ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際プロダクション 〜


【雑誌連載】ブラストライブ

【雑誌連載】ブラストライブ

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季刊音楽雑誌 楽器族。ブラストライブ において

  音楽家のためのメディテーション
  「ねこ気功」入門

を連載しています。編集長の許可を得て、以下に
バックナンバーを掲載します。


【インデクス】
第1回【ねこ気功基本功法】
第2回【ぬるぬる呼吸法】
第3回【能楽に学ぶ】
第4回【ハイファイ意識の共鳴】
第5回【巨大な芯の意識】
第6回【海を奏でるには海を】
第7回【上意識と下意識】
第8回【快眠☆ねこ気功】
第9回【空気を変える】
第10回【万物は情報でできている】
第11回【空想と現実のグレーゾーン】
第12回【随意もない、不随意もない。】
第13回【物質世界と意識世界】
第14回【自分を責める自分】
1分間呼吸トレーニング【ねこ気功ブログパーツ】



【快眠☆ねこ気功ブックCD】


【プロフィール】
■寿限無老師(じゅげむろうし)
猫の気功師。年齢や居住地など不詳。水行末の練功
中、気功状態が深まったときにニャンちゃってチャ
ネリングしてメッセージを伝える。水行末筆記の
「哲学ニートのためのねこ気功」
「寿限無老師の愛論」
「ジャズ☆ねこ気功」
などでその功法や思想は知ることができる。


■水行末(すいぎょうまつ)
身体操法、呼吸法、意識操作法などの研究を
続ける一方、寿限無老師のメッセンジャーと
して記述活動を行なう。
「ウォーター&ブレス」
「まま呼息の発見」
など音楽に関する独自の論文多数。
合奏教育のための国際音楽プロダクション
「ワールド・プロジェクト・ジャパン」代表。
金管楽器のハイノート奏法「タングマジック」
企画するなど幅広く活動している。



第1回【ねこ気功基本功法】

2006年10月23日発行 Vol.01


我輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで寿
限無老師。もちろん本名はずっと長い。寿限無寿限
無五劫の擦り切れ、というアレである。弟子は、今
んとこひとり。一番弟子は海砂利水魚じゃったが、
いつの間にかハッシュドビーフだかクリィムシチュ
だかになって活躍しちょる。というわけで、そこか
ら数えてン番目の不肖の弟子に、吾輩の秘伝の「ね
こ気功」を伝授してやろう、と思ったのじゃが...


寿:ああ、よく寝た。

水:おはようございます。「猫は寝子」といいます
  が、ずっとお休みだったのですか?

寿:ああ、400年ほどニャ。

水:へ?

寿:ニャはは。吾輩は寝ているといえば寝ている、
  目覚めているといえば目覚めている。そういう
  ことは超越しとるんじゃ。

水:う〜ん、ホントかなあ...。ま、いいや。老師が
  お休みになっている間に、音楽家がヨーガや古
  武術の身体の使い方を学んで、演奏に生かすと
  いう話をよく聞くようになりました。気功もそ
  ういう分野で役立つと思うんですが、いかがで
  しょう?

寿:当然、役立つニャ。 

水:では、起き抜けに申し訳ありませんが、寿限無
  老師から音楽家、特に管楽器奏者に向けて、ね
  こ気功の視点でアドバイスをいただけますか?

寿:ニャんじゃな、吾輩としては、目覚めにギャル
  たちとムーディーな会話を楽しんでからにした
  いのじゃが...。

水:それはあとのオ・タ・ノ・シ・ミ! ですよ、
  老師。

寿:む? ニャはは。そういうことならよいのじゃ
  が。おっほん。で、ポイントは三つある。一つ
  目は身体の使い方で、これを吾輩は「からだづ
  かい」と呼んでおる。

水:おお、いきなり本題なんですね。はい、それで
  あとの二つは何でしょう。

寿:二番目が呼吸法「いきづかい」、三番目は意識
  操作法で「こころづかい」という。

水:ねこ気功は、身体と呼吸と意識を操作するト
  レーニングなんですね。

寿:そうじゃ。これらは別々のものではなくて一体
  になっておるのじゃが、初心者にはひとつずつ
  説明したほうがわかりやすいじゃろう。

水:では、さっそく「からだづかい」から始めます
  か?

寿:まあ、そう急ぐな。一番最初に、人は何のため
  に音楽をするのかというところをきみにたずね
  ておきたいニャ。

水:は? 「何のために」ですか?

寿:うむ。

水:やっぱり「楽しむため」ではありませんか? 
  文字通り音を楽しむのが「音楽」。

寿:ニャるほど。では演奏者が楽しければそれでよ
  いのかニャ?

水:いいえ、聞いている人にも楽しんでもらえたほ
  うがいいですね。

寿:そうじゃろうニャ。つまり、演奏者と鑑賞者の
  良好なコミュニケーションが必要というわけ
  じゃニャ?

水:おっしゃる通りです。

寿:きみのまわりの音楽家は、聴衆と良好なコミュ
  ニケーションをしておるか?

水:それは、プロの音楽家ですか、それともアマ
  チュア?

寿:そんな区別に意味はニャいぞ。楽器を人前で演
  奏すれば、みな音楽家じゃ。

水:えーと...。答えにくい質問ですねえ。

寿:では、たずね方を変えよう。きみのまわりの音
  楽家は、聴衆とのコミュニケーションをどのく
  らい大切に考えておるか?

水:うーん、心の問題なのでたしかなことはわかり
  ませんが、演奏技術のことで頭が一杯の人が多
  いかもしれません。

寿:ニャっはっは。結構、結構。しかし、演奏技術
  だけでは、それは「音」じゃ。まだ音楽になっ
  ておらん。

水:とおっしゃいますと?

寿:テレビ電波を例に考えてみよう。電波はある種
  の電磁波じゃ。そこに「番組」という情報が
  乗っておる。その電波を受像機で再生すること
  で、番組を楽しむことができるんじゃニャ?

水:なるほど、楽器の演奏技術を磨いても、それは
  電波の送信がスムーズにできるだけで、番組が
  おもしろいかどうかとは別だということです
  か?

寿:まあ、そういうことじゃニャ。

水:で、何がおっしゃりたいのですか?

寿:ねこ気功でいう「気」も同じニャんじゃよ。気
  はある種のエネルギーじゃが、そこには情報が
  乗っておる。その情報をやりとりするコミュニ
  ケーションが気功というわけじゃ。

水:では、音楽と気功はそもそも似たところがある
  んですね。

寿:うむ。吾輩の目から見れば、すぐれた音楽家
  は、みなすぐれた気功師でもある。

水:でも、音楽家は気功の動きはしませんし、気を
  出したりしませんが...。

寿:ニャはは。気功はじっとした状態でもできる
  し、気は楽器の先からでも出るぞ。

水:では、レベルの高いミュージシャンは、楽器か
  ら気を出していると?

寿:当然じゃよ。そしてその「気」にはすぐれた情
  報が乗っておる。それが聴衆の心を動かすの
  じゃ。

水:へえ〜! では、どうすれば楽器を使ってそん
  な境地に至れるのですか?

寿:「境地」とはまた大げさじゃが、ここで話は最
  初に戻るのじゃ。からだづかい、いきづかい、
  こころづかいのトレーニングを積むことで、音
  楽と気功はひとつのものになっていく。

水:そして、音を楽しむ、つまり「音楽」ができる
  というわけですね。

寿:そうじゃ。しかも、このトレーニングを積んだ
  者は、普通の人とは「楽しむ」のレベルが違
  う。

水:名演奏家のプレイが身も震えるほど感動的なの
  は、そのせいですか?

寿:ごく初歩的な意味ではその通りじゃ。しかしこ
  の話はさらに奥が深いので、トレーニングを進
  めながら、少しずつ説明していこう。

水:お願いします!

寿:ねこ気功のやり方は、ここ に基本功法として
  まとめてある。その壱の教え「からだづかい
  (身体操法)」をよく読んで、「ねこばしり」
  の練習から入るといいぞ。

水:ねこばしり、ですね...。え〜と...。

寿:なんじゃ、もう忘れたのか。ホントならネット
  を見て勉強せい、と放り出すところじゃが、初
  回だから大サービスしよう。

水:たしか背骨の開発でしたよね?

寿:その通り。大事なのは「背骨」じゃ。まずは、
  からだを前後にゆらすだけでよい。急いではい
  かんぞ。のんびりとじゃ。力んでもいかん。て
  れーっとじゃ。このとき自分の背骨をよく感じ
  てみなさい。

水:あ、思い出してきました。背骨は「一本の棒」
  ではなくて、「いくつも節のある棒」のように
  感じるんでしたよね? ああ、気持ちいい〜。

寿:うむ。言うまでもなく、背骨はいくつもの小さ
  な骨の集合体じゃ。前後にゆらせば「棒のよう
  に」ではなく、「自転車のチェーンのように」
  動く。練習を重ねるにつれて、背骨はだんだん
  しなやかに動き始める。棒からチェーンに、や
  がてはムチがしなるようになる。

水:そうだ、そうだ。この背骨の前後ゆらしが、ね
  こ気功の中心功法「ねこばしり」でした!

寿:テレビでチーターが草原を走る姿を見たことが
  あるじゃろう。チーターもトラもそこらへんの
  野良猫も、走るときの姿は同じ。つまり背骨を
  前後に波打たせながら走るんじゃニャ。

水:老師、もっとくわしく教えていただけません
  か?

寿:ニャはは。興味が出てきたかニャ? では、先
  述のサイトをよ〜く読むように。

水:ふむふむ、そうか邪気を洗い流して背骨をク
  リーニングするんでした!

寿:次号までに、いい背骨を作っておくのじゃよ。
  ふあああ〜、さて、吾輩はまた寝るとしよう。

水:老師! もうちょっと教えてくださいよ。老
  師ってば! 寝るとか目覚めるは超越されてい
  るんじゃないんですか〜? 老師! ギャルと
  のムーディーな会話はどうします〜? ねえ、
  老師〜!

寿:むにゃむにゃ〜。ZZZ...

(つづく)



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
  mixiねこ気功コミュに入ろうニャ
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪




***


第2回【ぬるぬる呼吸法】

2007年1月14日発行 Vol.02

我輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで
「寿限無老師」。もちろん本名はずっと長い。寿限
無寿限無五劫の擦り切れ、というアレである。気功
のおかげで不老長寿をエンジョイしとる。あんまり
長生きしたので正確な歳は忘れたけれども、百歳と
も二百歳とも言われるニャ。しかし、今でもお色気
は大好き。今日もレディーたちと夢のようなデート
を楽しんでおったのじゃが...


水:老師!老師!ああ、すっかり寝ちまって、どー
  しようもないなあ...けっとばしちゃえ!

寿:いてて!ニャ、ニャにをするんじゃ!!
  
水:おはようございます。修行の時間でございま
  す。

寿:ああ、そっか...ちぇ、オネエちゃんたちに囲ま
  れてたのになあ。

水:...あいかわらずお盛んですね。あたしゃもう枯
  れはじめてますが(苦笑)。

寿:いつも言っておるように、「性は生なり」、そ
  して「性は聖なり」ニャんじゃ。

水:セクシャルなエネルギーは生命力そのものだと?

寿:その通り! これは「ねこばしり」で使う「ぬ
  るぬるの意識」とも関係しとるんじゃニャ。

水:え、「ぬるぬるの意識」がですか?

寿:うむ。きみはどうして「ぬるぬる」が必要か、
  わかっておるかニャ?

水:えーと、背骨をいい状態にするためにオイルを
  塗る。そのオイルの代わりに「ぬるぬるの意
  識」を使うんでしたよね?

寿:その通りじゃ。しかし、さらに深い理由もある
  んじゃ。

水:といいますと?

寿:生命現象が活発に行なわれているところは、
  「ぬるぬる」しておるのじゃ。

水:はあ...。

寿:カエルでもニワトリでも、卵は「ぬるぬる」し
  とるじゃろう?

水:そういえば、たしかに。

寿:哺乳類も、生殖器官は粘膜でできていて、よい
  状態の時は「ぬるぬる」しておる。

水:なるほど〜!

寿:「私、彼と『ぬるぬる』の恋をしてるの」と女
  の子が言ったら、どう思う?

水:...なんだか、とってもいやらしくて、いい感じ
  がしますね。えへへ。

寿:ニャははは。たしかにちょっとエッチっぽいか
  もしれんが、少なくともこのカップルはうまく
  いっておるニャ。

水:そうですね。「彼とカサカサの恋をしている
  の」だと、別れは近そうですもの(笑)

寿:つまり、「ぬるぬる」とはセクシャルなもので
  あり、生命力あふれるものニャんじゃ。

水:だから、ねこ気功ではそれを重視するんです
  ね。

寿:「ぬるぬる」の質感の中で、生命力を高めてい
  くというわけじゃニャ。

水:おお、老師! なんだかぬるぬると興奮してき
  ましたよ。

寿:よし、生命力が高まってきた証拠じゃ。

水:はい! では、今日のレッスンをお願いしま
  す。

寿:前回は、管楽器奏者に向けたアドバイスとして
  三つのポイントをあげ、その一番目「からだづ
  かい」について話した。

水:今日は二番目のポイントですね。

寿:うむ。二番目は「いきづかい」じゃ。くわしい
  やり方は、ここ に基本功法としてまとめてあ
  る。弐の教え「いきづかい(呼吸法)」をよく
  読んで、「ねこなき」の練習をしなさい。

水:はい! え〜と、ニャンニャンニャ〜ンって言
  うんですね。なんだか恥ずかしいな。

寿:どうして?

