ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際音楽プロダクション 〜


GG NEWS

  プレイヤー必見! 2001年春に来日したトランペッ
  ト奏者ジョージ・グラハムの公演レポート。ジョー
  ジの日本ツアー中(4.27〜5.8)、毎日インターネッ
  トで公開した「Daily GG News」の総集編。演奏力向
  上のヒント満載です。


<ジョージ・グラハム日本公演を終えて>
 まず、全国各地の主催者の皆さんにお礼を申し上げた
 い気持ちで一杯です。お世話になりました。

 また、演奏会に足を運んでくださったお客さん、陰で
 支えてくださったスタッフの皆さん、本当にご苦労さ
 までした。

 さらに、今年は、Eメールとウェブサイトでツアーの
 模様を毎日レポートしました。お読みいただいた方々
 に感謝するとともに、アップ作業にご尽力いただいた、
 mizugameさま、兄やんもお疲れさまでした。

 みんな、みんな、ありがとうございました。


<当公演の意義>
 各公演地で申し上げたり、レポートでも書きましたが、
 今回のジョージ・グラハム日本公演は、これまでにな
 い実験的な試みをしています。それは、公演がひとつ
 終わるごとにレポートをまとめ、全国各地の方々へ配
 信し、インターネット上でも公開したことです。

 各地で別々に行っていたイベントを、メールとサイト
 でつなぐ。主催者もお客さんも、ジョージがよその土
 地でどんな公演をしているのか、リアルタイムで知る
 ことができる。こういうコンサートツアーは、今まで
 あまりなかったと思います。

 さらに、このツアーの特徴として、主催者のほとんど
 が、事業家ではなくて音楽家であることがあげられる
 でしょう。各地で活躍するアマチュアバンドが、自分
 たちのコンサートを主催し、そこにゲストとしてジョ
 ージが加わるのです。これによって、いわゆる「興業」
 から「ジャズ教育のためのイベント」へ転換できる。

 しかも、

 1.アーティストのネームバリューに集客を依存する割
  合が低くなり、知名度は低くても本当に内容のよい
  ゲストを呼ぶことができる。
 2.大きな冠協賛や派手な広告宣伝をするのではなく、
  よりキメ細かい販促手法をとって、低予算運営を実
  現できる。
 3.観客の質を高めることができる。「有名な人を見た
  い」という大衆ではなくて、本当に音楽を楽しみた
  い人だけに集まってもらうことができる。

という、新しいスタイルのミニ・ジャズ・フェスティバ
ルがあちこちに発生するのです。「名から実へ」。イベ
ントのあり方もまた、大きなターニング・ポイントを迎
えているようです。

  ミニ・ジャズ・フェスティバルのネットワーク構想
  については、「街にジャズがやってくる」という論
  文を発表しておりますので、ご興味のある方はそち
  らもあわせてご参照ください。

それでは、ジョージ・グラハム日本公演レポートをまと
めてお届けします。お楽しみください。

ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介

<4月27日:関西空港へ到着>
ジョージ・グラハムは、ロサンゼルス発の日本航空69便
で、午後5時19分、関西空港へ到着し、にこやかに登場。
リムジンバスで大阪市内のホテルへ向かいました。

休む間もなく、ホテルの近くにあるグローバル・ジャズ・
オーケストラの練習場で、午後8時30分から10時まで、同
バンドとリハーサル。グローバルとは5月3日に「ロイヤ
ルホース」で共演する予定です。

練習後、新阪急ホテルのレストランで、グローバルのメ
ンバー数名と遅めの夕食。ジョージは箸を使うのが苦手
で、ふかひれ入りラーメンを、フォークで美味しそうに
食べていました。

明日は、徳島へ向かいます。

<4月28日:徳島公演>
午前10:30の高速バスで梅田を出発。神戸、明石海峡大
橋、淡路島、鳴門大橋を経由して徳島へ着いたのが午後
1:00過ぎ。そのままリハーサル会場。

