウでした。




ホウコンとの出会い

ホウコンは2003年の日本ツアーに続いて2度目の来
日でした。そもそも日本へ来るきっかけとなったの
は、ホウコンが守屋純子(p)に出したメールがきっ
かけ。以下、その経緯を物語風にまとめてみました
(メルマガで聴く「ユーロジャズへの旅」より編集
して引用)。


プロローグ

その男は、ジャズピアニスト守屋純子のウェ
ブサイトを見たそうだ。

「日本ツアーをやりたいので手伝ってほし
い」と、ノルウェイから守屋へメールを
送った。
 
男の名はホウコン・ストーム。オスロ在住の
作曲家・ジャズギタリストである。 

守屋はミュージシャンなので、日本ツアーの
手伝いは専門でない。だから私をホウコンに
紹介した。
 
私は音楽イベントの企画制作に携わってい
る。しかしノルウェイには行ったことがな
く、そのジャズをまったく知らなかった。
私のまわりにも、北欧はおろかヨーロッパの
ジャズを聞く人さえいないのだ。

私はホウコンに「まず、あなたの音楽を聞き
たい」と依頼した。彼はすぐにデモCDを送っ
てくれた。

さっそくCDプレイヤーにかけてみる。そこか
らは私の想像を超える音楽が流れてきた。ユ
ーロジャズと私の衝撃的な出会いだった。



不思議の国のギタリスト

ホウコンのデモCDは、行ったことのないノル
ウェイの音楽という先入観もあったとは思う
けれども、強く「別世界」を感じた。

たとえば、Substantial Lessons Concerning
The Quintessence of Presence(存在の真
髄に関する本質的レッスン)といういかめし
いタイトルのビッグバンド曲。18分近い大曲
である。

唐突に鏡の国のアリスの「せいうちと大工の
紙芝居」が頭に浮かんだ。不思議な印象だ。
曲がどのように展開するのか、まったく先が
読めない。知らない海辺の街を一人で歩いて
いるような気分になる。

Triptychon という曲も聴いてみた。これも
17分を超える。タイトルの意味がわからな
い、何拍子なのかもすぐにはわからない。で
もリズムが複雑にからみあっていて面白い。

Matsukaze という日本語タイトルの曲もあ
る。茶の湯で釜の湯がたぎる音のことを松風
というそうだが、そこからとった名前だと
か。うーん、日本人でもあまりなじみのない
ことを知っているなあ…。

この曲はMIDIによるデモ演奏だったのもあ
り、まことに神秘的なサウンド。どう聴いて
も和風の感じはしない。ノルウェー人の抱く
日本の印象はこんなかと思いながら、めまぐ
るしく変わる曲調を楽しむ。

何曲か試聴するうちに、ホウコン・ストーム
の不思議な音楽世界に頭がボーッとしてき
た。彼が高度な作曲技術と豊富なアイディア
を持つ音楽家だということはわかる。ギター
の腕前もかなりのものだ。

しかし、こういう音楽家を日本でブッキング
できるだろうか? ここで私の意識はいきな
り現実世界へ引き戻される。彼の日本ツアー
をどうやって実現すればよいのか、その時の
私にはまったく思い付かなかった。




現実の壁

ホウコンの音楽は魅力的だ。なんとかして彼
の日本ツアーを実現したい。でも、どうすれ
ばいいのだろう? ホウコン・ストームとい
う作曲家兼ギタリストの名前を知っている日
本人は皆無に近い。普通にブッキングするの
は至難の技だ。

彼が日本へ来るにはいろんな費用がかかる。
オスロ〜東京の往復航空運賃。ワーキングビ
ザの取得。日本での宿泊費、食費。日本国内
の交通費。公演主催者との交渉や打ち合わせ
に関わるコスト。実際にツアーをするとなれ
ばツアーマネージャーの経費も発生する。そ
してツアー手配には人件費もかかる。

これらすべての経費を、公演主催者に負担し
てもらうことは無理だ。つまりホウコンの
「売値」をそんなに高く設定はできない。い
くら内容が面白くても、日本では無名に近い
ので、集客のメドが立たないからだ。

どう考えても妙案が浮かばない。こりゃダメ
だ。今回の来日はあきらめてもらおう。近々
リーダー作のアルバムが出るらしいから、そ
れがリリースされてから改めて話し合おう。
そのように私は考え始めていた。

そんなある日、ホウコンが送ってくれたデモ
音源を聞きながら、何気なくジャケットを見
ていると、Mir というタイトルの曲を見つけ
た。

「おや?」

Mir は英語表記だが、もともとはロシア語で
「ミール」と発音する。旧ソ連の人工衛星の
名前にも使われていた。平和とか宇宙という
意味だ。

実は、私の飼っている猫がロシアンブルーと
いう種類で、名前をミールという。そこでホ
ウコンにこんなメールを送った。

「Mir というタイトルの曲があるね。これは
うちの猫の名前と同じだよ」

何気ない雑談のつもりだった。しかし、ここ
から話は思わぬ方向へ展開するのだった。




猫のとりもつ縁

ホウコンからこんな返事が来た。

「この曲名も猫の名前からとったんだ。ぼく
の彼女の猫が Mir なのさ。ノルウェジアン・
フォレスト・キャットという種類なんだよ」

こんなふうにして猫談議が盛り上がってし
まった。お互いに猫の写真を交換し合い、長
毛種だの短毛種だのいい始めたら、猫好きに
国境はない。ホウコンと私は急速に親しく
なってしまった。