水:だって、ばかばかしいし、こんなことをやって
  管楽器がうまくなるなんて、信じられないです
  よ〜。

寿:それがいいんじゃニャいか。

水:え〜? どうしてですか?

寿:ばかばかしいからこそ、リラックスして身体の
  力がぬける。のんび〜りと「ねこじかん」、て
  れ〜っと「ねこだれ」の状態をもたらしてくれ
  るんじゃニャ。

水:どうしても声を出さなくちゃだめですか?

寿:比較してみればわかるが、声を出さずにやるよ
  り、ニャンニャンニャ〜ンと言ったほうが、よ
  り効果が高いんじゃ。

水:でも、抵抗あるなあ。

寿:無声音でもいいぞニャ。

水:やった! ほんとですか?

寿:恋人の耳元でささやくように、そっと無声音で
  ニャンニャンニャ〜ンをやってごらん。

水:(やさしく)ニャンニャンニャ〜ン、スーッ、
  ニャンニャンニャ〜ン、スーッ。おや、これだ
  と恥ずかしくないし、気持ちいいですね。

寿:三つめのニャ〜ン、これを「三の鳴き」という
  が、こいつをできるだけ長くしてみニャ。

水:ニャン、ニャン、ニャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン
  ...老師、もりもりと活力が湧いてきました。

寿:それが「ねこなき」のおもしろいところニャん
  じゃ。長く、深く息を吐くことで、肺の奥にた
  まった古い息が新鮮な酸素と交換される。そし
  て、細胞内ではエネルギーが生まれる。

水:身体も軽やかに感じますよ。

寿:内蔵がマッサージされて、腹部のうっ血が解消
  するので血行がよくなるからニャ。

水:これは管楽器にもいいんですか?

寿:もちろんじゃ。「ねこなき」そのものは演奏用
  の呼吸ではニャいが、楽器を吹くときに使う呼
  吸筋群を整えるんじゃ。

水:そうか! いつもは自分の呼吸を自分の身体が
  ブロックしているような感じでしたけど、今は
  その障害が取り除かれたみたいです。

寿:楽に深く吸えるし、気持ちよく吐けるじゃろ
  う? 

水:はい。「ねこなき」をくりかえし練習すれば、
  呼吸のコントロール能力も鍛えられそうです
  ね。

寿:そうじゃよ。だから、「ねこなき」は間接的に
  管楽器演奏の助けにニャる。くわしくは先述の
  サイトを参考にして欲しいが、「ねこじかん」
  「ねこだれ」そして「ぬるぬるの意識」で「ね
  こばしり」をやって、「ねこなき」まで来た
  ら、君の心身はほぐれて開放的になっているは
  ずじゃ。

水:はい、とってもオープンな気分です。

寿:昔からメディテーションと呼吸法は深い関係が
  ある。きみの感じているオープンな気分は、あ
  る種の瞑想状態ニャんじゃ。

水:え! 瞑想ってこんなに簡単なんですか?

寿:もちろん、浅い瞑想状態じゃがニャ。

水:で、音楽と瞑想とは、どうつながるんですか?

寿:そのことを本格的に語るのは、第三のポイント
  「こころづかい(意識操作法)」の機会にゆず
  るが、今日は楽器練習とメディテーションにつ
  いて話そう。

水:練習に瞑想が必要なんですか?

寿:その通りじゃ。「日常生活の意識」と「練習の
  意識」とは、きちんと分けたほうがよい。モー
  ドが違うといってもいいかニャ。

水:つまり「練習モード」になれと?

寿:そう。日常モードで練習しても、なかなか上達
  しないばかりか、逆に悪いクセがつきかねニャ
  い。静かに落ち着いて、心身ともに開放された
  練習モードになってから楽器をケースから出し
  たほうがよいニャ。

水:なるほど。

寿:江戸時代の剣術家が、強くなるために座禅修行
  を積んだという話を知っておるか?

水:はい。でも、あれはメンタルコントロールのた
  めだと思っていました。

寿:それもあるが、高いレベルでは心と身体は区別
  できニャい。実際、座禅という瞑想を繰り返す
  過程で、身体の動きや技も高まっていったと考
  えられるんじゃ。

水:へえ〜!

寿:では次号までにたっぷり「ねこなき」をやっ
  て、練習モードを作っておくのじゃ。ニャン
  ニャンニャ〜〜〜〜〜〜〜ンとな。わかった?
  では、吾輩はまたオネエちゃんたちに会いに行
  くのでニャ。おやすみ...

水:あ、また寝ようとしてる! ちょっと老師、も
  うちょっとくわしく教えてくださいよ! 老
  師ってば〜!

寿:むにゃむにゃ、おお、セクシーじゃニャいか!
  おお! おおお! ZZZ...

(つづく)


【ねこ気功ブログパーツで呼吸トレーニング】
くわしくはこちらをどうぞ。

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***


第3回【能楽に学ぶ】

2007年5月24日発行 Vol.03

吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで寿
限無老師。吾輩の創始した「ねこ気功」は、身体の
使い方(からだづかい)、呼吸法(いきづかい)そ
して、意識の使い方(こころづかい)の三部から成
り立っておる。これまで、からだづかいといきづか
いを説明してきたが、いよいよ音楽家のためのメ
ディテーション「こころづかい」に入るぞよ。


寿:道歌というものを知っておるか?

水:ドウカですか? どうかなあ...

寿:(ズッコケる)...ニャんじゃ、いきなりダジャ
  レかい!

水:季節はずれのダジャレですみません。

寿:ん? ダジャレに季節があるのかニャ?

水:はい、やっぱりダジャレー・ヌーヴォーを飲み
  ながらが最高かと。きゃはは!

寿:お、そりゃ、まんざら無関係ではないぞ。道歌
  は、道徳や武道の精神を詠んだ教訓歌じゃから
  ニャ。

水:なるほど、「ぶどう」の精神ですか、こりゃ参
  りました!

寿:ニャハ、決まったニャん!

水:で、道歌にはどんなものがあるんです?

寿:たとえばこうじゃ。

  稽古をば 勝負するぞと思ひなし 
  勝負は常の 稽古なるべし(直心影流)

水:あの〜それはアレですか、虫封じのオマジナイ
  かなんかですかね?

寿:これ、ボケもたいがいにせえ。勝負の心得をま
  とめたありがたい歌じゃニャいか。

水:へえ〜、どういう意味です?

寿:稽古つまり練習のときは、それを勝負つまり本
  番のようなつもりでやりなさい。

水:はあ。

寿:そして、いざ本番にのぞんだら、いつもやって
  いる練習のようなつもりでやりなさい、という
  ことじゃニャ。

水:いわれを聞けばありがたや。ナマンダブナマン
  ダブ...。

寿:こりゃ、拝むやつがあるか。さて、ここで問題
  になるのが、「勝負のつもりで」とか「練習の
  つもりで」という意識の操作じゃ。

水:そうですよね。いきなり「つもりで」と言われ
  たって無理ですよ。

寿:うむ、そこに参の教え「こころづかい」を練習
  する必要が生じるのじゃニャ。

水:ネット で予習はしてみたんですけどね、イマ
  イチわからないんですよ。

寿:そう思って、今日は別の角度から説明しようと
  思うぞよ。

水:よ、待ってました!

寿:これから述べることは、最終的には音楽家がス
  テージで聴衆の心をどのようにしてつかむか、
  という話になる。

水:それは連載の第一回で老師がおっしゃった「演
  奏者と鑑賞者の良好なコミュニケーション」の
  ことですか?

寿:お、覚えておったか。感心感心。まずは全体像
  をつかむために、能楽を例にとって説明する
  ぞ。

水:能楽って、お能のこと?

寿:うむ。能楽は舞台芸術の大先輩として、参考に
  すべき点がたくさんある。ここでは能楽師の梅
  若猶彦氏のケースを参考にしながら説明を始め
  るぞ。

水:はい、よろしくお願いします!

 参考文献:
 「息のしかた
  ー きもちいい生活のための呼吸法」
 刊:朝日新聞社 著:春木 豊/本間生夫

寿:梅若氏によれば、能楽の名人たちは鍛錬の過程
  で「身体の様相が変わる」のに気付き、これを
  芸術体系に組み入れた。

水:身体の様相?

寿:たとえば「悲しみ」にはその感情に対応する身
  体の様相があり、「名月を見ているとき」に
  は、それに対応する様相がある。つまり、実際
  はそこに「悲しみ」も「名月」もないのだけれ
  ども、それを経験しているときと同じ身体の状
  態に、能楽師は自分を変化させることができる
  というわけじゃ。

水:へえ〜! それなら「稽古を勝負すると思いな
  す」なんて朝飯前ですね。

寿:細かい話は省略するが、梅若氏の説明を要約す
  ると、おおむね以下のような手順を踏んでいる
  と考えられる。

  手順一:毎日、呼吸法と瞑想を鍛錬する。
  手順二:自己内に意図的な変化を起こす。
  手順三:それを自分で体感する。
  手順四:身体が表現体として語り始める。

水:身体が表現体として? どういうことですか、
  そりゃ?

寿:まあまあ、そんなに先を急ぐな。じっくり説明
  するからニャ。手順一はおくとして、手順二
  「自己内に意図的な変化を起こす」とは、たと
  えば「普通の状態」から「悲しみの状態」へ心
  を変化させるようなことじゃ。

水:悲しみを演じるわけですね。

寿:たしかに「演じる」のじゃが、表面的にそれら
  しく見せるということではニャい。能の演者は
  面をかぶっているので、表情で悲しみを見せる
  ことはできないしニャ。

水:なるほど、そうですね。

寿:このとき、演者の脳内情報には大きな書き換え
  が起きて、心の底から「悲しみ」の状態に包ま
  れていると考えられる。

水:精神そのものが、完全に変化しているというこ
  とですね

寿:そうじゃ。そのうえで、手順三「それを自分で
  体感する」。書き換えられた脳内情報に身体が
  反応し、身体もまた「悲しみ」にひたりきった
  状態になるのじゃ。

水:つまりその「悲しみ」という脳内情報に強い臨
  場感を得て、演者はその感情をリアルに体験し
  ているんだ!

寿:そして手順四「身体が表現体として語り始め
  る」とは、能楽師が描き出した「悲しみ」とい
  う仮想世界を、鑑賞者が共有し始めるのじゃ。

水:いったいどうやって共有するんです?

寿:順を追って説明するから待てというに! とに
  かく、この一連のプロセスをまとめると、「日
  常の鍛錬→意識操作→実感→共有」いう流れに
  なっておることを、ここでは理解するのじゃ。

水:はい、そこまではわかりました。

寿:では「自己内に意図的な変化を起こす」という
  意識操作は、具体的にはどのようにするのか、
  そのあたりから掘り下げようじゃニャいか。最
  初に理解すべきなのが「ハイファイ意識」
  じゃ。

水:はいはい?

寿:ハイファイ! ハイ・フィデリティの略。オー
  ディオ用語でもあるな。次回はこのハイファイ
  意識について、そしてそれを自在に作るための
  方法について講義するぞよ。

(つづく)



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
  mixiねこ気功コミュに入ろうニャ
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪




***


第4回【ハイファイ意識の共鳴】

2007年8月23日発行 Vol.04

吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで寿
限無老師。吾輩の創始した「ねこ気功」において、
意識の使い方(こころづかい)は最重要項目じゃ。
音楽家の役に立つメディテーションを伝授するぞ。
まずは心の構造を知ることから始めよう。


水:前回は「ハイファイ意識」という名前が出てき
  たところまででしたね。

寿:ハイハイ!

水:ハイファイでしょ。 ボケてないで続きを説明
  してくださいよ。

寿:ニャはは。ハイファイ意識は、ねこ気功の専門
  用語じゃ。これは日常意識とは異なる状態で、
  深いリラックスと鋭い集中がうまくバランスの
  とれた意識のことをいう。

水:それって、脳波のアルファ波みたいなものです
  か?

寿:うむ、それも近い。しかし、ねこ気功的に重要
  なポイントがある。それは「ねこじかん」と
  「主客転倒」じゃ。

水:「ねこじかん」は、からだづかいの最初にやり
  ましたね。のん〜びりすること。シュキャクテ
  ントウってなんですか?

寿:たとえば「ねこばしり」をするとしよう。最初
  のうちは「私が背骨を動かす」ことになるが、
  それがある時点から「背骨が私を動かす」よう
  な意識状態へ変化する。

水:なるほど。文字通り主客が入れ替わったように
  感じるんですね。

寿:このように「のんびり」「主客転倒」しながら
  「高度な集中」状態にあるとき、これをハイ
  ファイ意識と呼ぶのじゃ。

水:ハイファイ(HiFi)は、オーディオ用語ですよ
  ね。ハイ・フィデリティ(High Fidelity)の略
  で、原音を忠実に再生する「高忠実度」を意味
  するはずですが。

寿:そう、意識がハイファイ(高忠実)とは、心が
  情報を忠実に反映すること。つまり与えられた
  情報を「あるがままに」とらえ、ダイレクトに
  反応できる状態じゃ。

水:そうするとどうなるんです?

寿:たとえば、みずから描いたイメージなど仮想世
  界の情報に対しても「現実味」を感じるのじゃ
  ニャ。

水:ははあ。つまり、頭で作った「悲しみ」が臨場
  感あふれるものになるためには、ハイファイ意
  識が前提となっているということですね!

寿:ハイハイ。

水:(ズッこける)こーゆーとこでボケないでほし
  いなあ。

寿:ニャはは。ユーモアは人生の潤滑剤じゃ。

水:しかも老師は「人」じゃないし!