午後1:30から3:00まで、徳島の社会人ビッグバンド「サ
ニーサイド・ジャズ・オーケストラ」と練習。サニーサ
イドは、1998年夏、石川県和倉温泉で開催された「モン
トレー・ジャズ・フェスティバル・イン能登」で演奏。
また、1999年には、本場アメリカの「Monterey Jazz
Festival」にも出演し、満場の喝采を浴びたゴキゲンな
バンドです。

今回のコンサートは、徳島新聞が主催する「はな・はる・
フェスタ」というお祭りへの出演。この祭りは、市内を
流れる新町川一帯に設けられた9つの会場で催されるもの
で、物産展や阿波踊りなど多くのイベントが行われます。

ジョージが出演するのは、「新町川水際公園水上特設ス
テージ」という会場。今日だけで9バンドが演奏し、サ
ニーサイドはそのトリをつとめます。

ジョージは、まず、サニーサイドのコンボと一緒に2曲
演奏。そしてビッグバンドと、以下の曲を共演しました。

1.My Heart Will Go On
2.Scraping the Top of the Barrel
3.Stardust
4.Spain
5.Impressions

徳島新聞社製「阿波おどり」のはっぴを着て、ジョージ
は川辺のステージに、美しい音色を響き渡らせました。
バラードが特に秀逸。なめらかなサウンドに、会場の空
気までしっとりとしたようでした。

終了後、Jazz Cabin 88 というライブハウスで打ち上げ。
日本公演の初日は、大いに盛り上がりました。

明日は、静岡へ向かいます。

<4月29日:静岡公演>
ジョージは現在64歳。競争の激しいロサンゼルスのスタ
ジオでトップの座を維持しつづけてきたジョージですが、
少しずつ「転進」を考えているとか。

ひとつは、作曲やプロデュースの道。そのための場とし
て、Pippo Ave.Records というレーベルを立ち上げ、CD
制作を始めました。ジョージ自身の3枚目のアルバム
「How About Me ?」が、Pippoレーベルからリリースされ
たばかりです。

もうひとつの道は、もっと自分自身を前面に押し出して、
直接、聴衆に訴えかけること。今回の日本公演もその一
環です。また、このツアーが終わって帰国してからは、
自身のクインテットでレコーディングするとか。

さて、ジョージと私は、朝8:30の高速バスで徳島駅前を
出発して、神戸三宮駅へ。ここからタクシーで新神戸駅
へ向かい、新幹線で静岡を目指しました。

午後1:37に静岡へ到着。ホテルへチェックインして1時
間ほど休憩。それから、メディアホールへリハーサルに
向かいました。スイング・ハードとジョージのジョイン
ト曲は以下の通り。

1st Set
1.Peanut Face
2.Tailfeathers
3.The Thomas Crown Affair
4.But Beautiful
5.Scraping the Top of the Barrel

2nd Set
6.Samba Dees Godda Do It
7.My Funny Valentine
8.My Marilyn
9.Stardust
10.Kinda 2 Kinda 3

メディアホールは収容人員350、きれいな音のする会場
です。ジョージの美しいトランペットを響かせるには
ぴったりのホール。客席も早々と埋まり、スイングハー
ドとの共演は和気あいあいとしたムードで始まりました。

今日もジョージのバラードは光っています。心のひだに
染みわたるようなキメの細かい音色、誰の胸にも甘い感
傷を呼びさますロマンチシズム。コンサートが終わって
楽屋を訪ねた女性客が「素敵な演奏でした」とおっしゃ
ってくださいました。そう、「素敵な」という形容がふ
さわしい、実にしみじみとした音楽なのです。

打ち上げは静岡駅前の「魚彩(うおさい)]で。大いに
飲み(ジョージはウーロン茶)、食い、語り、写真を撮
り、楽しい宴でした。

明日は名古屋へ向かいます。

<4月30日:名古屋公演>
  余談ですが・・・

  「ジョージ早口言葉3部作」
   1.ジョージが屏風に上手に坊主の絵を描いた
   2.坊主も屏風に上手にジョージの絵を描いた
   3.ジョージと坊主が屏風に上手にジョージと
    坊主の絵を描いた