そして、いつしか私の関心は「ホウコンを日
本へ呼べるか否か」ではなく「どうやって
Mir を日本で演奏するか」ということに移っ
ていた。

ホウコン側でも努力を重ねた。まず、ビッグ
バンドのオリジナル譜面数曲を無償で提供す
ると申し出てくれた。交通費・滞在費につい
てもノルウェイ王国政府の補助金を申請中だ
という。

つまり、あの優美かつ複雑な譜面を無償で使
えるうえに、航空運賃、日本滞在費はノル
ウェー側で負担できるかもしれないとのこ
と。だとすれば、あとは純粋に公演にかかる
経費だけだ。

こうして、ホウコン来日企画はにわかに具体
的なものとなってきた。




ブッキング作戦

せっかく日本へ来るのだから、日本のアー
ティストと共演して人脈を作りたいだろう。
また、ホウコンの曲を演奏するビッグバン
ドも見つけたい。

いきなりコンサートホールでの公演は無理
だろうから、ライブハウスから始めようか。
誰に声をかけよう…。

まだまだ不安ながら、ホウコンの初来日プ
ロジェクトは、少しずつ動き始めた。ホウ
コン・ストームの神秘的な音楽世界を日本
の聴衆に届けることができるかもしれない。
なにより Mir を披露する機会が作れる。

費用的な障害をどうやって乗り越えるか。
いかに支持者・理解者を増やしていくか。
地道なプロモーション作戦が展開されるこ
とになった。

音楽学校でクリニックをしてみてはどうか。
社会人バンドや学生バンドとの共演も試み
よう。日本のプロとも共演したい。知り合い
のライブハウスへも声をかけてみよう。

なにしろ日本での知名度ゼロ。しかも音楽は
かなり難解。そんなアーティストをブッキン
グするためには、個人的なツテを使うほかな
かった。

私の知り合いはジャズ関係者、それも管楽器
系の人が多い。したがって、ギタリストであ
るホウコンに興味を示す人は少なかった。ギ
ターだとロック系のほうがいいのかもしれな
いけれども、私の人脈にロック関係者はいな
い。

そこで、ホウコンをギター奏者というよりは
むしろ作曲家として売り込むことにした。彼
の持ち味は、その幻想的な作品にこそあるの
だから。

こうして2003年秋の来日公演を想定しつつ、
作曲家ホウコン・ストームのブッキングが始
まった。





…というようないきさつでスタートした2003
年の日本ツアーは、以下のような内容で実現
しました。

●国立音楽院でクリニックおよびビッグバンド指導
●富山でフィールドハラーJOと共演
●大阪でグローバルJOと共演
●調布GINZで小川銀士グループと共演
●調布GINZで早稲田大学ハイソサエティ・オーケス
 トラOBバンドと共演
●さくらんぼで渡辺毅グループと共演
●Tokyo TUCで香取良彦グループと共演
●大塚Welcome Backで小林武仁グループと共演

今回(2008年)は3公演の短いツアーでしたが、内
容は前回にも増してゆたかで意義深いものとなりま
した。近い将来、再来日を期待したいですね。





プロフィール

ホウコン・ストーム Hakon Storm
1967年ノルウェイのオスロ生まれ。ギター奏者、
作曲家、音楽教育者。1991年からノルウェイ国立
音楽アカデミーでアンサンブル、リズムトレーニ
ング、聴音、音楽理論、ギターを教える。これら
すべての分野において教材を作曲。彼のユニーク
な教授スタイルは多くの音楽高等教育機関におい
て高い評価を得ている。

ホウコンは、Oslo Workshop Big Band、Bergen
Big Band、Prime Time Orchestra などノルウェイ
においてビッグバンドの作曲家・ソロイストとし
て著名。

2006年には The Livin' Jazz Orchestra との共演ア
ルバム「Matsukaze」をリリース。「松風(茶の湯
で釜の湯のたぎる音のこと)」という日本語タイ
トルの組曲を含む。組曲を構成する各楽章もまた
「姿勢」「浦」「村雨」「嵐」など日本語題。

自身のコンボでも積極的に活動。2005年にはアル
バム「Canned Second」をリリースした。

演奏家としてもノルウェイを代表するギタリスト
の一人で、ロックからフリージャズまで幅広いス
タイルで演奏する。複雑なリズムと調性構造を多
用することで知られる。ノルウェイのトップ・
ミュージシャンと多数共演し、自身のプロジェク
トとしてデュオ、トリオからビッグバンドまでさ
まざまな規模で演奏活動を行なう。

1985年の「最優秀ヤング・ジャズ・オーケストラ
賞」から、最近の「ノルウェイ国家奨学金」にい
たるまで、数多くの賞を受賞。1991年コペンハー
ゲンのリズミック音楽院を卒業。編曲と音楽理論
において過去最高の成績を修めた。

投稿者 kurosaka : 2008年10月11日