寿:ひと口にハイファイ意識といっても、この境地
  に至るのは簡単ではニャい。

水:そうでしょうね。

寿:前号で紹介した能楽師の梅若氏の場合、立禅
  (立った姿勢で行なう瞑想)と腹式呼吸の鍛錬
  を毎日行なうそうじゃ。ハイファイ意識を自在
  に作れるようになるためじゃろうニャ。

水:ねこ気功でいうと、呼吸法(いきづかい)と瞑
  想(こころづかい)を練習するわけですね。

寿:うむ。その具体的な方法を話す前に、もう少し
  梅若氏のケースを分析しよう。

水:お願いします。

寿:ハイファイ意識下で「悲しみ」を描き出したと
  き、それがリアリティの高いものであればある
  ほど、演者の身体は「悲しい状態」になる。

水:心身ともに「悲しい」ということですね。

寿:その通りじゃ。さて、ここで人間の心身には、
  「共鳴」のメカニズムがあることを理解しなく
  てはならん。

水:共鳴...、ですか?

寿:たとえばじゃ、社会心理学でいう「同調現象」
  を知っておるか。

水:いいえ。

寿:同調とは、人々の意見がある一定方向に傾いて
  いくことをいう。

水:まわりの人とついつい同じ行動をしてしまうよ
  うなことですか?

寿:まあ、そうじゃニャ。同調は、行動レベルでも
  起きるが、生体リズムでも起きることが知られ
  ておる。

水:生体リズムというと?

寿:大学や会社の女子寮で共同生活をしていると、
  いつのまにかお互いの生理周期が同じになって
  くる「ドミトリー効果」という現象がある。

水:へえ〜、びっくりですね!

寿:生理のような長い周期の生体リズムばかりでな
  く、分単位や秒単位でも同調は起きる。たとえ
  ば同じ部屋で長く一緒に話しているだけで、人
  間は呼吸や心拍数、まばたきの回数が同期して
  くるのじゃニャ。

水:同調は、群集心理とかファッションの流行とも
  関係してるんですかね。

寿:関係あると考えられるが、同調のメカニズムは
  複雑なので、さらに多くの研究が必要じゃろ
  う。ここでは、人間には生理的同調が起こりう
  るということを確認するにとどめ、それを「共
  鳴」と呼ぼう。

水:共鳴ということは、理屈で納得するのではなく
  て、身体が勝手に同調してしまうというニュア
  ンスを感じますね。

寿:お、いいぞ。正確には「身体が」ではなく「心
  身が」じゃがニャ。

水:心も身体も勝手に共鳴してしまう?

寿:うむ。ここにAさん、Bさんという二人がいると
  しよう。この二人の心身が同調するとき、どっ
  ちがどうなると思うかニャ?

水:足して二で割ったあたりに落ち着くんですか?

寿:ニャはは。正解は「弱いほうが強いほうに同調
  する」じゃ。

水:弱いとか強いとかって、何がですか?

寿:人間は、強いもの、大きなもの、豊かなもの、
  すぐれたものなどに影響を受けやすい。「朱に
  交われば赤くなる」というじゃろう?
 
水:はあ。

寿:気功的に表現すれば「気」じゃが、もっと一般
  的な表現なら「意識」じゃニャ。たとえばAさ
  んの意識が、強く、大きく、豊かで、すぐれて
  いるほど、Bさんに与える影響力は強いのじゃ
  よ。

水:あ、そこでハイファイ意識が出てくるんです
  ね!

寿:お見事。その通りじゃ。

水:演者がハイファイ意識下で「悲しみ」を描き出
  し、身体が「悲しい状態」になったら、鑑賞者
  はその状態に共鳴するんだ!

寿:もちろん、そこへうまく誘導するには、いろん
  な条件を整える必要があるけれども、だいたい
  それであっておるぞ。

水:梅若氏の「手順四:身体が表現体として語り始
  める」とは、このことですね。

寿:そうじゃ。したがって、演者は自分の意識をど
  こまで「ハイファイな」状態にできるかによっ
  て、鑑賞者との心理的決闘に勝つか負けるかが
  決まるとも言える。

水:舞台ではお客さんを「のめ」といわれますけ
  ど、その前提が強力で上質なハイファイ意識な
  んだ。

寿:舞台・客席という空間を制する力、それは「意
  識のハイファイ化による共鳴力」と考えれば理
  解しやすいじゃろう。

水:でも、具体的にはどう練習すればいいんです
  か?

寿:そこでメディテーション「ねこおもい」の登場
  となるのじゃよ。

(つづく)

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***


第5回【巨大な芯の意識】

2007年11月24日発行 Vol.05

吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼
んで寿限無老師。音楽家は舞台でお客さんを
「のめ」といわれるが、その前提となるのが強
力で上質な意識状態。これが舞台・客席という
空間を制する力を生むのじゃ。では、そういう
強い意識をどのように育てていくかについて語
ろうかニャ。


水:人間の心身には「共鳴」のメカニズムがあ
  るんでしたね。

寿:うむ。

水:共鳴とは、理屈で納得するのではなくて、
  心身が勝手に相手と同調してしまう現象
  で、意識の強い方が弱い方に影響を与える
  ということでした。

寿:吾輩が若いおネエちゃんに強い影響を受け
  るのは、そっちの方面では吾輩の意識が弱
  いからじゃ。ニャはは。

水:もう、老師ったら、ふざけてないで、どう
  やったら「強い意識」を作れるのか、練習
  方法を教えてくださいよ! 

寿:ニャはは。では、まず、思いっきり大きい
  ものを思い浮かべてごらん。

水:え、大きいものですか? 神楽坂飯店の一
  升チャーハンとか?

寿:ニャんじゃ、スケールが小さいのう。

水:えーと、豪邸とか、東京タワーとか...

寿:うむ、いいぞ、いいぞ。

水:大聖堂、パルテノン神殿、奈良の大仏、あ
  とは、えーと、えーと...

寿:自然のものでもいいぞよ。

水:あ、富士山だ。エベレストもある。あと、
  アマゾンの密林とか。

寿:うむ、結構じゃ。しかし、まだまだスケー
  ルが小さい。どうして地球とか、太陽系と
  か、銀河系とか、宇宙とか、そういうもの
  が浮かばんかのう。

水:あ、たしかに。これはアタシの人間の器が
  小さいってことでしょうか。

寿:それはある意味ではあたっておる。どれだ
  け大きいものを思い描けるかは、その人の
  想像力の限界を示しておるからニャ。

水:とほほ。よ〜し、思いっきり大きなものを
  考えてやるぞ〜。練習だ!

寿:ところで、大きなものを心に思ったとき、
  どんな感じがするかニャ?

水:そうですね、なんだか自分まで大きくなっ
  たような気分でしょうか。

寿:ほう。では、きみはいろんな街の中心にタ
  ワーがあったり、教会の天井が高かった
  り、山岳信仰が生まれたりするのは、偶然
  だと思うかニャ?

水:おお! たしかに、大きなものは信仰の対
  象になっていますね。

寿:人間は大きなもののそばにいたり、それを
  心に描いていると、安心感を得るんじゃ。

水:へえ、そうなんですか!

寿:これに「共鳴」のメカニズムを組み合わせ
  るのが、他者の心をリードする第一歩にな
  るんじゃ。

水:そうか「強い意識」とは、たとえば大きな
  意識のことなんですね!

寿:サエとるのう。その通りじゃ。いい子いい
  子してやろう。ニャゴニャゴ。

水:えへへ...。

寿:もちろん、大きいだけが「強い意識」では
  ニャいぞよ。たとえば「重い」でもよい。
  腹の中にボーリングの玉があると想像して
  ごらん。

水:ええ〜? ボーリングですか? うーん、
  なんだかどっしりとした感じです。

寿:精神状態はどうじゃニャ?

水:そうですね、落ち着いているというか、
  堂々としているというか...

寿:それがいわゆる「ハラができた」状態ニャ
  んじゃ。専門的には「丹田が効いた」状態
  ともいう。

水:つまり、大きいだけでなく、ものすごく重
  いイメージでもいいわけですね。

寿:「強い意識」には、大きさ、長さ、重さ、
  なめらかさ、心地よさ、複雑さ、明確さな
  どいろんな要素があるんじゃ。

水:ということは、心の中に、なにか圧倒的な
  スケールのものを、強く思い描けばいいと
  いうことになりますね。

寿:うむ。そのような強い意識を持った者は、
  周囲の人間の心に、実際は「心身に」じゃ
  が、影響を及ぼし始める。

水:共鳴現象が起きるんですね。

寿:そして、大きいものとか重いものは、ただ
  のイメージであるよりも、たしかな身体感
  覚をともなうものになると、さらに影響力
  は強くニャる。

水:とすると、なるべくシンプルなもの、実感
  を得やすい身近なものを思い描くほうがう
  まくいきそうですね。

寿:その通り。だから初心者には「大きな山」
  とか「ボーリングの玉」とか具体的なもの
  を思い浮かべるほうが取り組みやすいん
  じゃよ。ところで吾輩の名前と同じ題名の
  「寿限無」という落語があるじゃろ。

水:私の名前「水行末」も出てきますよね。

寿:あの中に「五劫(ごこう)のすりきれ」と
  いう言葉があるのを知っておるか。

水:はい。劫(こう)とは、ものすごく長い時
  間のことですよね。たしか「一劫」は一辺
  160kmの岩を3000年に一度天女が舞い降り
  て羽衣で撫で、岩がすりきれてなくなって
  しまうまでの時間だったような。

寿:まあ、気の遠くなるような長い時間のこと
  じゃニャ。大事なのは、こういう信じられ
  ないほど長い時間の単位をイメージする想
  像力じゃ。

水:なるほど。大きいものを想像しろといわれ
  て、一升チャーハンなんて答えているよう
  では、やっぱり小物だということか...。

寿:まあ、そう悲観することはニャい。イメー
  ジ能力は訓練しだいで、いくらでも発達さ
  せることができるからニャ。

水:では、音楽家が聴衆の心へ訴えるために、
  具体的にはどんな練習をすればいいんで
  しょうか?

寿:いよいよ核心にせまってきたニャ。まず、
  ねこばしり、ねこなきなどで、軽いハイ
  ファイ意識を作り出す。

水:そこまではお手のものです。毎日練習して
  ますからね。

寿:そのうえで、とてつもなく大きなものを思
  い浮かべるのじゃ。本格的に取り組むつも
  りなら、吾輩がお薦めしたいのは、身体の
  「芯」じゃ。

水:芯ですか! シンじられな〜い!

寿:(ずっこける)こりゃ、まじめにやれ。
  ま、寒いギャグは地球温暖化を救うという
  説もあるから大目にみようかニャ。

水:そんな説ありませんてば(笑)

寿:身体の中央を上下に貫く「芯」、これをど
  こまでもどこまでも長く伸ばすのじゃ。

水:自分の身体の外に伸ばすんですね。

寿:そう、下は地球の中心まで。上はとりあえ
  ずお月さんくらいまで伸ばしてごらん。

水:ひええ〜! けっこう難しいですねえ。

寿:天と地と人を芯で結ぶ。ねこ気功ではこれ
  を「天地人芯」と呼ぶ。ハイファイ意識下
  で天地人芯を作る練習を繰り返すと、まず
  心が澄んでくる。そして気持ちが落ち着く
  のを感じるじゃろう。

水:たしかに、この状態でステージに出れば、
  アガるなんてことはなさそうです。

寿:この状態をいつでも自分の心身に作り出せ
  るようにする。これが梅若氏のいう「手順
  二:自己内に意図的な変化を起こす」そし
  て「手順三:それを自分で体感する」とい
  うところの具体的な練習方法じゃ。

水:なるほど、芯を伸ばす、芯を伸ばす...。

寿:それじゃ、次回までによ〜く練習しておく
  ように。吾輩は「秘伝ねこあそび瞑想」で
  おネエちゃんたちとヴァーチャル修行には
  げむんでな。

水:あ、またこれだよ。老師! ぼくの姿勢の
  チェックをしてくださいよ! ねえ老師っ
  たら〜!

寿:ニャん、ニャん、ニャん♪ ニャはは!
  むにゃむにゃ、ZZZ...。

(つづく)



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***


第6回【海を奏でるには海を】

2008年1月23日発行 Vol.06

吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼
んで寿限無老師。たとえば「海」をテーマに
した曲を演奏するとき、海のイメージを思い
描く必要があるかニャいか。きみはどう思う?
今回はそういう話じゃよ。


水:実際に曲を演奏するときに、心では何を
  思えばいいんですか? たとえば「花」が
  テーマの曲は花を、「海」がテーマの曲で
  は海を思い浮かべるとか。

寿:そうすれば効果があると思うかニャ?

水:いえ、とても効果があるとは思えないんで
  すよ。だってただのイメージですもん。

寿:ニャはは。

水:でもね、たしか絵を描く人のための格言で
  こんなのがあったような。「竹を描くには
  かならずまず成竹(せいちく)を胸中に得
  (う)」と。竹の絵を描こうとするなら、
  まず心の中に完全な竹のイメージを思い浮
  かべ、それから筆を取りなさい、という意
  味ですよね。

寿:つまり演奏家がイメージを描いただけで、
  そのイメージを聴衆と共有できるか、専門
  用語でいうなら「共鳴」するか、というこ
  とが聞きたいのじゃニャ?

水:そうです、まさにそれです!

寿:その答えは、前号までを読めばわかるはず
  じゃがニャ。

水:といいますと?