静岡駅から新幹線で名古屋へ。ホテルにチェックインし
て、40分ほど休んでリハーサルへ。今日の会場は愛知県
勤労会館という収容人員1500名の大ホール。ホストバン
ドは、レアサウンズ・ジャズ・オーケストラ。

こんな大きなホールで大丈夫かなあと、正直いって不安
だったのですが、1階席はほぼ満席。26年の歴史を誇るレ
アサウンズの動員力に拍手、ですね。

レア単独で1セット目のステージを演奏し、2セット目か
らジョージも加わって、以下の曲を共演。

1.A Gentle Breeze
2.Scraping the Top of the Barrel
3.Carmelo's by the Freeway
4.Kinda 2 Kinda 3
5.Stardust
6.Samba Dees Godda Do It
7.Peanut Face
8.The Preacher

ジョージの音色は、どうしてあんなに透明感があるので
しょう。澄み切った小川のせせらぎを手にすくったよう
な清涼さ。たとえば Stardust などでは、会場の空気が
キラキラ輝くようです。

明日は東京です。

<5月1日:江古田公演>
名古屋を出たジョージと私は、新幹線で東京へ。ホテル
にチェックインして着替えると、すぐにタクシーで江古
田「BUDDY」へ。

今日のホストは、チキン・アンド・ワッフル・ハーレム・
ルネッサンス・ビッグバンド。名前が長いので、メンバ
ーは「ちきわほ」と略称で呼んでいます。

「ちきわほ」は、国際基督教大学(ICU)ビッグバンド
のOBが結成したグループ。「ちきわほ」とのリハーサル
は、笑いのあふれる、楽しい雰囲気で行われました。

徳島=野外、静岡=ホール、名古屋=ホールと続いて、
今日の会場は、客席数100ほどのライブハウス。ジョー
ジの音は、これまでより野性味を帯びているように聞こ
えます。

午後6:30の開場からどんどんお客さんが入り始め、開演
時刻には、立ち見続出のフルハウス状態(最終的には150
名ほどご来場いただきました)。

「ちきわほ」単独の1stセットに続いて、ジョージを加
えた2ndセット。共演曲は以下の通り。

1.Peanut Face
2.Slightly Off the Ground
3.Tailfeathers
4.Replay
5.Explosion
6.I Remember Clifford
7 Which Craft ?

「ちきわほ」は社会人バンドとしては若いメンバーが多
いので、選曲も勢いのある曲が中心。ジョージのムー
ディーなソロとのコントラストが、新鮮なサウンドを織
りなしていました。

明日は新宿で、明治大学と共演です。

<5月2日:新宿公演>
明治大学ビッグ・サウンズ・ソサエティ・オーケストラ
(以下BS)といえば、学生ビッグバンド界では知らぬ者
のない名門楽団。昨年(2000年)夏から、

 1.山野ビッグバンド・コンテスト、
 2.大田市大学ジャズ・ビッグバンド・フェスティバル、
 3.浅草アマチュア・ジャズ・コンテスト、
 4.ライオネル・ハンプトン・ジャズ・フェスティバル
  (アメリカ・アイダホ州)

と、4つのコンテストで連続優勝を果たしたグランドス
ラム・チャンピオン・バンドです。

BSと私は今年2月、一緒にアメリカ公演をしました。ツ
アー中、ハリウッドのスタジオでレコーディングをした
時のゲストアーティストが、ジョージ・グラハムでした。

そんなわけで、今日のホストは、ジョージと3ヶ月ぶり
に再会する明治大学BSです。

会場は新宿のライブハウス「J」。BSジュニアバンドの
演奏2曲に続いて、レギュラーバンド+ジョージの登場。
BSの演奏会は、いつも客席に独特のハイテンションなム
ードが漂っているのですが、「J」のような密集した空
間では、いつにも増してそれが濃いようです。