寿:ニャんじゃ、わからんのか。不肖の弟子を
  持って吾輩は悲しいぞよ。

水:すみません、そう言わずに教えてください
  よ。お願いしますよ〜。

寿:よかろう。海を演奏するときに海を思い描
  くかどうか。意識操作の観点からは、イエ
  スともノーともいえるニャ。

水:はあ...。

寿:いくつかのレベルで説明が必要じゃが、ま
  ず日常生活の意識レベルでいえば、答えは
  「ノー」じゃ。

水:つまり頭で海のことを考えながら演奏した
  からといって、演奏には影響しないという
  ことですね。

寿:いかにも。

水:では、どういうときに答えが「イエス」に
  なるんでしょうか?

寿:もっと深い意識レベルにおいてじゃニャ。

水:不快な意識ですか?

寿:不快ではニャい、「深い」じゃ! まじめ
  にやらんと教えんぞ。

水:すみません、なにか無理やりにでもギャグ
  をやりたい体質なもので...。

寿:まず、あらためて確認しておきたいのは、
  人間は他者と「意識場」を共有しうるとい
  う事実じゃ。他人と自分はまったく別の意
  識を持っているようでありながら、時とし
  て同じ意識場を共有することが経験的に知
  られておる。

水:だからある特定の条件が整ったとき、人間
  の意識は「共鳴」現象を起こすんでした。

寿:その通り。わかりやすくいうと、複数の人
  間が、実際にはそこにないものを「現実」
  として見たり「印象」として感じたりする
  のは、十分に起こりうることニャんじゃ。
  このとき脳はどうなっていると思う?

水:オウ、ノー!

寿:(むっとして)吾輩は帰るぞ!

水:あ、やだなあ、罪のないギャグじゃありま
  せんか。老師も人間が、というか猫ができ
  ているわりに短気なんだから。

寿:(気をとりなおして)共鳴現象が起きてい
  るとき、各人の脳内の情報はみな似た状態
  になっていると考えられるのじゃよ。

水:へえ、なるほど〜。

寿:そしてその脳内状態に強い実感(リアリ
  ティ)を感じた場合、人間の脳はそれを
  現実と区別することが難しくなることが知
  られておる。

水:軍隊やカルトの洗脳って、そうやるんじゃ
  ないですかね。

寿:その通りじゃ。政治や広告における情報操
  作も、これらの人間心理に関する知識を
  ベースに立案・実施されていると考えるべ
  きじゃろうニャ。

水:で、それと海のイメージはどうつながるん
  ですか?

寿:本当にニブイやつじゃニャ。ここまで説明
  すれば答えを言ったのも同じじゃろう。

水:すみません、飲み込みが遅いもんで...。

寿:たとえば演奏家が海のイメージをものすご
  く強く、深く、大きく、たくましく描き、
  あたかも自分が海そのものであるかのよう
  に感じながら演奏した場合はどうなると思
  うかニャ?

水:ははあ、前号でやった「強い意識」ってや
  つですね。

寿:お、少しは覚えておるようじゃニャ。

水:強い意識を持っている者に、弱い意識の者
  は共鳴してしまうんでしたよね。

寿:そうじゃ。その強烈な意識状態が周囲の人
  間の意識場に影響を及ぼすため共鳴現象を
  引き起こす可能性が高まるのじゃ。

水:だとすると、その場にいる聴衆は、演奏者
  が描くリアルな海のイメージを脳内情報と
  して共有し、そこに海を感じることになる
  わけですね。

寿:ところがおもしろいことに、聴衆はそれを
  自覚するとは限らないのじゃ。

水:え? 自覚しない?

寿:潜在下ではたしかに海のイメージを共有し
  て、それに強く影響を受けているにもかか
  わらず、顕在意識でそれを自覚しないケー
  スが多いのじゃ。

水:するとどうなります?

寿:こういう場合は、海を感じるというより、
  「えもいわれぬ迫力」とか「不思議な感
  動」を覚えることになる。もちろんはっき
  り自覚的に海を感じる場合もあるじゃろう
  がニャ。

水:ということは、海を思い描くといっても、
  頭でイメージを浮かべる程度ではダメで、
  全心身で海をリアルに感じる必要があると
  いうことでしょうか。

寿:うむ。能楽の世界では、このような現象に
  早くから気づいていて、それを技芸の訓練
  体系に取り入れていたようじゃ。また、舞
  踊や演劇などの舞台芸術でも、明示的か暗
  示的かを問わず、さまざまな表現技術の一
  部として研究され、ノウハウが蓄積されて
  きたと考えられるニャ。

水:音楽の世界にはないんですか?

寿:すぐれた演奏家が個人的な技術としてこの
  テクニックを使用していたのは間違いない
  じゃろうが、それが体系的ノウハウとして
  伝わっているかどうか...。

水:では「ねこ気功」は、音楽表現における意
  識操作体系化のさきがけとなるんですか?

寿:さきがけかどうかはともかく、微力ながら
  お手伝いさせてもらおうかニャ。次回はい
  よいよ「上意識」「下意識」の話に入るの
  で、しっかりニャ。

水:はい!

(つづく)

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***


第7回【上意識と下意識】

2008年5月24日発行 Vol.07

吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼
んで寿限無老師。きみは自分の心をどれくらい
理解しているか。自分の心をコントロールでき
ると思うかニャ? 今回は「上意識」「下意
識」の話をするぞよ。


水:前回、演奏者が強烈に「海」のイメージを
  思い描いた場合、鑑賞者は「潜在下で」そ
  れを共有し、強く影響を受けるとうかがい
  ました。

寿:うむ。そしてほとんどの場合、鑑賞者はそ
  の「共有」を自覚しないとニャ。

水:そのあたり、もう少しくわしく説明してい
  ただけませんか?

寿:よかろう。まず、人間は、というかこの世
  のすべての存在はじゃが、もともと「意識
  場」を共有しておることを理解しなくては
  ならんぞ。

水:ちょ、ちょっと待ってください。人間以外
  にも「意識」があるんですか!?

寿:もちろんじゃ。吾輩は猫じゃが意識がない
  と思うかニャ?

水:老師は別ですよ。でも、石ころとか自動車
  とか、そういうものにも意識があるんです
  か?

寿:うむ、たしかにある。しかしここではそれ
  に深入りせず、とりあえず人間の意識につ
  いてのみ語ろう。あらゆる人間は、意識の
  場、つまり「意識場」をもともと共有して
  生きておる。だからこそ共鳴という現象が
  起きるのじゃ。

水:え〜と、よくわかりませんが...。

寿:ここで上意識と下意識について話さねばな
  らんじゃろうニャ。

水:ジョウイシキ、カイシキですか?

寿:これもねこ気功の専門用語じゃ。一般には
  顕在意識と潜在意識と呼ばれているものに
  似ておる。

水:ああ、それなら知ってます。ねこ気功の
  「上意識」「下意識」は何が違うんです
  か?

寿:ねこ気功でいう上意識とは、いま現在自分
  が自覚している情報のことじゃ。たとえば
  きみは吾輩の言葉を上意識で処理している
  が、まわりの空気の温度や湿度については
  まったく関心を向けていないじゃろう?

水:あ、たしかにそうですね。

寿:空気の温度・湿度は、感覚情報としてはき
  みの皮膚からたしかに入力されておる。し
  かし、きみはその情報を自覚していない。
  そういう情報は、きみの下意識にあるわけ
  じゃニャ。

水:なるほど。でも、そうすると上意識の情報
  というのは少ないし、下意識には膨大な情
  報があるということになりませんか?

寿:その通りじゃ! よいところに気づいた。
  いい子いい子してやるぞニャ。

水:えへへ...。

寿:少なく見積もっても、上意識と下意識の情
  報量の比率は「1:100万」くらいになると
  いわれておる。

水:ええ〜! 1:100万ですか? ということ
  は、私たちはすごく狭い情報世界で生きて
  いるわけですね。

寿:いかにも。実際その通りニャんじゃ。人間
  は、まわりのことも自分のことも、ほとん
  どなにもわかっていないのじゃよ。

水:たとえていえば、真っ暗な部屋をライトで
  照らしているような感じですかね。光のあ
  たっているところが上意識で、部屋の暗い
  ところが下意識...。

寿:なかなかよいたとえじゃ。しかし、それで
  もまだ不十分じゃろうニャ。下意識がアマ
  ゾンの大密林で、上意識が小さな豆電球く
  らいのスケールで考えたほうがいいぞ。

水:ひぇ〜〜! 私たちの意識って、そんなに
  狭いところしかとらえてないんですか!

寿:じゃから、いろんな宗教で「まず汝を知
  れ」と教えるんじゃないかニャ? 

水:で、それが意識場の共有とどう関係するん
  ですか?

寿:下意識というのはとてつもなく広い情報世
  界だと考えればよい。そして、それは底の
  ほうでつながっておる。

水:は? なにがつながっているんです?

寿:全人類の意識同士がじゃよ。

水:あ、それって、ユングのいう集合的無意識
  というやつですか? 

寿:まあ、そのようなものと考えてよいじゃろ
  う。細かい点では異なるかもしれんがな。

水:つまり、人間は別々に存在しているように
  見えるけれども、意識の深いところではつ
  ながっている、ということですね。

寿:そうじゃ。その「下意識のつながり」が意
  識場の共有を支えているわけじゃニャ。

水:ははあ、上意識と下意識の関係が1:100万
  なので、上意識は下意識で起きていること
  がわからない。だから意識は「つながって
  ない」ように感じるわけですね。

寿:そういうことじゃ。

水:う〜む。

寿:で、じゃニャ。その「誤解に満ちた」上意
  識を少し休ませた状態がハイファイ意識
  ニャんじゃよ。「ハイファイ」は高忠実度
  じゃろ? 自分の心の「あるがまま」をよ
  り忠実に再現する意識状態がハイファイ意
  識じゃ。

水:はあ、なるほど〜。

寿:主客転倒の話を覚えておるかニャ?「主」
  が上意識、「客」が下意識だと考えればわ
  かりやすいじゃろう。

水:そうすると、ハイファイ意識を作るとは、
  上意識を消すことですか?

寿:ハイファイ意識もある段階までは上意識主
  導じゃ。しかし主客が転倒することで、ハ
  イファイ度がぐっと深まる、つまり「視界
  が晴れる」のじゃ。

水:するとどうなります?

寿:演奏者も鑑賞者もともにハイファイ意識と
  なった場合、共鳴現象のインパクトは強く
  なるといえるニャ。

水:あ、なるほど。上意識がジャマをしないの
  で、ダイレクトに下意識同士で情報を共有
  するということですね。

寿:サエとるのう。そういうことじゃ。

水:てへ☆

寿:これが梅若氏のいう「手順四:身体が表現
  体として語り始める」じゃろう。

水:つまり能楽師は、動きとして舞ったり言葉
  を発するほかに、別のメッセージを下意識
  で発しているのですね。

寿:うむ。そして鑑賞者の下意識とメッセージ
  の交換をしておる。それは能だけでなく、
  ほかの舞台芸術も同じじゃ。

水:え〜と、老師、ここまでいろんな話を習っ
  てきましたが、ちょっと頭が混乱している
  んですが...。

寿:ニャはは。たしかに情報量が多かったかも
  しれんニャ。では、次回は情報を整理して
  実践的な応用法を伝授しようかニャ。

水:いよ、待ってました!おもしろくなってき
  たぞ〜!!

寿:では吾輩は...

水:あ、また、おネエちゃんですか?!

寿:ニャはは、むにゃむにゃ。ニャ〜ん♪
  
(つづく)



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第8回【快眠☆ねこ気功】

2008年8月23日発行 Vol.08 

吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで
寿限無老師。このたび「ねこ気功」のブックCDが
リリースされたニャ。眠りとめざめの中間にある
「まどろみ」から気功を体験しようというファン
タジー仕立てのユニークなアプローチじゃ。


水:これまで、音楽家のための意識操作法をいろ
  いろと教えていただきましたが...

寿:が、ニャんじゃ?

水:正直言って、情報量が多すぎて混乱している
  んです...。

寿:ニャはは、きみには少し難しかったかもしれ
  んニャ。

水:で、老師の監修のもと、私なりに理解したこ
  とをまとめ、ブックCDとして出版させていた
  だきました。

【快眠☆ねこ気功ブックCD】

寿:うむ。ニャかニャか親しいやすいものに仕上
  がったと思うぞよ。

水:で、ですね、出版を記念して、このブックCD
  の解説などお願いしたいのですが。正直言って、
  まだ消化不良なもんで...。

寿:おお、よかろう。あれは誰にでも手軽に取り組
  めるシンプルな体裁になっておるが、内容的に
  はかなり高度なものじゃからニャ。

水:まずは、睡眠と瞑想について教えていただけま
  すか。睡眠と瞑想って同じなんですか?

寿:連載第二回で「ねこじかん」というのをやった
  じゃろう?

水:のんびりすることですね。

寿:ねこじかんは、ねこ気功のスタート。まずは思
  いっきりのんびりすることが大事じゃニャ。現
  代人は心身ともに大きなストレスの中で生きて
  おるから、のんびりしたくてもなかなかできニャ
  いんじゃよ。

水:たしかにそうですね。いつも神経が高ぶってい
  る。だから不眠に苦しむ人も多いようです。

寿:セカセカとした日常意識を休めて、のんびりと
  「ねこじかん」を体感する。ところが、これは
  まだ「仮性ねこじかん」じゃ。

水:仮性? 仮性近視みたいですね。

寿:ニャはは、まあそんなもんじゃ。ほんもののね
  こじかんではニャいから仮性じゃ。

水:ほんもののねこじかんって?