共演曲目。
1.Discommotion
2.Freckle Face
3.Polka Dots And Moonbeams
4.Orange Sherbet
5.Basie !
6.My Funny Valentine
7.One O'clock Jump

BSは3月に4年生が大勢卒業したこともあって、ジョージ
の持ち曲ではなく、BSのレパートリーを中心とした選曲。
ジョージにとっては慣れない曲でしたが、そこは百戦練
磨のミュージシャン。沸きに沸く会場の声援を浴びなが
ら、快調にハイノートを響かせました。

明日は大阪へ向かいます。

<5月3日:大阪公演>
先月末、私は「街にジャズがやってくる」という論文を
発表しました。全国各地でミニ・ジャズフェスティバル
を開いて、ネットワークでつなごうというアイデアです。

その中で、私は以下のように書きました。

 > 高品質な小イベントが各地に生まれ、それらが連携
 > を始めた時、「小」は単なる小でなくなる。そこに
> は、「規模の大小」という基準では測れない、まっ
 > たく新しいイベント形態が現出する。

ジョージ・グラハムのツアー・レポートは、各地のイベ
ントを連携させようという試みです。たとえば、ツアー
前半の徳島、静岡、名古屋の方々も、ジョージが日本に
いるあいだずっと、このイベントの余韻を味わうことが
できる。また、ツアー後半の富山、多摩などの方々は、
日々報告されるジョージのニュースを知って、期待を盛
り上げていくことができます。

各地の主催者が「点」として行うイベントを、このメー
ルで「線」としてつなぐことができるのです。また、
jjazz.net に掲載されている Daily GG News にアクセ
スしていただければ、水際公園へお越しいただいた徳島
のお客さんも、メディアホールでお会いした静岡のみな
さんも、勤労会館で早口言葉に沸いた(沸いてないで
しょ!)名古屋の方々も、みんながジョージ・グラハム
でつながる。「線から網へ」、文字通りネットワークが
でき上がるわけです。

今までこういうことができたのは、テレビなどのマスコ
ミだけではなかったでしょうか。ところがインターネッ
トでは、やる気になれば、私たちにもできてしまうので
すね。

さて・・・

昼頃、羽田から飛行機で伊丹へ。大阪市内のホテルへチ
ェックインして、夕方5:00からリハーサル。今日のホス
トは、関西で大活躍の社会人ビッグバンド「グローバル・
ジャズ・オーケストラ」。これまでに2枚のCD制作、3度
の海外公演、著名アーティストとの共演は数知れず、関
西をというよりも日本を代表するビッグバンドのひとつ
と言ってよいでしょう。

会場は梅田の高級ライブハウス「ロイヤルホース」。共
演曲は以下の通りです。宇多田ヒカル作曲、Tom Kubis
編曲の「Automatic」は今夜が世界初演です。

1st Set
1.Peanut Face
2.Stardust
3.My Marilyn
4.Tailfeathers
5.Automatic

2nd Set
6.Scraping the Top of the Barrel
7.Black Orpheus
8.My Funny Valentine
9.Samba Dees Godda Do It
10.Kinda 2 Kinda 3

今日も第1セットから満席。観客の中には円広志氏の姿
もありました。また、ユニバーサル・スタジオ・ジャパ
ン(USJ)で働くアメリカ人ミュージシャンが多数駆け
つけて、ジョージの演奏を楽しんでいました。USJでマ
リリン・モンロー役をやっているというブロンド女性も
いて、客席は華やかな雰囲気。余談ですが、私はモンロ
ーのモノマネで「Happy birthday, Dear President」と
歌って、彼女に一発ギャグを披露しました。てへ。

1セット目のジョージは、若干、不調。夕食がチーズバー
ガー1個だけだったから「ガス欠」になったとは本人の
弁。休憩時間に Energy Bar(アメリカ版カロリーメイ
トのようなもの)をかじってエネルギー補給。その甲斐
あって、第2セットは、伸びのあるジョージの音色が復
活しました。終わりよければすべてよし、これも本人の
弁。