寿:うむ、ほんものの、つまり「真性ねこじかん」
  こそがメディテーション、つまり瞑想状態じゃ。
  一般の気功ではこれを「入静(にゅうせい)」
  とも言うがニャ。

水:はあ。でも、眠ってしまったら瞑想にはならな
  いんじゃないですか?

寿:その通りじゃ! いいところに気がついた。ホ
  メてやるぞ、ニャゴニャゴ。

水:てへへ...。

寿:座禅でもヨーガでも、あるいは気功でも、瞑想
  する者を苦しめるのが「睡魔」じゃ。

水:そうですよね。すぐに眠くなりますものね。

寿:仮性ねこじかんから真性ねこじかんへうまく入
  れればいいが、多くの場合、睡眠のほうへ行っ
  てしまう。日常意識から仮性ねこじかんを経て、
  瞑想と睡眠に枝分かれするんじゃニャ。この分
  かれ道を「瞑睡分岐点」と呼ぼう。(図参照)

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水:ブックCDでは、めざめと眠りの境界にある「ま
  どろみ」を手がかりにするとのことでしたよね。

寿:そうじゃ。仮性ねこじかんを経て、瞑睡分岐点
  へいたる手前あたりが「まどろみ」じゃ。寝て
  はいない、しかし起きてもいない、意識ははっ
  きりしているが、きわめて受動性の強い状態じゃ。

水:この「まどろみ」を利用して瞑想状態へ入ろう
  ということですか。ただですね、「快眠☆ねこ
  気功」というタイトルからすると、睡眠のほう
  へ行くのが目的のようにも感じられるんですが。

寿:そこじゃよ! 瞑想しようとする時みんなが悩
  まされる眠気を逆手にとるわけじゃニャ。眠り
  たい人はぐっすり眠る、眠れない人はすっきり
  瞑想に向かう、ということを狙ったんじゃ。

水:ははあ、なるほど! どっちに転んでも得るも
  のがあるということですね。

寿:しかも、このブックCDには、もうひとつの仕掛
  けがしてあるぞ。

水:といいますと?

寿:それはファンタジーじゃ。「きゃたりうむ」とい
  う仮想の街が舞台ニャんじゃよ。

水:どういうことですか?

寿:ファンタジーというのは、現実と空想の境界と言っ
  ていい。

水:え、100%の空想じゃないんですか?

寿:すぐれたファンタジーは、荒唐無稽な話のようで
  いて、どこかリアリティがあるもんじゃ。ただの
  デタラメに人は興味を覚えニャいんじゃよ。

水:たしかにそうですね。

寿:めざめのような眠りのような、現実のような空想
  のような世界へリードされることによって、気功
  的な意識操作がスムーズにできるようになるんじゃ
  よ。そもそも気功とは、身体と心の境界領域への
  アプローチじゃ。

水:それは、え〜と、たとえば身体を上下に貫く「芯」
  とかのことですか? (連載第五回参照)

寿:お、なかなかサエとるのう。その通りじゃ。

水:考えてみると、「身体の芯」って、実際の器官で
  はないし、ただのイメージでもない。身体と心の
  中間にある感じですものね。

寿:下腹部にあるといわれる「丹田」や、ヨーガでい
  う「チャクラ」「ナーディ」なども、身体と心の
  中間領域と考えられるニャ。

水:心身の中間にある「芯」を感じたり、操作したり
  するのが気功というわけですか?

寿:「芯」だけでなく、そもそも「気」という概念も
  心身の境界にあるのじゃ。多くの流派で、身体を
  水のように、あるいは液体のように感じることを
  練習する。ねこ気功でも「ねこだれ(連載第二回
  参照)」といって、やはり身体の液体性を引き出
  そうとするじゃろ?

水:たしかに、身体だけじゃなくて、心も液体になろ
  うとしますよね。

寿:そうじゃ。このように「心身の境界」へアプロー
  チするワークの集積が気功ニャんじゃよ。

水:意識操作と身体操作を同時にやるわけですね。

寿:その通り。そこに呼吸操作も加えながら効果を高
  めるんじゃニャ。

水:なるほど、なるほど!

寿:ブックCDに収録されている「パジャマで出かける
  呼吸旅行」という歌は、そのままねこ気功の呼吸
  トレーニングに使えるぞよ。

水:重宝してますよ。歌声にあわせて、短い呼吸から
  長い呼吸へ誘導され、また短い呼吸に戻ってくる。
  不思議なトリップ感覚ですよね。

寿:ユキイナバさんの透明な歌声、オーシャン小林さ
  んのスケールの大きなシンセサイザー演奏、そし
  て皆川美保子さんの神秘的なイラスト。

水:そして、アタクシのシブい声! 

寿:これ、修行中の身で調子に乗るんじゃニャい。

水:失礼しました...。ところで、ちょっとうかがいた
  いんですけど。

寿:ニャんじゃ?

水:このCDを聞いていると、最初の10分くらいでもの
  すごく眠くなるんです。

寿:そうなるように作ったからニャ。

水:ところが「レトロ自転車」という歌が始まって、
  自転車のベルでハッと目がさめちゃうんですよ。

【註】快眠☆ねこ気功ブックCDには以下の内容が収録
 されている。
1.快眠☆ねこ気功四つの特徴
2.背骨に感謝します
3.ゆったり揺らします
4.いざ、きゃたりうむへ
5.レトロ自転車(歌)
6.パジャマで出かける呼吸旅行(歌)
7.きゃたりうむ幻想曲第一番(演奏)

【快眠☆ねこ気功ブックCD】

寿:それがどうしたのかニャ?

水:いえ、せっかく眠りに入ろうかというところで起
  こされないほうがいいなと...

寿:ニャはは。そこには深い計算があるんじゃ。さき
  ほどから吾輩が「境界」という言葉を何度も使っ
  たのに気づいておるかニャ?

水:ええ、めざめと眠りの境界、現実と空想の境界、
  身体と心の境界、ですよね?

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寿:CDの最初の10分くらいで、まどろみから瞑睡分岐
  点を超えて、さっさと眠りに行ってしまうときもあ
  るじゃろ?

水:ええ、眠いときなんかそうですね...、あ! わかっ
  た!! そのまま深い眠りに行ってしまわないよう
  にベル音でわざと目をさまさせてるんですか?! 
  つまり、めざめと眠りの境界に、いつまでも漂って
  いられるように。

寿:その通り。「レトロ自転車」がアップテンポの曲に
  なっているのもそのためじゃ。さらに、このCDに
  は気功瞑想への導入、夜の熟眠への導入以外に、第
  三の使い方がある。

水:え? なんですか?

寿:良質な仮眠じゃ。

水:仮眠って、お昼寝とか?

寿:そうじゃ。10分〜15分程度の午睡は午後の仕事の能
  率を上げると言われておる。ブックCDをかけて昼寝
  をする。最初のリードメッセージで軽く眠る。そし
  て「レトロ自転車」のベルからにぎやかな歌が始ま
  る。

水:なるほど、それがめざまし時計代わりになるんだ!

寿:いずれにしても、このコンパクトなパッケージには、
  ねこ気功のエッセンスが凝縮されておる。

水:ねこ気功はエコロジーとも関係あるとうかがいまし
  たが?

寿:うむ。「ベッドで始める体内エコロジー」というん
  じゃが、その話はまたの機会に。では、吾輩もブッ
  クCDを聞きながら...

水:あ〜、また寝ようとしてる! ちょっと老師! 
  「ねこ気功はエコ気功」なんですよね? それって
  どういう意味なんですか? ねえ教えてください
  よ〜!

寿:ニャはは、またニャ〜☆ ZZZzzz... 

(つづく)


【快眠☆ねこ気功ブックCD】




***


第9回【空気を変える】

2008年11月24日発行 Vol.09 


吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで
寿限無老師。コンサートにおいて、演奏者が聴衆
の心をつかむには、その場の「空気を変える」必
要がある。今回はそんな話じゃ。




水:「KY」という言葉が使われる機会が多いですね。

寿:空気(K)が読めない(Y)人のことかニャ?

水:「空気読め!」という意味で、
  耳元で「KY」とささやくこともあるようです。

寿:日本社会はもともと空気を読むことを重視してきた
  ニャ。阿吽(あうん)の呼吸という言葉もある。

水:察し合いは美徳であり、さらに高度なものとして
  「腹芸」という文化も生みましたよね。

寿:しかしこの傾向がネガティブな面であらわれると
  「内向きの論理」「談合体質」「もたれ合い」
  「無責任体制」「凡庸」「事なかれ主義」など、
  窮屈で息の詰まるような社会状況にもつながる
  ニャ。

水:「付和雷同(ふわらいどう)」もそうですね。自分
  の意見を持たないで、まわりの言動につられて行動
  したり、深く考えることなく、簡単に同調すること
  とか。

寿:「KYプレッシャー」が個人の生き生きとした活動
  を制約してしまうんじゃろうニャ。

水:アップルコンピュータの「Think Different」とか、
  落合博満の「オレ流」、岡本太郎の「四方八方に生
  きる」などの言葉は、空気を読みつつ空気に負けな
  い強さが感じられますよね。

寿:状況を敏感に察知しつつ、その状況にとらわれない
  というのは、かなり高度な意識操作じゃニャ。

水:ねこ気功を学ぶとそんな境地に至れるんでしょう
  か?

寿:まじめにトレーニングを続ければ、という条件付き
  じゃがニャ。

水:おお、それは楽しみですね。

寿:ところで、KYは環境問題とも関わっているのに気づ
  いておるかニャ?

水:え、環境問題ですか?

寿:うむ。空気ばかりを気にしているうちに、みんなが
  欲しがるものを自分も手に入れることでしか豊かさ
  を感じられなくなる。それが環境破壊に一役買って
  おるんじゃよ。

水:う〜ん、よくわかりませんが。

寿:本来、人間はみな好みが違う。みんなが同じものを
  欲しがるのは、じつは不自然なことニャんじゃ。

水:はあ...、それが環境破壊とどうつながりますか?

寿:みなが自分の価値観を大切にし、「自分独自の豊か
  さ」を追求するとどうなると思う?

水:う〜ん、競争がなくなる、もしくは大幅に減るよう
  な気がします。

寿:ほほう、よいところに気づいた。そうじゃ、ひとつ
  のモノをみんなで取り合うから争いごとが起きると
  いうことじゃニャ。そこには資源は有限であるとい
  う前提がある。

水:パイを取り合うという考え方ですね。

寿:うむ。しかし、ある者はパイを望み、別の者はライ
  ス(米)を望んだ場合、取り合いにはならんじゃろ
  う?

水:なるほど、パイそのものが大きくなったのと同じ計
  算ですね。

寿:ねこ気功は、人間(吾輩の場合は猫じゃが)と天つ
  まり宇宙の関係、および人間と地つまり地球の関係
  を改善することが目的じゃ。

水:いわゆる「天地人」という考え方ですね。

寿:他人が欲しがるものを争って自分も得ようとするの
  は「人人人」の関係しか眼中にないことになるニャ。

水:はあ。

寿:天地の豊かさは無限であるという前提で考えるなら、
  人は他者と競うのではなく、天地から競い合うこと
  なく恵みを受けることができるはずじゃろ?

水:えー、日常生活とあまりにかけ離れた価値観なので
  戸惑ってますが...。

寿:もちろんこれは理屈なので、現実の世界とのギャッ
  プはある。しかし、他人と異なるものを求めること
  で、パイそのものを広げることは可能だとは思わん
  かニャ?

水:それはたしかにそうですね。

寿:豊かさは、競争に勝利することで得られるものでは
  なく、競争を超越することで得られる。それが天地
  人のルールなんじゃよ。

水:うわあ、壮大な話ですね。私にはついていけない世
  界です。

寿:このような考え方が広まれば、環境に対する負荷は
  格段に減るのじゃが、その話はまた機会をあらため
  よう。

水:お願いします。話をKYに戻してもらっていいです
  か?

寿:うむ。ここでは空気を「読む」よりもそれを「変え
  る」ことを考えてみようじゃニャいか。

水:空気を変える、ですか?

寿:空気を読むこと自体は悪くニャい、というよりすぐ
  れた能力じゃ。

水:ですよね。

寿:ただ、その空気に流されてしまうのは心の弱さじゃ
  ニャ。

水:う〜ん、耳の痛い話です...。

寿:第五回対談(2007年vol.05)で「巨大な芯の意識」
  の話をしたじゃろう?

水:自分の身体を貫く大きくて強い芯を感じることで、
  周囲の人間に影響を与えるということですね。

寿:そのような芯を常に感じられる人は、まわりの空
  気に流されることはニャいんじゃ。

水:文字通り「一本筋が通った人」ということになる
  のかな。

寿:そのうえで、今度は周りの空気を変えて行くの
  じゃ。

水:はあ、どうすればいいんです?

寿:コンサートに行ったとき、第一部よりも第二部の
  ほうが盛り上がるのを経験したことがあるか
  ニャ?

水:あ、それはよくありますね。演奏者も聴衆も、最
  初はどうしても緊張しているというか、冷えてい
  るというか。

寿:つまりステージも客席も、まだ準備ができていな
  い。これを「場ができていない」と呼ぼう。

水:「場」ですか...。

寿:日常モードの「空気」に負けている状態とも言え
  るニャ。

水:でも、いわゆるスターはいきなり自分の「場」を
  作ってしまいますよね?

寿:そこじゃよ!

水:はあ...。

寿:スターがスターたりうるのは、その部分の差が大
  きいんじゃ。

水:どういうことです?

寿:すぐれた舞台芸術家は、それは能楽師でも、俳優
  でも、ダンサーでも、ミュージシャンでも、とに
  かく自分の「場作り」がうまい。

水:場作り?

寿:力のあるアーティストは、まず自分の場を作るの
  じゃ。それをどこに作るかというと、最初は自分
  の意識の中にじゃニャ。

水:え〜と、場って実際には何なんですか?

寿:ある特定の心身の状態と、今は理解すればよいじゃ
  ろう。

水:つまり、自分の心身に「演奏の場」なるものを空想
  するということですかね?

寿:ふつうの感覚で言えばたしかに「空想」と表現でき
  るじゃろう。しかし名プレイヤーの場合は、一般人
  がなんとなく空想するのとはレベルが違うんじゃよ。

水:ああ、あたかも現実のようにリアルに思い描くわけ
  ですね。

寿:その通りじゃ。そしてその「場」が本物の現実と同
  じくらい確固たるレベルに達すると、周囲の人間の
  意識場と「共鳴」が始まる。

水:あ、それも第四回対談(2007年vol.04)に習いまし
  たね。

寿:覚えておったか! いいぞ。

水:つまり、いわゆる「空気」というのは、その場にい
  る人たちの意識場のことと考えていいんですか?

寿:ま、おおざっぱに表現すればそういうことになる
  じゃろうニャ。「空気を読め=KY」というのは、
  意識場の状態を感知せよというのに近い。とは
  言っても、ずいぶん次元の低い話ではあるがニャ。

水:しっかりした意志や考えを持っていない人たちが集
  まるところでは、ちょっとした刺激でワーッと間
  違った方向に流されてしまう。これはよくない意識
  場に染まるということでしょうか。

寿:そのように考えてよいじゃろう。意識場の状態が不
  安定ニャんじゃ。そういうところでは、あまり敏感
  に空気を読まないほうがいい。というか、自分の意
  識場が確立していない段階では、いたずらに空気を
  読むこと自体を慎むべきじゃろうニャ。

水:では、周囲の情報を遮断して、ひたすら自分のカラ
  にこもるとか?

寿:ニャはは。それではただの鈍感なヤツじゃよ。

水:では、どうすればいいんです?

寿:空気を鋭敏に読みつつ、空気に負けない強さを獲得
  するためには、外柔芯剛の心身を作る必要がある。

水:ガイジュウシンゴウ?

寿:文字通り、外が柔らかく、芯がしっかりしているこ
  とじゃ。

水:それは空想をリアルに思い描く、つまり想像力を豊
  かにするということとは違うんですか?

寿:それもあるが、最初の段階では身体の外柔芯剛を中
  心に学ぶ。そしてトレーニングが進むにつれて、心
  の外柔芯剛となってくるのじゃ。

水:身体と心の感度を磨くと考えればいいのかな。

寿:うむ。一流のアーティストは、その場で起きている
  ことは誰よりも深く感知しているものじゃ。しかし、
  それとは別の世界に自分の主体を置き、あたかもア
  ウトサイダー(部外者)のように現場を見る目も持
  つ。

水:ひええ〜! 高度な話ですね!

寿:そのように二つの視点を同時に体現するのが外柔芯
  剛の世界じゃ。

水:教えていただけますか、その外柔芯剛を。

寿:では次回からとりかかろうかニャ。

(つづく)

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***


【第10回:万物は情報でできている】

2009年1月23日発行 Vol.10 


吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで
寿限無老師。身体の外は柔らかく、芯は強靭に。
そういう身体を開発すると、精神にも影響が及ぶ
のじゃ。自分に不都合なことはやんわり受け止め
て、しかし意志を曲げない。「空気に流されな
い」強さを身につけるというわけじゃニャ。


水:老師、気功にはたくさんの流派がありますよね?

寿:数え方にもよるが、数千流派あるといわれておるニャ。

水:そんな中で、ねこ気功という新しい流派を立ち上げる
  意味はあるんですか?

寿:質問の意図がよくわからんが?

水:この世に正解がひとつなら流派もひとつでいいんじゃ
  ないかと思うんです。

寿:ケン・ウィルバーを知っておるかニャ?

水:えーと、アメリカの現代思想家でしたっけ?

寿:うむ。ウィルバーによれば、あらゆる視点はかならず
  何らかの真実を含むという。

水:はあ...。

寿:逆にいえば、あらゆる視点はかならず間違いも含んで
  おるのじゃ。

水:どうしてですか?

寿:たとえば遠くを見るとき、近くのものは見えにくいじゃ
  ろ?

水:たしかに。

寿:同様に、全体像を見ようとすれば詳細な部分が見えにく
  い。右側から見れば左側が見えにくい、という現象が生
  じるニャ。

水:なるほど、正解はひとつでも視点は無数にあるのか!

寿:どこかに焦点をしぼることで、それ以外の部分が盲点に
  なりうる。人間の認識とはそのようなものニャんじゃ
  よ。

水:だからいろんな流派が必要なんですね。いろんな角度か
  ら、いろんなスケールで、いろんなアプローチをするた
  めに。

寿:そういうことじゃニャ。気功は健康体操のように見える
  かもしれんが、そうではニャい。宇宙の構造を直接体験
  するのが気功ニャんじゃ。

水:うわ、こりゃまたスケールの大きな話だ。宇宙みたいに
  大きなものを体験するなら、本当にいろんな視点が必要
  でしょうね。

寿:ここでいう「宇宙」には、人間も含まれる。動物や植物
  や鉱物も含まれる。液体や気体も含まれる。森羅万象あ
  らゆるものの総体、それを宇宙と呼んでおる。

水:じゃあ「世界」といってもいいですね。

寿:その通り。しかもそこには、想念や気分や記憶なども含
  まれる。

水:え〜!? 

寿:ニャはは、驚いたかニャ? この宇宙はつきつめれば
  「情報」で構成されているといってよい。万物の構成要
  素は情報ニャんじゃよ。

水:あの、えーと...。

寿:そのことに昔から気功修行者は気づいておった。気功だ
  けでなく、ヨーガや瞑想などを通じて、この真理に気づ
  いた者は少なくニャい。

水:ちょ、ちょっと待ってください。話についていけてない
  んですが。

寿:ニャはは、いまはニャんとなく聞いておけばよい。この
  世の究極の構成要素である情報のことを、気功では
  「気」と呼んだのじゃ。少なくともねこ気功では「気」
  をその意味で使っておる。

水:気とは情報のことなんですか!

寿:といっても、きみたちが日常使っているのより、もっと
  広く深い意味じゃがニャ。たとえばきみは占いを信じる
  かニャ?

水:星占いとか手相とかですか。まあ信じるような信じない
  ような...。

寿:タロットとか風水とか、ああいうものは当たると思って
  おるか?

水:あまり深く考えたことはありませんけど...

寿:気功的に見れば、占いや予言の類いをインチキと決めつ
  けることはできニャい。そういうものは確かに存在する
  と考えたほうがよい。

水:そうなんですか。てっきり老師はオカルトを否定される
  ものと思っていました。

寿:ウィルバーもいっておるように、あらゆる視点は何らか
  の真実を含むからニャ。

水:あ、そうでしたね。

寿:しかし占いに関していえば、ふたつの留保条件がある。

水:といいますと?

寿:ひとつめの留保条件は、あきらかなインチキやトリック
  もたくさんあるということじゃ。

水:それはそうでしょうね。ちょっとした手品で人を信じ込
  ませることはできますもの。

寿:もうひとつの留保は、たとえそれが「本物」だとして
  も、その影響力は小さいということじゃ。

水:影響力が小さい? じゃあ、厄年とか大殺界とか、あま
  り気にしなくていいんですか?

寿:ねこ気功では運勢と命勢という考え方をするニャ。

水:ウンセイ? メイセイ?

寿:運勢とは、いわゆる運気の流れのことじゃ。占いの多く
  はこれを読み解こうとする。「厄年」も運勢の一種と考
  えればよいじゃろう。

水:そういうものは存在するわけですね。

寿:うむ。しかし運勢よりはるかに大きな影響力を持つのが
  命勢じゃ。

水:これは初めて聞く言葉ですね。

寿:命勢とは自分の心のありようのことじゃ。少し難しく表
  現すると、「心の構造」といってもよい。

水:心の構造ですか...。

寿:そして、運勢と命勢の関係いかんによって、その人の
  「運命」が決まるのじゃ。

水:へえ、そういうことだったんですか!

寿:つまり多少運勢が悪そうに見えても、命勢がしっかりし
  ていればその人の運命は好転しうる。逆に運勢が良くて
  も、命勢が弱ければ、苦難が待ち受けているともいえる
  ニャ。

水:命勢を強くしておけば、運勢をそれほど気に病む必要は
  ないということですね。

寿:たとえば厄年を気にして、ことあるごとに「今年は厄年
  だから」といい続けていれば、かならず厄はおとずれる
  じゃろうニャ。自分で厄を呼び寄せるというか創造して
  しまうのじゃ。

水:その場合、命勢にあたるものはなんですか?

寿:厄を期待する心の構造、それが命勢になるのじゃ。

水:厄を期待する? そんな人いませんよ〜。みんな厄はい
  やですからね。

寿:期待するという言葉は誤解されやすいかもしれん。では
  「厄に関心を向ける心の構造」と言い直そう。

水:はあ、なるほど。関心を向けるとそれが実現する可能性
  が高まるということですね。

寿:前回(vol.09)の話でいえば、空気に流されるのと似て
  おるニャ。

水:厄年に関心を向けすぎるのは、空気ばかり読んでいるの
  と同じということですか?!

寿:ここで、運勢も命勢も情報、つまり気であることを確認
  しておこうかニャ。

水:すると、自分の外側にある情報が運勢で、自分の内側に
  ある情報が命勢になりますね?

寿:ほほう、めずらしく鋭いのう。その通りじゃよ。

水:てへ...。

寿:外的情報つまり運勢は、それ自体では意味を持たニャ
  い。それに意味を与えるのは内的情報つまり命勢ニャん
  じゃ。

水:運勢+命勢がワンセットになって初めて、その体験に
  「意味」が生じるということですね。

寿:ここでいう意味とは、プラスのものばかりではニャい。
  イヤな体験だなと思うことも、つまりそういうネガティ
  ブな意味を与えることも、運勢と命勢の組み合わせの一
  種ニャんじゃ。

水:情報が体験を作るということか...。

寿:まさに情報がその人にとっての「世界」を、つまり「運
  命」を創造するのじゃ。

水:とすると、ねこ気功って、情報操作能力のトレーニング
  なんですか?

寿:すばらしい! それは連載が始まって以来もっともよい
  気づきじゃニャ。最大級にホメてつかわすぞ。よしよ
  し。

水:へへへ、いやあ、まあ、なんというか、あはは...。テレ
  るなあ。

寿:たとえば「外柔芯剛」じゃ。

水:(シャキッとして)身体の外側が柔らかくて、芯が強く
  通っている状態のことですね。

寿:身体の「芯」とは何かといえば、それは情報でしかニャ
  い。

水:たしかに芯という器官はなにもありませんものね。

寿:しかしそれは背骨近辺のあるラインに沿って形成され
  る。「芯」と重心線がピタリと揃うと、理想的な立ち方
  ができるのじゃ。

水:「芯」は情報にすぎないけれども、きちんと位置が決
  まっているし、あたかも実体があるかのような働きをす
  るということですか?

寿:そうじゃ。同時に、身体の外側部分が柔らかい「外柔」
  のほうもまた情報ニャんじゃ。

水:え〜? 筋肉が硬いか柔らかいかは実体の世界じゃない
  んですか?

寿:ここは大事な話なので、段階をふんで説明することが必
  要じゃニャ。

水:お願いします!

寿:初歩的な段階では「実体としての身体」と、「情報とし
  ての身体」を分けて考えたほうがよいじゃろう。

水:情報としての身体って?

寿:さっきの「芯」と同じじゃよ。芯は背骨の近くに形成さ
  れるが、背骨そのものではニャい。情報の身体である芯
  は、実体の身体である背骨と密接に関係しながら存在す
  るのじゃ。

水:同様のことが体表面の筋肉でも起きるということです
  か?

寿:ピンポーン♪ 実体としての筋肉は硬直していても、情
  報としての身体を解きほぐすことは可能ニャンじゃよ。

水:うっひゃ〜、衝撃の事実! なんだか気功の奥義に入っ
  てきた感じがしますね。

寿:「快眠☆ねこ気功」ブックCDの解説をしたvol.08で、吾
  輩は何度も「境界」という言葉を使ったじゃろう?

水:めざめと眠りの境界、現実と空想の境界、身体と心の境
  界ですね。

寿:情報としての身体は、まさに心と身体の境界に存在する
  のじゃ。それは身体でもなく、心でもない。これをねこ
  気功では「境体」と呼んでおる。

水:キョウタイ、境目の身体という意味ですね。

寿:次回は外柔芯剛の実践的トレーニングから、境体コント
  ロールについてくわしく説明するぞよ。

水:うわあ、ものすごく楽しみです。ゾクゾクしてきちゃっ
  た。

(つづく)

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【第11回:空想と現実のグレーゾーン】

2009年5月24日発行 Vol.11


吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで寿限無老
師。ねこ気功の基本「外柔芯剛」。これは身体のトレーニ
ングでもあり、意識のトレーニングでもあり、その中間に
ある「境体」のトレーニングでもあるニャ。


水:今日は外柔芯剛(がいじゅうしんごう)のトレーニン
  グについてですね。

寿:立っている姿勢において、「外柔」と「芯剛」は表裏
  一体の関係になっておる。外が柔らかいほど内側が強
  く、芯が効くほどに体表面はゆるんでくるのじゃ。

水:どうしてそういうことになるんですか?