明日は金沢です。

<5月4日:金沢公演>
大阪駅から雷鳥号に乗って金沢へ。ホテルにチェックイ
ンして一服。夕方からライブハウス「もっきりや」でリ
ハーサルです。「もっきりや」は、小さいながらも素敵
な空間。「船倉の酒場」みたいな感じで、会社帰りに毎
日寄ってリラックスしたい、そんなライブハウスです。

つげ義春という漫画家をご存知でしょうか。「ねじ式」
「無能の人」「ゲンセンカン主人」など数々の佳作を発
表している人です。彼に「もっきりやの少女」というセ
ンチメンタルで心温まる小品があります。金沢「もっき
りや」は、ここから名前をとったそうです。

今日のバンドはコンボ。ピアノ、ベース、ドラムス、テ
ナーサックスにジョージを加えたクインテットでの演奏
です。メンバーはみんな地元のアマチュアですが、場数
を踏んでいるので腕は抜群。

なんと、今日は生音で勝負です。もっきりやのウッディ
な内装に、ジョージのきれいな音色が心地よく響きます。
これまでのレポートでもお伝えしてきたように、ジョー
ジのスタイルは、じっくり聴かせる大人の演奏。今夜も
しみじみ聞かせてくれました。

日本公演中唯一のジョージと小編成楽団の共演は、以下
のような曲。

1部
1.Blue Bossa
2.Polka Dots and Moonbeams
3.All the Things You Are
4.A Night in Tunisia

2部
5.Cute
6.Georgia on My Mind
7.Lester Leaps In
8.I Can't Get Started
9.The Preacher

会場には金沢大学モダン・ジャズ・ソサェティのメンバ
ーが大勢来ていて、熱心にジョージの演奏に聴き入って
いました。ギグ終了後、トランペット・セクションは、
一人ずつジョージと記念撮影。

明日は富山(砺波)のチューリップフェアです。

<5月5日:砺波公演>
金沢のホテルで朝食をとりながら、ジョージからロサン
ゼルスのスタジオ・ミュージシャンの壮烈な競争につい
て聞きました。

たくさんのアーティストが職を求めて、売り込み合戦を
繰り広げる。ちょうど野球のポジション争いのような感
じです。小さなスタジオで1回レコーディングしただけ
で「ロスのスタジオ・ミュージシャン」を名乗る誇大広
告プレイヤーが少なくない。スキあらば他人の仕事を奪
おうと狙うプレイヤーも大勢ひしめいている。まさに戦
国社会です。

ただ、ジョージがいうには、「だからといって、俺の仕
事を盗もうとしている奴が、俺のことを嫌いというわけ
じゃないんだ。仕事を離れればみんな仲間さ。そういう
ところなんだよ、ハリウッドは」。

ようするに、戦いが常態化しているわけですね。そんな
ロスのスタジオ界にあって、ジョージは、戦場の最前線
で勝ち続けてきた、いわば天下人なのです。

さて、今日の北陸は快晴。チューリップフェアにぴった
りの好日です。金沢から砺波市文化会館へ移動して、午
前10:30から富山フィールド・ハラー・ジャズ・オーケ
ストラとのリハーサル。

フィールド・ハラーは、アメリカの Monterey Jazz
Festival へ2回、スイスの Montreux Jazz Festival へ
1回出場している名門社会人バンド。国内でも、石川県
のモントレー・ジャズ・フェスティバル・イン能登の常
連ですし、北海道のくっちゃん・ジャズ・フェスティバ
ルへの出場経験もあります。

ところで、「砺波」という地名は難しいですね。「とな
み」と読みます。富山県の西の端にある都市です。チュ
ーリップフェアは、4月25日から5月6日の期間中に35万
人を動員する盛大なイベントで、今年、創立50周年を迎
えます。

100万本のチューリップが咲き誇る会場で、「チューリッ
プ狩り」、「チューリップ染め体験教室」、「フラワー
都市物産展」、「世界のチューリップ展」、「青空コン
サート」など、たくさんのイベントが行われる花の祭典
です。ジョージ・グラハムとフィールド・ハラーの共演
も、アトランクションの一環として行われるものです。

第1セット 午後1時
1.Samba Dees Godda Do It
2.But Beautiful
3.Kinda 2 Kinda 3
4.Stardust

第2セット 午後3時
5.My Marilyn
6.My Funny Valentine
7.Tailfeathers
8.Black Orpheus
9.Scraping at the Top of Barrel
10.My Heart Will Go On

会場は北陸一帯からの行楽客で賑わい、ステージのまわ
りには多くのお客さんがお集まりくださいました。チュ
ーリップが爛漫と咲き乱れる中、座り込んで熱心に聞き
入っておられる方も多数おられました。チューリップ目
当ての人ばかりでジャズはウケないのではないかと心配
したのですが、まったくもって嬉しい誤算でした。

昨夜、もっきりやに集った金沢大学モダン・ジャズ・ソ
サェティの面々もふたたび集結。休憩時間には、ジョー
ジを囲んでなごやかに歓談していました。

アンコールの「My Heart Will Go On (タイタニックの
テーマ)」演奏中には、「フラワーヒル」と呼ばれるチュ
ーリップの丘で、映画のマネをして両手を広げてみせる
カップルも現れました。大勢のお客さんの暖かい拍手を
浴びて、ジョージとフィールド・ハラーのコンサートは、
無事、終了。

明日は東京(多摩)です。

<5月6日:多摩公演>
朝8:45の全日空884便で、富山空港から羽田へ。今日の
ホスト「ファニー・フェローズ・ジャズ・オーケストラ」
の石井さんが羽田空港まで迎えに出てくれました。車で
京王プラザ多摩へ向かい、チェックイン。旅から旅の連
続公演で、ジョージは少々お疲れの様子。リハーサルま
での3時間を、ゆっくり休養にあてました。

午後2時からファニー・フェローズとのリハーサル。共
演曲は以下の通り。

1.Peanut Face
2.Take the "A" Train
3.The Very Thought of You
4.It Don't Mean A Thing If It Ain't Got That Swing
5.My Funny Valentine
6.I Can't Stop Lovin' You
7.My Heart Will Go On
8.In the Mood
9.Automatic
10.Stardust

今日のコンサートは、ファニー・フェローズと京王プラ
ザホテル多摩との共催。ディナーショウ形式で、6,000
円のチケット全280席がわずか1週間で完売しました。
ファンクラブを持っているファニー・フェローズならで
はの動員力です。

ファニー・フェローズの運営スタイルは、ひとつの理想
に近い姿だといえます。

1.演奏会場とアマチュア楽団の人的・物的・経費的協
  力関係
2.地元ファンの組織化(ファニー・フェローズ・ファ
  ンクラブ)

が実現できているからです。以前、「街にジャズがやっ
てくる」という論文でも申し上げた通り、今後は、この
ようなスタイルがますます盛んになると思われます。

そんなコンサートですから、お客さんも気合いが入って
いる。ようし聞くぞという熱気が渦巻いて、会場は異様
なハイテンションに包まれます。

ジョージがステージに登場するや、「ジョージ、ジョー
ジ・・・」と手拍子&コールが始まる。演奏開始から、
はやアンコール状態です。

お客さんのパワーに乗せられたのか、ジョージの演奏も
いつもより迫力が増しています。アップテンポの曲はよ
り激しく、バラードはより濃厚に。そんなジョージの演
奏にあおられて、今度は聴衆がますますヒートアップし
ていく。まさに、ジャズの真髄「コール&レスポンス」
の応酬です。

ファニー・フェローズの大きな特徴は、メンバーの年齢
層が広いこと。最年長は67歳、最年少は15歳。10代のメ
ンバーが5人いるのも、社会人バンドとしては珍しいで
しょう。この「多様性」も、彼らをユニークなバンドた
らしめている重要なポイントです。