寿:まず「立つ」という姿勢を維持するためには筋肉を使
  うニャ。

水:重力に逆らうための筋肉ですね。

寿:ところが人によって、あるいは状況によって立つこと
  に使う筋肉は千差万別じゃ。

水:いい立ち方と悪い立ち方があるとか?

寿:もちろんそうじゃが、まずはニュートラルな立ち方に
  ついて理解したほうがよいぞ。

水:ニュートラル?

寿:立つ姿勢を維持するための、ギリギリ最小の筋力で立
  つことじゃ。

水:立つことに必要のない筋肉は一切使わないわけですね。
  とすると、骨を使って立つのかな。

寿:そうじゃ、骨格の構造をうまく使って立つ。そのとき
  必要なのは重力に対抗して骨格を維持するための筋肉。
  それらをミニマムに使うのじゃ。

水:ふんばるためじゃなくて、骨を支えるために筋力を使
  うのか!

寿:それは体表面のアウターマッスルではなく、身体の内
  側、つまり背骨に近い部分にあるインナーマッスルと
  いう筋肉群が使われる。これが「芯剛」の正体じゃ。

水:そのときアウターマッスルを脱力するのが「外柔」と
  いうことですね。

寿:外側の筋肉群を固めて立つのは、筋肉を骨の代わりに
  使うようなもので、たいへんに効率が悪い。体重はで
  きる限り骨で支えるのがよいのじゃよ。そのとき主観
  的には「芯」で立っているような感じがする。これが
  外柔芯剛じゃ。

水:ははあ、外に力が入ればそこに頼って体重を預けてし
  まう、でも外を脱力すれば内に入力せざるを得ないと
  いうことなんだ!

寿:したがって外柔芯剛の練習をする場合、立った姿勢つ
  まり「立位」がもっともわかりやすいので、これが基
  本姿勢となるのじゃよ。

水:寝た姿勢では重力を感じにくいですものね。

寿:座った姿勢でもできなくはないが、やはり立位が一番
  わかりやすいニャ。

水:外柔と芯剛が表裏一体の関係にあるのが、よく理解で
  きました。ではどのようにそれを練習すればいいんで
  すか?

寿:大きく分けて外柔系のトレーニングと芯剛系のトレー
  ニングがあるぞ。

水:外柔系とはどんなものですか?

寿:最初は動きをともなう運動で筋肉をほぐしていく。た
  とえば「ねこばしり」などじゃ。

水:背骨を前後にゆっくりゆらす動作ですね。では芯剛系
  にはどんなのがありますか?

寿:動きをともなうものもある。たとえば「ねこばしり」
  をじっくり長くやると、芯剛系になる。一方、じっと
  重力を感じるような静的ワークも芯を育てるには効果
  的じゃ。

水:身体が液体になって垂れていくとイメージしたりする
  ものですか。

寿:うむ。地球の中心、これをねこ気功では「地節(ちせ
  つ)」と呼んでおるが、そこに向かって液体化した自
  分の身体が流れ落ちていくのを感じる。そしてそのラ
  インが鋼(はがね)のように硬く硬く硬くなっていく
  のを感じる、とかニャ。

水:いわゆるイメージトレーニングですね。

寿:初歩段階ではニャ。

水:え?

寿:最初のうちはただのイメージ操作じゃ。しかしそれを
  「体感」していくのが気功ニャんじゃ。

水:体感...ですか。

寿:イメージを身体で確認すると言ってもよい。

水:そこんとこが、よくわからないんですよ。

寿:順を追って説明しよう。現代人は情報のほとんどを視
  覚もしくは聴覚から得て、それを脳で処理しておる。

水:たしかに目と耳からの情報が中心ですね。ビジュアル
  に理解するか、言語的に理解するかどちらかがほとん
  どだと思います。

寿:「イメージ」というのは、ほとんどの場合視覚的なも
  のじゃろう?

水:あ、たしかにそうですね。色とか形ばかりを思い描い
  ているような気がします。

寿:味覚、嗅覚、触覚などのイメージを持つことは難しい
  と思わんか?

水:う〜ん、やってできないことはありませんけれども、
  あまり慣れていませんね。

寿:視聴覚以外の感覚を「体性感覚」と呼ぶのを知ってお
  るかニャ?

水:聞いたことがあるような、ないような...。

寿:皮膚、筋肉、関節、内臓などの器官から得られる感覚
  のことじゃよ。

水:皮膚が温度や湿度を感じたりするのも体性感覚ですか。

寿:いかにも。温冷感や乾湿感のほかに、痛みや振動、ザ
  ラザラやツルツルなどの質感を感知することも含まれ
  る。

水:内臓の動きも感じることがありますよね。

寿:筋肉の緊張状態や関節の角度なども、よく注意を払え
  ばとらえられるしニャ。

水:へえ〜、すごい。

寿:「身体が液体化する」というのも、視覚イメージだけ
  で思い描くのと、体性感覚で把握するのとではその深
  みがまったく異なる。

水:そりゃそうでしょうね。

寿:視覚情報をもとに頭で描いたイメージがただの「空想」
  だとすれば、体性感覚情報で得た実感は「現実」であ
  るとも言えるニャ。

水:ん〜、そういうことになりますかね...。

寿:さらに厳密に言えば、「空想」と「現実」は白と黒の
  ように二分されるものではなく、その間に無数のグレ
  ーゾーンが存在するのじゃ。

水:ええ〜!? 空想と現実のグレーゾーン?

寿:ニャんじゃ。気功修行者が驚くことはあるまい。たと
  えばずっと話題にしておる「芯」。これは空想か? 
  それとも現実か?

水:実体がないという意味では空想ですが、実感があると
  いう意味では現実、なのかなあ...??

寿:その通りじゃよ。トレーニングが進むにつれて、実感
  が薄い段階から濃い段階へと変化していくじゃろう? 
  これは無数に存在するグレーゾーンを次々に感じてお
  るのじゃよ。

水:はあ...。

寿:このグレーゾンのことを吾輩は「境体(きょうたい)」
  と呼んでおる。

水:その言葉は以前にもうかがいましたよね。心と身体の
  境界に存在する「情報としての身体」でしたっけ。

寿:そうじゃニャ。

水:情報としての身体ってのが、どうもピンとこないんで
  すよね。

寿:体性感覚でとらえた微妙な情報は、ほとんどの場合、
  下意識で処理されておる。

水:カイシキ、というと、連載第七回(2008年5月24日発
  行Vol.07)で習ったやつですね。自覚できている情報
  が上意識で、感覚器に入力されているのに自覚できて
  いない情報が下意識でした。

寿:うむ。そのときにも話したが、下意識では膨大な量の
  情報、その多くが体性感覚情報じゃが、それらが処理
  されておる。上意識にのぼっている情報が小さな豆電
  球で照らせる範囲とするなら、下意識はアマゾンの大
  密林にたとえられるくらい、そのスケールの差は圧倒
  的じゃ。

水:なるほど。膨大な体性感覚情報は私たちの下意識には
  あるけれども、それを通常は自覚していないというこ
  とですね。

寿:その下意識の世界を「自覚的に」探索するのがねこ気
  功のトレーニング体系ニャんじゃよ。

水:老師、そこで話を境体に戻していただいていいですか?

寿:よかろう。上意識には、空想も現実もともに存在する
  ことを確認しておこうニャ。

水:たしかに。どちらも自覚できてますからね。

寿:では、たとえば身体の中心を貫く「芯」は上意識か
  ニャ、それとも下意識かニャ?

水:きちんと自覚できていれば上意識なんだろうけど、そ
  れほど確固たる自覚はないから、下意識なのかなあ。
  う〜ん、よくわかりません。

寿:ここは大事なところなので、ていねいに説明するぞよ。

水:はい。お願いします。

寿:まず外柔芯剛ができていない段階では、芯は上意識に
  はもちろん、下意識にも存在しニャい。

水:それはわかります。芯は実体としても実感としても、
  どこにも存在しないわけですね。

寿:つぎに外柔芯剛のトレーニングを始めた初期段階では、
  芯はただのイメージじゃ。まだ空想の段階と言ってよ
  い。

水:そのときの芯は上意識にあるんですよね。

寿:たしかにイメージとしての芯は上意識にある。しかし
  同時に、体性感覚としての芯もまた下意識に形成され
  始める。

水:上意識にはイメージの芯が、下意識には体性感覚の芯
  が存在すると?

寿:そして外柔芯剛のトレーニングをすることでどんどん
  体性感覚が高まり、背骨まわりの筋肉の緊張状態など、
  それまでは下意識にあった情報が浮かび上がってくる
  のじゃ。

水:浮かび上がってくる?

寿:上意識でもとらえられるようになるということじゃよ。

水:え〜と、もともと空想としての芯が上意識にあって、
  体性感覚情報として下意識にあった芯も上意識へと浮か
  び上がってくるということですか?
 
寿:ピンポ〜ン! 空想としての芯がガイド役となって、実
  感としての芯を呼び寄せるような現象が起きるわけじゃ。

水:それと境体はどう関係しているんですか?

寿:空想にすぎなかった芯のイメージが、体性感覚というた
  しかな実感で確認され、あたかも実体があるかのように
  機能し始める。その舞台になるのが境体ニャんじゃ。

水:境体は舞台なんですか!?

寿:舞台であり役者でもある。つまり、芯は境体の上に存在
  するとも言えるし、芯そのものが境体の一部であるとも
  言えるニャ。

水:背骨は肉体内に存在するけれども、肉体の一部とも言え
  るようなものですね。

寿:まさしくその通りじゃ。

水:境体は身体なんですか、それとも意識?

寿:身体と意識の境界にあるグレーゾーンじゃと言っておろ
  うが。

水:あ、そうか。でも、それは身体じゃなくて、やっぱり意
  識なんじゃないですか? あれ??

寿:ニャはは。境体の話は難しいので、復習しながら少しず
  つ進めていこうニャ。

水:はあ...。

寿:次回はもう少しくわしい話をしよう。まずは「ねこばし
  り」でも練習しニャさい。

水:はい、わかりました!

(つづく)

2.nekouta.jpg


【第12回:随意もない、不随意もない。】



吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで寿限無老
師。体と心の境界にある「境体」について、今回はくわし
く述べるぞよ。まずは随意筋と不随意筋について考えよう
かニャ。


寿:随意筋、不随意筋という言葉を知っておるかニャ?

水:自分の意識で自由に動かすことができる筋肉が随意筋
  で、意識では自由に動かすことができない筋肉が不随
  意筋ですよね。

寿:ふむ。まあ、だいたいそれでよいニャ。

水:身体を動かす骨格筋が随意筋で、心臓とか胃腸の筋肉
  が不随意筋と習いました。

寿:うむ。ここで問題にしたいのは「随意」という言葉
  じゃ。

水:随意は、自分の思うままにという意味じゃないんです
  か?

寿:では尋ねよう。きみは自分の腕や手を「自由に」「思
  うままに」動かせるかニャ?

水:え? それってどの程度の精度の話ですか?

寿:そこじゃよ。では尋ね方を変えよう。きみは自分の腕
  や手をどの程度、何パーセントくらい「自由に」「思
  うままに」動かせるか?

水:え〜と、100%というのは無理ですね。90%くらいか
  な、いや80%? 待てよ...?

寿:ニャはは! もしきみが自分の随意筋を完全に自由に
  動かせて、オリンピックに出れば金メダルは間違い
  ニャいぞ。どんなスポーツでも超一流選手になるじゃ
  ろうしニャ。

水:たしかにそうですね。身体を自由に動かせないからこ
  そトレーニングするんですものね。

寿:では、不随意筋について尋ねるぞ。ヨーガ行者の中に
  は、心臓の鼓動を止めたり、消化管を逆蠕動(ぎゃく
  ぜんどう)させたりする能力を持つ者があるという。
  完全な不随意、つまり0%のコントロールしか及ばな
  い筋肉はあると思うかニャ?

水:これはなんとも言えませんね。少なくとも私は心臓の
  鼓動を止められないし...。

寿:思考実験じゃよ。もし心臓の鼓動を止められる事例が
  見つかった場合、心臓は不随意筋と呼ぶのがふさわし
  いかどうかじゃニャ。

水:う〜ん...。老師がおっしゃりたいのは、完全な随意と
  か、完全な不随意はないということですか?

寿:そうじゃニャ。すべての筋肉はコントロールできる可
  能性があり、ただ比較的動かしやすいものと、とてつ
  もなく動かしにくいものがある、と考えるほうが正確
  ではニャいかということじゃよ。

水:そんなこと解剖生理学で認められますか?

寿:解剖生理学はヨーガのすべてを認めておるかニャ?

水:あ、いや、部分的に認めているだけかな。よくわかり
  ませんけど...。

寿:現在の学説がどうであるかということより、自分の実
  感として考えてみようニャ。きみの利き手はどっち
  じゃ?

水:右利きです。

寿:右手と左手とどちらがコントロールしやすいかニャ?

水:もちろん右手です。利き手ですからね。

寿:右手も左手も、ついているのは随意筋のはずじゃ
  ニャ?

水:そうですね。

寿:しかし、右手と左手には「随意度」の違いがずいぶん
  あるということになるニャ。

水:たしかにそうですね!