うかがった話によれば、彼らは和大鼓グループとの共演
を重ねているとか。パルテノン多摩(という素晴らしい
ホールがあるのです)の協力で、これまでに「SING SING
SING」や「ボレロ」を一緒に演奏するなど、とてもクリ
エイティブな活動を行っています。

今日のコンサート会場である京王プラザ多摩とも、今後
ますます密な協力関係を育み、ともに地域住民との関係
を深めていかれることでしょう。非常にすぐれた「構造
重視型イベント」といえます。

さて、3曲のアンコールに応え、いよいよ持ち曲が尽き
たファニー・フェローズですが、興奮さめやらぬ観衆は
さらに演奏を求め続ける。ついにはバンマスの「もう曲
がありません」というお詫びの言葉で、ようやく終演で
す。当然といえば当然ですが、ジョージのCD販売&サイ
ン会のテーブルには、長い長い列ができました。

明日は、横浜でクリニックです。

<5月7日:横浜クリニック>
今日のジョージは、洗足学園大学ジャズコースでクリ
ニック。洗足は、体系的なジャズ教育を受けられる、日
本では数少ない教育機関のひとつです。山下洋輔、大坂
昌彦、中村誠一、納浩一、佐藤達哉、渡辺香津美などな
ど、豪華な講師陣が勢ぞろいで、本格的にジャズを学ぶ
ことができます。

ジョージ・グラハム・クリニックの窓口となってくだ
さったのは、洗足ジャズコース主任講師の香取良彦先生。
教室には、原朋直先生もおいでになりました。

第1部:トランペット・クリニック
 洗足のトランペット6名を対象とした指導。まず、
 ジョージが、模範演奏を披露。自身のアルバムのマイ
 ナスワンCDを伴奏に、"But Beautuful"を演奏しまし
 た。美しい音色と、透き通るようなハイノートに、学
 生一同聞き惚れていたようす。

 さて、ジョージの学生への指導は、ハイノート・クリ
 ニック。

 テンポ80で、「C-E-G-C-C#」と2泊ずつ吹奏し(音量
 p)、最後に「D」を伸ばせるだけ伸ばします。徐々に
 クレシェンドをかけて、音量はfffまで。音の最後を
 舌で止めないで、吹き放ちます。

 1回やったら15秒ほど休憩。次に同じことを「C#」か
 ら始めます。このようにして、半音ずつ上げて自分の
 限界まで練習します。3ヶ月のレッスンで4度音域を広
 げるのが目標です。

 ジョージの言葉を引用すると、「この練習は、初心者
 でもエリック宮城でも、すべてのトランペット奏者に
 効果がある」とのこと。

 横隔膜を正しく鍛錬し、口輪筋を育てていく。ごくご
 く当たり前のことを地道に続ける以外に、ハイノート
 の秘訣はないそうです。

 このほかに、

 「絶好調のときのアンブシュアを体で記憶しておくこ
 と。そして楽器を使わずにそれを再現する練習をすれ
 ば、ウォームアップなしで演奏できるようになる」

 なんていう、びっくりするような話も聞けました。そ
 ういえば、このツアー中、ジョージがウォームアップ
 しているのを見たことがないですね。

第2部:ビッグバンド・ワークショップ
 洗足で練習中の曲(Round Midnightほか)についてコ
 メント。リズム隊がお互いに聞きあうこと、管の手助
 けをするようにテンポコントロールすること、曲に命
 を吹きこむべく生き生きとしたプレイを心がけること、
 などを指導。

 管楽器に対しては、誰が主旋律で誰が伴奏かを理解し
 たうえで音量を調整することなどを指摘しました。

 模範演奏として、マイナスワンCDをバックに、"My
 Marilyn"を披露。教室はすっかりロマンチックな雰囲
 気になってしまいました。

明日は、いよいよツアー最終日。ICU(国際基督教大学)
ビッグバンドへの指導です。

<5月8日:三鷹クリニック>
ICU(国際基督教大学)のモダン・ミュージック・ソ
サェティ(MMS)は、外山昭彦(tp)、吉田治(sax)
など、プロミュージシャンの指導を日常的に受けてい
る、日本では珍しいバンドです。