寿:では、次に意識について尋ねるぞよ。右手と左手では
  どちらが意識しやすいかニャ?

水:意識ですか? そうですねえ、やっぱり右手のほうが
  意識しやすいかな。より細かい部分まで意識できるよ
  うに思います。

寿:では、手のひらと指先ではどちらが意識しやすい?

水:指先、かなあ...。

寿:手のひらと手の甲ではどうじゃ?

水:手のひらかな???

寿:つまりじゃ、きみの身体の中には、意識しやすい部分
  と意識しにくい部分が存在するということじゃニャ?

水:はい、そういうことになりますね。

寿:そして意識しやすいところは動かしやすく、意識しに
  くいところは動かしにくい。

水:おおむねそうだと思います。

寿:そこまで確認しておいて、横隔膜の話をするぞよ。横
  隔膜は不随意筋であると教えられた時代もあるよう
  じゃが、現在では随意筋と習う。しかし普通に生活し
  ているかぎり横隔膜を意識することはまれじゃろう。

水:呼吸法を習うまでは、横隔膜なんて意識したことあり
  ませんでした。

寿:そうじゃろうニャ。だから今でも、横隔膜は動かせな
  いとか意識できないという説は根強くあるんじゃよ。

水:それは「説」なんですか?

寿:ニャはは。説と言えるかどうかはともかく、そのよう
  に感じる人は少なくニャい。

水:それって、さっきの右手と左手の話と同じなんじゃな
  いですか? よく使うところは意識しやすく動かしや
  すいという。

寿:まったくその通りじゃよ。横隔膜を動かす練習が足り
  なければ、横隔膜の意識は薄いし、コントロールもし
  にくい。しかし練習次第で横隔膜はかなり「随意度」
  が上がってくるんじゃニャ。

水:はあ。

寿:ここで話は「境体(きょうたい)」に移る。

水:身体と心の境界にあるのが境体でしたね。

寿:境体は意識の一種じゃ。しかし身体と密接に関係した
  意識であると言える。したがって、身体でもあり心で
  もあり、心身が渾然一体となったものと考えればよ
  い。

水:横隔膜は身体ですよね。

寿:しかし横隔膜を意識すると言ったとき、それは境体に
  ついて語っておるのじゃ。

水:へ?

寿:わかりやすく説明するなら、きみが意識している横隔
  膜は、肉体としての横隔膜ではなくて、境体としての
  横隔膜、つまり「横隔膜境体」とでも呼ぶべきもの
  ニャんじゃ。

水:うわあ、そうなんですか!

寿:それは身体でもなく心でもない、しかし同時に身体で
  もあり心でもある。

水:うーん、わかったようなわからないような。

寿:ニャはは。たとえばこの対談でもよく登場する「芯」
  について考えてみよう。

水:身体の中央を重心線に沿って上下に貫くラインのこと
  ですよね。

寿:重心線に沿ってというのは、力を抜いて直立した場合
  のことじゃが、まあそういう理解でよいじゃろう。

水:たしかに「芯」は身体の器官ではないし、でもただの
  イメージでもない。たしかな実感を伴って身体上に成
  立する意識ですね。

寿:まさにそれが境体じゃよ。身体と心の中間領域にある
  存在。では、その「芯」を中心として身体を旋回させ
  てごらん。

水:胴体を左右に回す感じですか?

寿:うむ。でんでん太鼓を回転させるようにじゃニャ。

水:(やってみる)
  「芯」が回転軸となって、そのまわりを身体が回って
  いるように感じます。

寿:では今度は、その「芯」を身体の前に出してごらん。
  自分の目の前30cmくらいのところに「芯」があると
  想定する。そしてその「体外の芯」を中心とした回転
  運動をするのじゃ。

水:それはつねに「芯」のほうに顔を向けて、まわりを自
  分がぐるぐる回るわけですね? 
  (やってみる)
  なるほど、できますね。しかも「芯」の存在もくっき
  り感じます。

寿:つまり境体は体外にも形成できるのじゃ。

水:ははあ。器官として実在しない「体外の芯」が意識で
  きるのだから、実在する器官である横隔膜を意識でき
  ないわけがないとおっしゃりたいんですね。

寿:そういう空間構造を「感じる」能力を人間は持ってお
  るのじゃよ。

水:するとトレーニングした人としない人とでは「境体」
  の感じ方がものすごく違うことになりませんか?

寿:その通りじゃ。身体運動の質を決定する最重要の要素
  は、この境体コントロールであると言ってもよい。そ
  して気功とは、境体操作を計画的に行なうための練習
  体系ニャんじゃ。

水:へえ〜! 身体と心の両面に対して境体からアプロー
  チするということですか。

寿:さあ、ねこ気功も徐々に高度な内容になってくるぞ
  よ。楽しみにニャ。

水:はい!

(つづく)

3.shitei.jpg


【第13回:物質世界と意識世界】

2009年10月10日発売 Vol.13

【リード】
吾輩は猫である。名前は、もうある。ヒト呼んで
寿限無老師。これまでに学んできた意識の構造や
テクニックについて、わかりやすく復習するぞ。


水:老師、これまで三年近くにわたって意識操作
  法を教えていただきましたけど、ここらへん
  で復習したいんですが。専門用語がたくさん
  あったのを、結構忘れちゃったんですよ...

寿:ばかもん! 復習くらい自分でやりニャさい
  ...といいたいところじゃが、まあ、よい機会
  じゃろう。これまでとは違った角度から、図
  を使いつつ復習してみようかニャ。

水:さすが老師! 大好き!!

寿:ニャはは。「身体と意識の関係図(1)」を
  見てごらん。

chart1.jpg

水:うわ、なんだか難しいですね。

寿:これはもっとも基本的なものじゃ。この先ど
  んどん図が成長していくので楽しみにしてほ
  しいニャ。

水:とりあえず、いま書いてあることを説明して
  いただけますか?

寿:うむ。図のどのあたりを見ればよいかがすぐ
  わかるように、左端に番号、上端にアルファ
  ベットをふっておいた。これで座標を指定す
  るぞよ。まず、(2,k)あたりの「個人A」を
  見よう。

水:ええと、(2,k)ですね。あ、あった。なる
  ほど、こりゃわかりやすいや。

寿:この太い線で囲まれた四角形は人間を表現す
  る。外側の「皮」が肉体じゃ。その中に感覚
  と意識が含まれておるニャ。

水:「肉体感覚」「上意識」「下意識の一部」と
  書いてありますね。

寿:肉体には感覚がある。いわゆる五感というや
  つじゃニャ。

水:視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚ですね。

寿:じつはそのほかにも、いろんな感覚があると
  考えることができる。

水:どういうことです?

寿:皮膚、筋肉、腱、関節、内臓壁などに含まれ
  る感覚器から得られる情報を、ただ「触覚」
  と呼んだのではあまりにもおおざっぱすぎる
  んじゃニャ。

水:はあ...

寿:皮膚感覚には「触覚」「圧覚」「振動覚」 
  「温覚」「冷覚」「痛覚」などがある。また
  内臓感覚には「伸展覚」や「痛覚」、ほかに
  も深部感覚といって骨格筋の長さや緊張、関
  節の角度などの感覚もあるぞ。

水:ひええ〜! そんなの感じられませんよ。

寿:前回(vol.12)、身体のなかには意識しやす
  いところとそうでないところがあることを説
  明したが、それは結局、これらの繊細な身体
  感覚の情報をキャッチできるかどうかという
  ことにかかっておるのじゃ。

水:練習すればそれらはキャッチできると?

寿:当然じゃニャ。気功とはそういう鍛錬の積み
  重ねでできた体系ニャんじゃよ。

水:「上意識」「下意識」という言葉は、vol.07
  でくわしく教えていただきました。いま自分
  が自覚している情報が上意識で、感覚情報と
  して入力されているのに自覚していない情報
  が下意識でしたね。

寿:しかし下意識にはもっと深い部分が存在する
  のじゃ。それが座標(5,k)から下のあたり
  に書いてある。

水:「感情」「本能」「基本的に下意識」という
  やつですね。(4)のあたりに引いてある横
  線は何を表現しているんですか?

寿:よいところに気がついた。そこが目に見える
  世界(物質世界)と目に見えない世界(意識
  世界)の境界線じゃよ。

水:ははあ、なるほど。(1,g)と(7,g)に説明
  してありますね。

寿:五感など肉体感覚でとらえられる情報につい
  ては、その(4)の線よりも上、つまり物質
  世界のほうに分類しておこう。しかし感情や
  本能のように、自覚したり確認するのが難し
  いものは、線よりも下の意識世界に入れてお
  いたぞよ。

水:でも(4,k)から(6,k)にかけての領域も個
  人Aに属しているということですよね。

寿:当然そうじゃ。きみの「感情」はきみのもの
  じゃろう? 「本能」もしかり。ただ、(4)
  の線より下は「基本的に下意識」にあるので
  存在を確かめるのは難しいがニャ。

水:(3,o)の仮性チャイルドタイム、(6,o)の
  真性チャイルドタイムはvol.08で習いました
  ね。あのときはチャイルドタイムじゃなくて
  「ねこじかん」という用語でしたけど。

寿:うむ、日常の忙しい意識を休めて、のんびり
  した気分になるのが「仮性チャイルドタイム
  (ねこじかん)」、それがだんだん深まって
  うまく瞑想状態に入れると「真性チャイルド
  タイム」となるわけじゃ。

水:SOシフト(4,o)ってなんですか?

寿:Sは主体(subject)、Oは客体(object)
  の略じゃ。SとOが入れ替わる(シフトす
  る)のがSOシフトじゃよ。

水:あ、それはvol.04で習った「主客転倒」のこ
  とですね。

寿:うむ。たとえば「ねこばしり」をするとしよ
  う。最初のうちは「私が背骨を動かす」こと
  になるが、それがある時点から「背骨が私を
  動かす」ような意識状態へ変化する。それが
  SOシフトじゃ。

水:で、そのように「のんびり」「SOシフト」
  しながら「高度な集中」状態にあるとき、こ
  れをハイファイ意識と呼ぶんでした。

寿:ハイファイ意識は(9,k)に書いてあるぞ。

水:仮性チャイルドタイムがSOシフトを経て、
  真性チャイルドタイムとなる。その先にハイ
  ファイ意識という澄み切った世界があるわけ
  ですね。

寿:ハイファイ(高忠実)な意識とは、心が情報
  を忠実に反映すること。つまり与えられた情
  報を「あるがままに」とらえ、ダイレクトに
  反応できる状態のことじゃ。

水:たしかハイファイ意識下では、自分で思い描
  いたイメージなど空想の情報にも「現実味」
  を感じるんでしたね。

寿:その結果、たとえば「悲しみ」を心に描いた
  俳優や音楽家が、全心身でその「空想の悲し
  み」にひたり切るような現象が生じるニャ。

水:つまり普通の「イメージ」は(4)の線より
  も上の物質世界で起きていることだけど、
  すぐれた芸術パフォーマーは(4)より下の
  意識世界で深いイメージ操作を行なっている
  と。

寿:それはもはや「イメージ操作」という言葉が
  適切でないほどの臨場感、現実感のある世界
  と考えたほうがよいぞ。本人にとっては実体
  験とほとんど変わらないからニャ。

水:ところで(4)から下の意識世界は個人の枠
  組みがあいまいですよね。下へ行くほど黒い
  帯がぼんやりしてます。また、(2,k)個人A
  の下意識と(2,s)個人Bの下意識がハイファ
  イ意識のあたりでつながっているようさえに
  見えますが。

寿:ふむ、じつに着眼が鋭い。ほめてやるぞよ。
  よしよし。

水:えへへ...。

寿:これもvol.04で説明したことじゃが「共鳴」
  という現象と関係しておる。共鳴は人間の意
  識が深い部分で共有されていることから生じ
  る。それを表現しているのが、この図の7〜9
  あたりの空白じゃよ。

水:だからハイファイ意識で個人Aが描いた「悲
  しみ」を、個人Bも下意識で共有することが
  起こりうるというわけですか!

寿:その通りじゃ。個人Bの意識状態に「ある条
  件が整ったとき」、共有されたハイファイ意
  識の情報が、個人Bの上意識にまで昇ってく
  る。

水:あ、(t)のあたりに、なにやら薄い矢印が
  下から上へ書いてありますよね。

寿:その話は後日くわしくするが、個人Bの下意
  識にトンネルがあいているのがわかるじゃろ
  う?

水:はい。そのトンネルを矢印が貫いています。

寿:さきほど言った「ある条件が整ったとき」と
  いうのが、このトンネルじゃよ。

水:個人Bの下意識にトンネルが開くと、個人Aの
  ハイファイ意識が共有できるというか、それ
  を自覚できるということですね。

寿:この図では個人Aと個人Bしか登場してないか
  ら、まあそういう理解でよいじゃろう。これ
  は複数の人間のあいだでも起こりうるし、社
  会レベルや世界レベルでも起こると考えてよ
  いのじゃよ。

水:え、ええ〜?!

寿:まあ、そこまで話を広げると混乱するじゃろ
  うから、ひとまずは二人の人間が意識場を共
  有すると考えることにしよう。

水:はい、お願いします。

寿:次回はこの図をさらに「成長」させて、音楽
  家のメンタルトレーニングについて語るぞ。

水:メンタルトレーニングですか! おもしろそ
  うですね。

寿:それは「自分とはだれか」という大きなテー
  マも含んでおる。

水:なんだか哲学的ですね。楽しみです!


(つづく)

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【第14回:自分を責める自分】

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投稿者 kurosaka : 2007年10月12日