これまでに2枚のCDを出していますが、いずれもロサン
ゼルス録音。1作目「Celebration」では Chuck Findley
をゲストに迎え、2作目「The Gordian Knot」では Gary
Fosterと共演しました。

1991年、1995年、1999年と3回のアメリカ公演を行って
います。また、Wayne Bergeron(99)、Bruce Paulson(00)
らが来日した時、クリニックを受講するなど、積極的に
ジャズ情報を吸収しています。

今年はジョージ・グラハムのクリニック受講です。 会
場は、MMSの部室である Diffendorfer Memorial Hall
West Wing。トランペット奏者の西村浩二、奥村晶の両
氏も見学に来ておられました。

まずトランペット・セクションへのクリニック。昨日の
洗足学園同様、ジョージは、呼吸とハイノートについて
の指導を行いました。また、音程を低めにとることでダ
イナミクス・レンジを広げる練習方法も紹介。

続いてビッグバンド・ワークショップです。曲目は、

1.This Could Be Start of Something Big
2.Wind Machine
3.Kinda 2 Kinda 3

ジョージのMMSへのコメントは、MMSのみならず、多くの
ビッグバンドにあてはまる指摘だと思います。それは、
「テンポの速い曲ばかりやるな」ということです。

ジョージいわく、

 「ジャズとは、何かを伝えるために演奏するのであっ
 て、スケールやアルペジオの速弾きを披露するための
 ものではない」

 「コンテスト志向が強いバンドほど速い曲を多くやり
 たくなる。音楽をじっくり楽しむためには、ミディア
 ムやスローの曲を演奏するべきである」

 「速い曲ばかりを連続して聞かされると、聴衆は退屈
 する」

 「速弾き競争に没頭すると、個々の音が曖昧になる。
 音をクリアにして、メロディをはっきり聞かせるべし」

 「ソロも同様である。自分が吹きたい音楽をきちんと
 理解したうえで表現するべきである。指を速く動かす
 ことで感動は伝えられない」

 「速い曲を練習する場合でも、いきなり速いテンポで
 練習してはいけない。個々の音をきちんと理解できる
 程度のゆっくりしたテンポで練習を積み、徐々にテン
 ポアップするべし」

 「1920年代、1930年代の、ジャズがまだシンプルだっ
 た頃の音楽から学ぶことが重要である。難解なことを
 やっても消化不良なのではつまらない」

 「赤ん坊は這い這いを覚えてから歩く練習をする。バ
 ンドも同様で、這い這いができないのに走り出すよう
 な練習はよくない」

 「レパートリーのうち3分の2程度が速い曲というバン
 ドもあるが、これは多すぎると思う」

そして、Kinda 2 Kinda 3 というジョージの持ち曲(ボ
サノバ)をMMSと一緒に演奏してみせました。ゆったり
としたテンポで、美しい音色をたっぷり聞かせるジョー
ジの演奏。「速い曲ばかりやるな」という指摘に、一同、
納得せざるを得ませんでした。

「正しい呼吸で演奏するにはどうすればよいですか」と
いう質問が出ました。そこで、ジョージは、まずみんな
の呼吸状態をチェックしたいから演奏してみてくれと注
文を出しました。そこでMMSは、あらためて Kinda 2
Kinda 3 と This Could... を演奏。

面白いもので、これから呼吸をチェックするので吹いて
みろといわれると、不思議とみんなよい呼吸になるので
す。ジョージも「特に間違った呼吸をしている人は見当
たらない」と言う。呼吸に意識を向けるだけで、呼吸は
よくなる。これは、ひとつの発見です。


かくしてジョージ・グラハム日本公演は、すべての予定
を無事終了しました。明日の夕方、成田空港からジョー
ジは、My Marilyn の待つロサンゼルスへと帰ります。

投稿者 kurosaka : 2004年03月15日 | トラックバック